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2025年4月18日更新

世界文化賞

第35回高松宮殿下記念世界文化賞 授賞式・特別番組を放送

世界の優れた芸術家を顕彰する「高松宮殿下記念世界文化賞」(主催:公益財団法人 日本美術協会=総裁・常陸宮殿下)の第35回授賞式典が、11月19日、常陸宮妃殿下をお迎えして、オークラ東京で行われました。式典には岸田前首相ら各界からの来賓約220人が出席しました。フジテレビは趣旨に賛同し、創設以来、社を挙げて支援しています。

授賞式典では、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の各部門の受賞者5人に、常陸宮妃殿下から顕彰メダルが贈られました。

絵画部門:ソフィ・カルさん(フランス)
彫刻部門:ドリス・サルセドさん(コロンビア)
建築部門:坂 茂さん(日本)
音楽部門:マリア・ジョアン・ピレシュさん(ポルトガル/スイス)
演劇・映像部門:アン・リーさん(台湾)


若手芸術家奨励制度:コムニタス・サリハラ芸術センター(インドネシア)


第35回高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者

受賞者を代表して、坂茂さんはスピーチを行い、「私は建築家として作品をつくるかたわら、30年以上被災地で被災者の住環境の改善をするボランティアを続けてきました。今回ここにいる4名のアーティストは単に美しいものを追求しているわけではないと考えています。常に社会的なテーマ・問題を批判したり、解決策を提案したり、そういったことを踏まえ活動していると思います。この賞を励みにこれからも世界中で社会貢献活動をしていきたいと考えています」と語りました。

また、アメリカの国際顧問、ヒラリー・クリントン元国務長官は、「芸術はわれわれの心を満たすだけでなく、自身や互いを知る術になり、民主主義の自由の柱です」とスピーチしました。


フジテレビとBSフジで特別番組を放送

この世界文化賞の授賞式の模様とともに第35回の受賞者の功績を紹介する特別番組が、2024年12月13日(金) 24:55~25:55フジテレビ地上波及び2024年12月14日(土) 10:00~11:00 BSフジにて放送されました。


坂茂さんが設計した“世界で最も美しい美術館”

2024年、ユネスコから“世界で最も美しい美術館”と称えられた下瀬美術館。設計したのは建築家の坂茂さんです。今回、建築部門を受賞しました。坂さんが通い続けているのが、石川県珠洲市。2024年1月、能登半島地震で大きな被害を受けたこの町で仮設住宅作りに取り組んでいます。


芸術は誰のためのもの?問い続ける坂さん

「我々のお施主さんの多くは、ある意味で特権階級だと思うんですね。もっと一般大衆とか、あるいは災害で家を失った人たちの役に自分の経験とか知識がつかえないかな」と、坂さんは言います。もともと「紙管」と呼ばれる軽くて安く構造的にも強い建材を用いた建築で有名な坂さん。能登では古くから使われてきた「能登瓦」を使って、ふるさとの景色を取り戻す建築も進めています。

演劇・映像部門の受賞者はアン・リーさん。2005年公開の『ブロークバック・マウンテン』は、アジア人初のアカデミー賞監督賞を受賞。さらに壮大なCGを駆使した『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』では、2度目のアカデミー監督賞を受賞しました。世界文化賞の会見で日本映画「モスラ」の劇中歌を口ずさみ、記者たちを驚かせたアン・リ-さん。台湾生まれで両親は中国出身、そしてアメリカで演劇と映画制作を学びました。自身をアウトサイダーだと言い「アウトサイダーとして、本質を見抜く視点は鋭い」と語ったアン・リーさん。数々の世界的な映画には、多様な文化的ルーツが影響を与えていました。


2度のアカデミー監督賞に輝いたアン・リーさん

彫刻部門はドリス・サルセドさんが受賞しました。「コロンビアで育ったことで、私は世界を見る視点を得ました。それが私の仕事を100%決定づけたのです」そう語るサルセドさんの作品には、激しい内戦の時代を生き抜いてきた人生が色濃く反映されています。一見、作品らしきもののない展示室…実は床が彼女の作品です。内戦で使われた武器を溶かして金属の板を制作し、その板をハンマーで激しく叩いて敷き詰めた床。叩いたのは内戦で性暴力を受けた女性たちです。「私が伝えたいのは、弱い立場にある無名の犠牲者たちの物語なんです。犠牲者たちの問題や経験を取り上げ、作品にして、世界中で共有できるようにすることが重要だと考えています。」サルセドさんが作品に込めたメッセージです。


