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<第1回>
 瀬川が六甲の仕事でアメリカへ行ってから、一年が経った。はるは山中の「翠明」で仲居を続けながら、瀬川の帰りを心待ちにしている。
 瀬川が帰国したら結婚することになっているはるは、毎日が幸せな気分だった。
 ただ六甲の御曹子で弁護士の瀬川の妻となると、仲居を辞めなければならないかもしれないので、それがちょっと淋しかった。はるは仲居を天職だと思っているのだ。
 そんなはるが、客の磯田老夫婦と知り合う。「夫婦は悩みも喜びも半分ずつだ」と語る二人の言葉に、はるは感動する。
 瀬川から久しぶりにはるに電話がかかってくる。今週末に帰国するという。

<第2回>
 翠明に、訳のある様子の子連れのカップル、久夫と悦美がやってくる。はるが三人の担当になるが、悦美は久夫の愛人で、10歳になる旅人に続いて、二人目の子を妊娠していた。
 その日、初めて悦美から妊娠を知らされた久夫は狼狽。優柔不断な久夫に対して、悦美は今度こそ入籍してほしいと迫る。
 はるは、男の浮気について久夫と話し合う。「男の浮気は本能だ」と主張する久夫に対して、はるは瀬川はそんな男ではないと反論する。
 その夜、久夫にほとほと愛想が尽きた悦美は、一人で帰ろうとする。旅人のことを心配したはるは、悦美に旅館の別の部屋に泊まってもらう。

<第3回>
 静岡からやってきた、訳のある様子の子連れのカップルが泊まった翌朝、子どもの旅人が行方不明になる。
 はるは河原にいる旅人を見つけだすが、旅人は「両親の喧嘩を聞いていると、嫌な気持ちになる・・・」と傷ついた胸のうちを打ち明ける。
 問題を抱えたまま、久夫らは帰っていく。はるは旅人の将来がどうなるのか、気がかりだ。
 はるの友達・啓子が翠明に泊まりにくる。恋人の医師と結婚間近のはずだった啓子が、突然泣き崩れる。恋人が自分を捨てて、院長の娘との結婚を選んだという。
 はるは啓子を慰めるが、啓子は薬を飲んで自殺を図ろうとする。

<第4回>
 恋人に裏切られ、自殺を図った啓子を、はるは元気づける。三年半前、山中に来たとき、自分も啓子と同じ気持ちだったといい、まだ彼のことを愛しているなら、もう一度体当たりしてみるようアドバイスする。啓子は明るい顔で帰っていく。
 六甲の本社が危ない、という情報が流れる。瀬川が処理にあたっているアメリカでのトラブルが原因らしいが、涼子ははるの耳に入れないよう箝口令をしく。
 はるが「お嫁にしたい仲居コンテスト」で優勝。「三井屋」で祝賀会が開かれるが、店主の吾朗が週刊誌の六甲の記事をはるに見せてしまう。
 はるは六甲が倒産したら仲居を続けられると喜ぶ。

<第5回>
 「お嫁さんにしたい仲居コンテスト」に優勝したはるに、テレビ出演の話が持ちあがる。戸惑いながらも、出演をオーケーするはる。
 仲居のサクラに、吾朗が好意を持つ。和田支配人に頼まれて、はるは二人のキューピッド役をつとめることに。
 瀬川が突然、山中に帰ってくる。はるはこのときを待ちこがれていたが、いざ瀬川と二人きりになると、心臓が爆発しそうでどうしていいかわからなかった。
 瀬川も同様で、その夜は翠明の皆と大いに飲み明かす。
 はるは瀬川の様子がおかしいのに気づく。「仲居を辞めて、山中を離れることはできないか」と、瀬川が……。

<第6回>
 アメリカから帰った瀬川は、「六甲を離れて、はると二人でひっそりと暮らしたい」と言いだす。はるはビジネスに疲れきっている様子の瀬川が気にかかる。
 翌日、六甲本社の相田部長が翠明にやってくる。会長が心臓発作で入院したといい、瀬川に社長就任を望む。
 が、瀬川は、神戸には帰らない、と相田を追い返す。
 自分の結婚がどうなるかわからないはるだが、サクラと吾郎の間を取り持ち、ついに二人に結婚を約束させる。
 はるは、神戸に帰るよう瀬川を説得する。
 すると、瀬川の口から、信じられない言葉が。「はる以外の女性と婚約した」と・・・。

<第7回>
 瀬川が、アメリカでメアリー・パットンという女性と婚約したと告白。彼女はパットン銀行の頭取の一人娘で、六甲の再建のため、銀行から融資を受けられるという。
 が、自分の気持ちを確かめるために帰国した瀬川は、はるへの愛を断ち切れないと苦しむ。
 はるはショックを受けるが、いつまでも待つから、きちんと考えて結論を出すよう瀬川に忠告する。
 そんなとき、入院中の会長が、瀬川を説得するため命がけで翠明に来るという連絡が入る。
 六甲の犠牲になりたくない瀬川は、はるを車に乗せて山中の町を出る。二人で誰にも邪魔されない町まで行こうと・・・。

<第8回>
 はると瀬川は駆け落ちをするが、逃げては何も解決しないと思ったはるは、瀬川を説得して翠明に戻る。
 メアリーが瀬川を追ってアメリカからやって来る。大学で経営学を学んだというメアリーは、人生のパートナーとして、愛する瀬川の力になりたい、とはるに自信ありげに語り、婚約指輪を見せる。
 瀬川は婚約の破棄を主張。
 が、メアリーは聞き入れず、神戸の瀬川の父の見舞いに行く。
 六甲傘下の建設会社の社長・横山が、リストラで自分たち子会社を切り捨てないでくれ、と泣きついてくる。瀬川はすぐに手を打つが、はるは改めて瀬川が六甲にとってなくてはならない人だと知らされる。

<第9回>
 瀬川ははると結婚するために、六甲を自力で再建するプランを一晩かかって練りあげる。
 翌日、六甲の外山会長が翠明に来る。明日、ハワード・パットンが来日。明後日には融資の調印式があり、瀬川に出席するよう迫る。
 瀬川は自力の再建案を父に見せるが、外山は受けつけず、優柔不断な息子を叱りつける。
 はるは瀬川に神戸に帰るよう忠告。メアリーと力を合わせて六甲を立て直してほしいと訴える。大勢の人を不幸にして、自分だけ幸せになることはできないはるは、涙をこらえて瀬川に別れを告げる。
 瀬川は神戸へ帰っていく。
 はるは痛々しいほど明るく、仲居の仕事を続ける。

<第10回>
 瀬川と辛い別れをしたはるに、「お嫁にしたい仲居」のテレビ出演の日が迫る。はるは喜びのスピーチの練習をするが、涼子は胸がしめつけられる。
 そんな折、恋人に裏切られ絶望していた啓子が、明るい顔ではるに会いにくる。はるのアドバイスのおかげで彼の愛をとり戻し、結婚することになったという。
 必死に孤独と戦っていたはるだが、ついに耐えきれず、涼子の前で泣き崩れる。はるは涼子のすすめで、テレビ出演を辞退し、しばらく休養することに。
 以前翠明に泊まった旅人から、富士山の写真の入った手紙がはるに届く。富士山を見たくなったはるは、ボストンバッグを持って、山中に別れを告げる。


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