顔
#10 19年前の真相を知る者
豪華な調度の部屋で金庫を漁る男。デザインされたゴージャスなエメラルドのネックレスなどをかばんに詰め込む。そこへ、その部屋の主・中村雅子(菅原あき)が帰って来た。男は、逃げ出そうとする雅子を捕まえ、馬乗りになり首を絞める。右手は手袋。左手は義手である。もがき苦しみ息絶える雅子。男はかばんを持ち素早く部屋を出て行く。反対側のドアが開いた。そこには、母親が殺される一部始終を見て立ちすくむ8歳の娘・アヤナ(望月瑛蘭)がいた。
そのころ、瑞穂(仲間由紀恵)は、施設時代からの親友・菅田ミカ(小橋めぐみ)とその恋人・林直哉(横塚進之介)とレストランにいた。ミカと直哉は間もなく結婚し、幸せいっぱいの二人から式の招待状を渡されたのだ。その時、七尾(田中律子)からの携帯架電が入った。雅子の強殺事件が発覚したのだ。
鶴田(益岡徹)班や亀田(矢島健一)班の刑事たちが中村家に揃う。雅子はアヤナと二人暮らしで宝石商を営んでいた。金庫のエメラルドのネックレスなどが盗まれたことが家政婦の証言や写真などから分かった。アヤナは犯人を目撃したとして、瑞穂の似顔絵描きが要求されたのだ。だが、そんなアヤナの状況を聞くにつれ、耕輔(オダギリジョー)は、現場で動揺を始めた。息遣いが荒くなり、昂ぶる感情を抑えている。耕輔の様子を見た尾崎(品川祐)は心配するが、鶴田、佐藤(河原さぶ)は、怪訝な思いに駆られる。
アヤナの病室で樋口(余貴美子)主導のもと、加奈子(京野ことみ)・七尾が見守る中、瑞穂の似顔絵描きが始まろうとしていた。樋口や七尾が優しく接するが、アヤナは反応を示さない。ショックで声が出なくなったのだ。
亀田は、どうにかして似顔絵かモンタージュを取れと強硬な姿勢を見せる。樋口は「そんなことをしたら一生心の傷が残る」と反対する。と言った瞬間、樋口は耕輔の存在に気が付き、緊張した。耕輔は亀田に絡みつく。怒る亀田は鶴田に「いつか、こいつに足を引っ張られるぞ」と捨て台詞を残し去って行く。樋口も鶴田に耕輔を「事件から外せ」と進言するが鶴田は「それほど柔じゃない」と聞こうとしない。
樋口はアヤナのために乳児用の縫いぐるみを持って来させた。アヤナはそれを抱き、指をしゃぶり始める。ショックによる退行現象の出現である。誰もいなくなったアヤナの病室に耕輔がやって来た。落ちた縫いぐるみを拾ってやりアヤナを見つめる。そこへ瑞穂が入って来た。耕輔にアヤナの様子を説明していると、内村(海東健)が押し入って来た。「この子が母親が殺されるところを見たの?」と、無礼にも写真を撮り始める。耕輔が反応した。腕を捻り上げ内村を押し出し「二度と近づくな」と内村を脅す。その様子は殺気すら含んでいた。
耕輔はしょうがなく樋口のカウンセリングを受けた。樋口は、19年前の母親が殺された事件のことを話さない限りトラウマは解決されない、と、耕輔に迫る。だが、耕輔は「時間の無駄だ」と相変わらず心を開こうとしない。しかし、外に出た耕輔は、8歳の自分から「人殺し!」と責められる幻想を見る。
無力感に苛まれながら帰宅した樋口は、見知らぬ小包が届いているのを見つけた。慎重に開けると、そこには豪華なエメラルドのネックレスが…。盗まれた雅子のものである。恐怖に陥る樋口。直ちに刑事たちが招集された。
そのころ、休みを取った瑞穂は、ミカの新居を訪れていた。楽しいひと時を過ごし、いとますると、携帯を忘れたのに気付いた。すぐに取って返すと、ミカの顔に傷が…。直哉のドメスティック・バイオレンスと直感した瑞穂が病院へ行こうと促すと直哉と争いになり、今度は瑞穂が怪我をしてしまった。