この「床」がドリス・サルセドさんの作品

絵画部門の受賞者は、ソフィ・カルさんです。およそ1年半の改装期間を経て2024年11月に再開した三菱一号館美術館。記念すべきオープニングを飾ったアーティストです。連日、若い女性を中心に多くの来場者がカルさんの作品を体感しようと押し寄せました。日本でのカルさんの人気を決定づけた作品が「限局性激痛」。自身の失恋体験による心の痛み、それが癒されていく過程を、写真と文章で表現しました。「失恋話をずっと繰り返すことで自分の痛みが癒されると思ってた。作品にするつもりじゃなかった」と言うカルさん。誰かのために作ったアートではなく、自分自身のためにつづったものが結果的に多くの女性たちの共感を呼ぶことになりました。「そもそもアートとは誰のものなのか」カルさんの作品は、私たちに問いかけてきます。


日本のファンも多い異色のアーティスト ソフィ・カルさん

音楽部門を受賞したのは、マリア・ジョアン・ピレシュさん。温かく優しい音色とデリケートで細やかな表現が特徴的なピアニストです。3歳から独学でピアノを始め、世界を舞台に活躍しています。その音色がどこから生まれるのか、活動拠点を訪ねてみると…。そこはポルトガルの農村地帯、畑の真ん中に天才ピアニストはいました。この日はジャガイモの収穫、カゴを抱えて幸せそうです。ピレシュさんが、この地に移ってきたのは1999年。農作業に精を出しながら、隣の建物で演奏活動を続けています。「芸術とは何か。私たちの生活の中で音楽とは何なのか。私は、みんながただ一つだけ必要だと考えるものがあります。それは幸せになること。それだけでいいのです。幸せになるために何をすべきなのか、ここはそのために作った場所なんです」と語ったピレシュさん。


農村に活動拠点を置く世界的ピアニスト マリア・ジョアン・ピレシュさん

芸術は人々の幸せために…
今回の世界文化賞の授賞式。受賞者を代表して坂さんも芸術家としての思いをこう語りました。「この世界文化賞をソフィ・カルさん、ドリス・サルセドさん、そしてマリア・ジョアン・ピレシュさん、アン・リーさんと一緒にいただけることに対して深く感動しています。私は、みなさんは、単に美しいものだけを追求している芸術家、アーティストではないんではないかと考えています。常に社会的なテーマ、社会的な問題を批判したり、あるいは解決を提案したり、そういうことを活動としていらっしゃるアーティストだと思います。この世界文化賞をいただいたことを励みに、これからも世界中で社会貢献活動をしていきたいと考えております」。


35回を迎えた世界文化賞の授賞式 坂さんが語った芸術家の使命

また世界文化賞では、才能ある若者の育成を目指し「若手芸術家奨励制度」を制定しています。
今回の受賞者は今回の受賞者は、コムニタス・サリハラ芸術センター。インドネシアで初めての民間複合文化施設です。軍事政権下で自由を求めて結成された組織を母体に民主化後の2008年に創設されました。音楽、ダンス、演劇、文学、映画や美術など、分野を越えて若き芸術家を育てています。ある音楽家はこう語ります。インドネシアで、ここまで自由で芸術的な場所はないと思う。アーティストを何でもサポートしてくれるんだよ」。芸術は自由の象徴…改めてその事に気付かせてくれる受賞でした。

“文化・芸術のノーベル賞”と言われる世界文化賞…
今回で35回を迎えた世界文化賞。番組では受賞者5人が作品に込めた思いと情熱を描くとともに、これまでの受賞者も問い続けてきた「芸術は誰のものなのか」というアートの使命や役割について考えました。

世界文化賞の詳しい内容については、公式ホームページをご覧ください。
高松宮殿下記念世界文化賞 (https://www.praemiumimperiale.org/)

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