大奥
第3話 江戸城燃ゆ!紅蓮の炎に見た奇跡
将軍家定(北村一輝)の御台所である篤子(菅野美穂)は、家定との夜伽のさなかに激しいひきつけを起こし、医者が呼ばれる。まる(池脇千鶴)は、篤子を憎む大奥総取締の瀧山(浅野ゆう子)が、食事に毒を入れたためだと思った。
御典医の堀田良庵(山田明郷)は篤子を診察したが、「立ちくらみで心配ない」と適当なことを言う。瀧山に丸めこまれているようだ。その時まるは、良庵の助手を見て驚いた。大奥に入るまで親しかった今岡真之介(岡田義徳)だった。まるのことが心配で、つてを頼って良庵の助手になったのだ。
幸い篤子は回復した。まるは、瀧山が毒を盛ったかもしれないと伝えた。篤子は家定に、「これからは食事の管理はまるにさせたい」と言う。瀧山は異議を唱えたが、家定はそれを認めた。まるは大奥の御膳所に行き、食器棚の中にある白い粉の紙包みを見つけた。
数日後、篤子が御膳所に乗り込み仲居頭の葛岡(鷲尾真知子)を問い詰める。そこに瀧山が来た。「毒でないならば食して」と篤子が迫ると、瀧山は白い粉を飲み干した。
篤子が毒殺されそうになったとの噂は江戸の薩摩藩邸に伝わり、東郷克顕(原田龍二)は篤子を案じた。だが藩主の島津斉彬(本田博太郎)は噂を否定する。ただ、「大奥では昔から、子供が出来ないようにする薬を御台所に飲ませていたようだ」と斉彬は言った。公家や外様大名の血が入った世継ぎが生まれれば、争いの種になるだけという考えで、斉彬はそれを承知の上で、篤子を大奥に送った。「次期将軍には水戸の一橋慶喜を」と家定に勧めるだけの役目だった。しかし、その役目も既に終っていた。大老の井伊直弼が画策して、次の将軍は紀州の徳川慶福に決まったのだ。「むごい」と克顕は言ったが、「政治に犠牲はつきもの」と斉彬は取り合わない。
瀧山が篤子に薬は避妊薬だったことを伝えたのも、こうした政治情勢があったからだ。さらに、「薬のことは、上様もご存じ」と勝ち誇ったように言って去った。一人泣き崩れるしかない篤子だった。
ある日、場内の庭園で家定と二人きりになった時に篤子は、「薬のことを知っていたのになぜ」と聞いた。「子供をもうけて何になる。政治の道具にされるのは自分一人で十分だ」と家定。篤子が、「でも人には生きるよすがが必要」と言うと家定は虚無的な表情で、「狭い鉢に入れられて身動きの出来ない亀は、首をもたげて空を見るしかない。そしてこの世の行く末を思い、いずれ今より良い世のなかになる。そう信じてそこに居続けるのが仕事だ」と答えた。自らを語るその言葉に胸を突かれる篤子だった。
江戸城内で火事が発生し、大奥は大混乱になる。まるは篤子を導いて安全なところへ避難させようとするが、篤子は突然身をひるがえして炎が燃え盛る方へと歩いて行く。篤子の行方が分からないと聞いた家定は、止める瀧山を振り払って探しに行くが、急に崩れ折れる。顔面は蒼白で、口から血が流れた。この時、家定は重い病に冒されていた。
篤子は炎に包まれた江戸城内をあてどもなく歩く。その表情は、もはや生死を越えて静かである。その時、篤子は前方に武者人形の影のようなものを見た。克顕だった。炎の中で二人は見詰め合った。
御典医の堀田良庵(山田明郷)は篤子を診察したが、「立ちくらみで心配ない」と適当なことを言う。瀧山に丸めこまれているようだ。その時まるは、良庵の助手を見て驚いた。大奥に入るまで親しかった今岡真之介(岡田義徳)だった。まるのことが心配で、つてを頼って良庵の助手になったのだ。
幸い篤子は回復した。まるは、瀧山が毒を盛ったかもしれないと伝えた。篤子は家定に、「これからは食事の管理はまるにさせたい」と言う。瀧山は異議を唱えたが、家定はそれを認めた。まるは大奥の御膳所に行き、食器棚の中にある白い粉の紙包みを見つけた。
数日後、篤子が御膳所に乗り込み仲居頭の葛岡(鷲尾真知子)を問い詰める。そこに瀧山が来た。「毒でないならば食して」と篤子が迫ると、瀧山は白い粉を飲み干した。
篤子が毒殺されそうになったとの噂は江戸の薩摩藩邸に伝わり、東郷克顕(原田龍二)は篤子を案じた。だが藩主の島津斉彬(本田博太郎)は噂を否定する。ただ、「大奥では昔から、子供が出来ないようにする薬を御台所に飲ませていたようだ」と斉彬は言った。公家や外様大名の血が入った世継ぎが生まれれば、争いの種になるだけという考えで、斉彬はそれを承知の上で、篤子を大奥に送った。「次期将軍には水戸の一橋慶喜を」と家定に勧めるだけの役目だった。しかし、その役目も既に終っていた。大老の井伊直弼が画策して、次の将軍は紀州の徳川慶福に決まったのだ。「むごい」と克顕は言ったが、「政治に犠牲はつきもの」と斉彬は取り合わない。
瀧山が篤子に薬は避妊薬だったことを伝えたのも、こうした政治情勢があったからだ。さらに、「薬のことは、上様もご存じ」と勝ち誇ったように言って去った。一人泣き崩れるしかない篤子だった。
ある日、場内の庭園で家定と二人きりになった時に篤子は、「薬のことを知っていたのになぜ」と聞いた。「子供をもうけて何になる。政治の道具にされるのは自分一人で十分だ」と家定。篤子が、「でも人には生きるよすがが必要」と言うと家定は虚無的な表情で、「狭い鉢に入れられて身動きの出来ない亀は、首をもたげて空を見るしかない。そしてこの世の行く末を思い、いずれ今より良い世のなかになる。そう信じてそこに居続けるのが仕事だ」と答えた。自らを語るその言葉に胸を突かれる篤子だった。
江戸城内で火事が発生し、大奥は大混乱になる。まるは篤子を導いて安全なところへ避難させようとするが、篤子は突然身をひるがえして炎が燃え盛る方へと歩いて行く。篤子の行方が分からないと聞いた家定は、止める瀧山を振り払って探しに行くが、急に崩れ折れる。顔面は蒼白で、口から血が流れた。この時、家定は重い病に冒されていた。
篤子は炎に包まれた江戸城内をあてどもなく歩く。その表情は、もはや生死を越えて静かである。その時、篤子は前方に武者人形の影のようなものを見た。克顕だった。炎の中で二人は見詰め合った。