本部は警察関係者に同時に起こった事件で騒然となった。瑞穂が取調室の前にいると、直哉が連行されて来た。と、つかつかと歩み寄る耕輔。いきなり直哉を殴り出す。同行してきたミカが「止めて!」と叫ぶ。耕輔を抑えようと亀田班が囲むが、耕輔のパンチが亀田にヒットする。放心する耕輔。そんな阿鼻叫喚を内村が陰から見つめていた。翌朝の東都日報にその騒ぎが載ったのは言うまでもない。耕輔は、鶴田の命令で事件の捜査から外された。
再び、同様手口の強殺未遂事件が発生した。刑事部での会議が開かれる。佐藤が声を上げた。「19年前の事件と同様手口だ」。時効となった耕輔の母親の事件である。左手が義手であることも判明した。耕輔は、捜査に戻してくれと鶴田に直訴した。鶴田は「母親の犯人に対する憎しみから生まれた復讐心を、他の事件で晴らしている」と喝破し、許さない姿勢を見せるが、耕輔は「クビになっても離れません。でないと俺の中の事件が終わらない」と強引に捜査に合流するのだった。
そのやり取りを見ていた加奈子が、瑞穂に19年前の事件が耕輔の事件であると話していると、瑞穂の携帯が鳴った。直哉からである。ミカがいなくなったと言う。直哉はミカについて本当のことを言った。なんと暴力を振るっていたのはミカの方だったのだ。内容を聞いた樋口は、「再婚相手の暴力から自分だけ逃げ出した母親なのに、ミカは、自分が母親を守りきれなかった、母が去ったのは自分のせいだ、と強迫観念を抱き、それが、アルコール依存から暴力へと進んでいる」のだと分析する。しかも「最悪な場合は、自殺など自分への暴力へと進む」と警告した。驚く瑞穂。
瑞穂は耕輔を誘って、ミカのマンションに急行した。屋上に上がる二人。ミカがフェンスの外にいる。瑞穂は「あなたは悪くない。あなたは母親を守ろうとした意識から、暴力を振るうのよ」と説得する。だが、ミカは「彼にはもう迷惑を掛けたくない。もう終わらせたい」と応じない。と、耕輔が言い放った。「だったら死ねよ。分かってもらおうなんて甘えるな」。しゃがみこむミカを耕輔は急いで保護し「誰だって何かを背負ってるんだ」と優しく言い聞かせるのだった。
本部に帰って瑞穂は耕輔にミカを助けてくれた礼を言いながら「西島さんが19年前に見た犯人の顔を描かせてください」と切り出した。無視する耕輔。だが食い下がる瑞穂。「西島さんもミカと同じはずです。あなたの顔が見たいんです」。耕輔は立ち止まり、振り返った。耕輔はとうとう瑞穂の真剣な思いに心を開いた。19年前の母に馬乗りになり振り返る男の顔を、苦しげに思い出す耕輔。素早く描き続ける瑞穂。似顔絵が出来上がった。
そのころ、樋口のマンションのドアチャイムが鳴った。チャイムを押しているのは、19年後のその似顔絵の男であった…。
そのころ、瑞穂(仲間由紀恵)は、施設時代からの親友・菅田ミカ(小橋めぐみ)とその恋人・林直哉(横塚進之介)とレストランにいた。ミカと直哉は間もなく結婚し、幸せいっぱいの二人から式の招待状を渡されたのだ。その時、七尾(田中律子)からの携帯架電が入った。雅子の強殺事件が発覚したのだ。
鶴田(益岡徹)班や亀田(矢島健一)班の刑事たちが中村家に揃う。雅子はアヤナと二人暮らしで宝石商を営んでいた。金庫のエメラルドのネックレスなどが盗まれたことが家政婦の証言や写真などから分かった。アヤナは犯人を目撃したとして、瑞穂の似顔絵描きが要求されたのだ。だが、そんなアヤナの状況を聞くにつれ、耕輔(オダギリジョー)は、現場で動揺を始めた。息遣いが荒くなり、昂ぶる感情を抑えている。耕輔の様子を見た尾崎(品川祐)は心配するが、鶴田、佐藤(河原さぶ)は、怪訝な思いに駆られる。
