2003年7月10日(木)放送 みどころ

#14 キルケゴール「あれか これか」

「『あれか これか』って、なにがどれなのか?」意表をつくタイトルを聞いて、そう思った方も多いだろう。19世紀デンマークの哲学者キルケゴールが記した本書は、食堂の食券売場で、デパートのバーゲン会場で、居酒屋の合コンで、我々が体験するアレかコレかどは比べものにならない程のインパクトを哲学界に与え、20世紀を代表する哲学・実存主義の礎として重要な本となったのである。
キルケゴールの波乱に富んだ半生(<少女レギーネに一目惚れ→熱烈アプローチで婚約→彼女を愛しすぎて苦悶→一方的に婚約破棄>「あれか これか」で扱っているのはここまで。その後の半生も、彼女が別人と結婚、でも彼女への熱愛は終生キープ、という非常に特異なもの)を振り返りつつ、人は如何に生きるべきかについて綴った「あれか これか」を番組で何に喩えるべきかアレかコレかと悩んだ末、カメラで喩えることになりました。

<豆知識>
●本書発表時、婚約破棄で落ち込むレギーネへの慰めと思われるヴィクトル・エレミタ(悲しみを克服するという意味)なるペンネームを名乗っている(破棄した当事者なのに)、などキルケゴールは面白エピソードに事欠かない。
●キルケゴール、ニーチェの思想が19世紀哲学界のチャンピオン・ヘーゲルを王座から引き摺り落としたと言われているのだが、よく考えると2人とも変人だ。
●番組で取り上げる本では珍しくもないことだが、やっぱりこの本も出版社に相手にされず自費出版。今、自費出版でぶ厚い本を出している人は、数百年後、この番組で取り上げられている可能性が高い。

キャスト

本の案内人:白井 晃
読書界の寅さん:石井正則
今週のマドンナ:寺山由花
ナレーター:服部 潤

スタッフ

企画・構成:小山薫堂
ディレクター:三木康一郎
制作:アミューズ

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