第11回 2003年8月19日(火)放送 あらすじ

第11話 将軍の女たち~旅立ちのとき

 徳川幕府の運命を決める鳥羽伏見の戦いで、幕府軍は薩長の軍にもろくも敗れた。将軍・徳川慶喜(山崎銀之丞)は軍を残して江戸に戻った。幕府の崩壊が誰の目にも明らかになった。大奥も終わりの日を迎える。

 薩長の軍隊が江戸に迫り、大奥の女中たちの中に城を抜け出す者が続出した。瀧山(浅野ゆう子)は、徳川の家臣としての誇りを持って最後まで戦えと叱咤激励する。そこに、天璋院篤子(菅野美穂)が現れた。篤子は、「去りたい者は去ってよい。誰にも変えられない時の流れがあります。上様はもう大奥には来ません。誰もあなたたちを不忠とは呼ばないでしょう」と言った。
 一同が静まるなかで今度は瀧山が、「今、奥女中を帰せば、幕府の敗北を認めるようなもの。薩摩から来られた天璋院様の御身は御安泰でしょうが」と皮肉を込めて言い、二人は一歩も引かぬ態度でにらみ合った。

 江戸の治安が悪化していた。まる(池脇千鶴)の実家の越中屋が打ち壊しにあい、心労で父の喜兵衛(青野敏行)が倒れた。急を聞いたまるは里帰りして父を見舞う。再び城に帰るまるに、喜兵衛は迷った末に一通の手紙を渡した。読んだまるの顔面が蒼白になった。鳥羽伏見の戦いで重症を負った真之介(岡田義徳)は、松仙(磯部公彦)という地元の医者に助けられ、彼の家で治療を受けていた。しかし熱が高くて危険な状態が続いている。松仙は、「死に目に会いたければ来い」と手紙を書いた。
 宛先は、真之介が肌身はなさず持っていた、まるが小さい時にはいていた下駄に書かれた越中屋の住所だった。

 西郷隆盛が率いる倒幕軍が江戸に着いた。既に官軍になっている。大奥の女たちは、自分たちが辱めを受ける恐怖にふるえた。篤子はまるを連れて司令部に行き、西郷の側近の桐野利秋(木下ほうか)に会った。篤子は、島津の紋所が入った懐剣を出し、「薩摩の人を知っていますが、信頼出来る」と女たちの保護を頼んだ。桐野は安全を約束した。
 篤子はまるの様子がおかしいことに気づく。事情を聞いた篤子は、まるを抱きしめ、「早く真之介のところへ」と言った。この日、まるは大奥を去った。

 城を明け渡す日が来た。京へ帰る和宮(安達祐実)、ゆかりの者のところに身を寄せる実成院(野際陽子)。二人の駕籠を篤子と瀧山が見送った。「折に触れ争ったそなたと、最後は二人きり」と篤子は感慨深かった。二人はそれぞれに、大奥での日々を回想した。がらんとした御鈴廊下で瀧山は自害しようとする。瀧山は打ち首になった罪人の娘で、その美貌から当時の大奥年寄りに拾われた。帰る家もなかったのだ。篤子がそれを止める。「女の牢獄はなくなった。身分も縛られる場所もない。赤子に戻って生きよ」という篤子に、瀧山は涙を流し、二人は抱き合った。
 官軍が入城した。桐野とともに、懐かしい東郷克顕(原田龍二)の姿があった。克顕は篤子に、「薩摩藩と島津家で引き取り、暮らしの面倒を見る。どうか薩摩に戻り、故郷の山河を見て過ごされよ。思い出も、昔語りする友も…」。克顕はこみ上げる思いに胸がつまった。
 篤子が答えた。「お言葉は嬉しうございますが、お受けするつもりはございません。これからは、出来る限り自分の力で生きよう思うちょります」。毅然とした態度で篤子は懐剣を出し、克顕に返した。二人の胸の中に、いろいろな思い出がよみがえった。寂しさの中で、克顕は篤子の新しい出発を祝福する気になっていた。

キャスト

天璋院(篤子)… 菅野美穂
瀧山     … 浅野ゆう子
まる     … 池脇千鶴
和宮(静寛院)… 安達祐実
東郷克顕   … 原田龍二
今岡真之介  … 岡田義徳

葛岡     … 鷲尾真知子
吉野     … 山口香緒里
浦尾     … 久保田磨希
藤波     … 小松みゆき
雲井     … 片桐華子
喜兵衛    … 青野敏行
きく     … 紅 萬子
松江     … 栗田よう子

徳川慶喜   … 山崎銀之丞
桐野利秋   … 木下ほうか

実成院    … 野際陽子

スタッフ

■プロデュース
  保原賢一郎(フジテレビ)
  手塚 治(東映)
■脚 本
  浅野妙子
■演 出
  林 徹
■音 楽
  石田勝範
  オリジナルサウンドトラック(SME Records)
■製作協力
  東 映
■制 作
  フジテレビ制作センター

バックナンバー