金色の翼
黒いベールの女
初夏の午後。周囲を断崖絶壁に囲まれた南国の島の会員制ホテルに、客が到着する。小型飛行機から降りたった彼らを出迎えたホテルの従業員・槙は、その中の一人の女性から目が離せなくなる。空っぽの鳥カゴを持ち、全身黒ずくめのその人の、黒いベール越しに見えた表情が、あまりにも寂しげだったからだ。ホテルのオーナー・セツがその女性・修子をにこやかに出迎える。セツの姪で、オーナー代行の理生も温かく修子をもてなす。修子は理生に親近感を持つ。宿泊者の中には実業家の奥寺や小説家の絹子、投資家の静江らがいた。修子に関心を持った彼らは、やがて彼女が世界一裕福な未亡人だと知る。