アヤナの病室で樋口(余貴美子)主導のもと、加奈子(京野ことみ)・七尾が見守る中、瑞穂の似顔絵描きが始まろうとしていた。樋口や七尾が優しく接するが、アヤナは反応を示さない。ショックで声が出なくなったのだ。
亀田は、どうにかして似顔絵かモンタージュを取れと強硬な姿勢を見せる。樋口は「そんなことをしたら一生心の傷が残る」と反対する。と言った瞬間、樋口は耕輔の存在に気が付き、緊張した。耕輔は亀田に絡みつく。怒る亀田は鶴田に「いつか、こいつに足を引っ張られるぞ」と捨て台詞を残し去って行く。樋口も鶴田に耕輔を「事件から外せ」と進言するが鶴田は「それほど柔じゃない」と聞こうとしない。
樋口はアヤナのために乳児用の縫いぐるみを持って来させた。アヤナはそれを抱き、指をしゃぶり始める。ショックによる退行現象の出現である。誰もいなくなったアヤナの病室に耕輔がやって来た。落ちた縫いぐるみを拾ってやりアヤナを見つめる。そこへ瑞穂が入って来た。耕輔にアヤナの様子を説明していると、内村(海東健)が押し入って来た。「この子が母親が殺されるところを見たの?」と、無礼にも写真を撮り始める。耕輔が反応した。腕を捻り上げ内村を押し出し「二度と近づくな」と内村を脅す。その様子は殺気すら含んでいた。
耕輔はしょうがなく樋口のカウンセリングを受けた。樋口は、19年前の母親が殺された事件のことを話さない限りトラウマは解決されない、と、耕輔に迫る。だが、耕輔は「時間の無駄だ」と相変わらず心を開こうとしない。しかし、外に出た耕輔は、8歳の自分から「人殺し!」と責められる幻想を見る。
無力感に苛まれながら帰宅した樋口は、見知らぬ小包が届いているのを見つけた。慎重に開けると、そこには豪華なエメラルドのネックレスが…。盗まれた雅子のものである。恐怖に陥る樋口。直ちに刑事たちが招集された。
そのころ、休みを取った瑞穂は、ミカの新居を訪れていた。楽しいひと時を過ごし、いとますると、携帯を忘れたのに気付いた。すぐに取って返すと、ミカの顔に傷が…。直哉のドメスティック・バイオレンスと直感した瑞穂が病院へ行こうと促すと直哉と争いになり、今度は瑞穂が怪我をしてしまった。
本部は警察関係者に同時に起こった事件で騒然となった。瑞穂が取調室の前にいると、直哉が連行されて来た。と、つかつかと歩み寄る耕輔。いきなり直哉を殴り出す。同行してきたミカが「止めて!」と叫ぶ。耕輔を抑えようと亀田班が囲むが、耕輔のパンチが亀田にヒットする。放心する耕輔。そんな阿鼻叫喚を内村が陰から見つめていた。翌朝の東都日報にその騒ぎが載ったのは言うまでもない。耕輔は、鶴田の命令で事件の捜査から外された。
再び、同様手口の強殺未遂事件が発生した。刑事部での会議が開かれる。佐藤が声を上げた。「19年前の事件と同様手口だ」。時効となった耕輔の母親の事件である。左手が義手であることも判明した。耕輔は、捜査に戻してくれと鶴田に直訴した。鶴田は「母親の犯人に対する憎しみから生まれた復讐心を、他の事件で晴らしている」と喝破し、許さない姿勢を見せるが、耕輔は「クビになっても離れません。でないと俺の中の事件が終わらない」と強引に捜査に合流するのだった。
そのやり取りを見ていた加奈子が、瑞穂に19年前の事件が耕輔の事件であると話していると、瑞穂の携帯が鳴った。直哉からである。ミカがいなくなったと言う。直哉はミカについて本当のことを言った。なんと暴力を振るっていたのはミカの方だったのだ。内容を聞いた樋口は、「再婚相手の暴力から自分だけ逃げ出した母親なのに、ミカは、自分が母親を守りきれなかった、母が去ったのは自分のせいだ、と強迫観念を抱き、それが、アルコール依存から暴力へと進んでいる」のだと分析する。しかも「最悪な場合は、自殺など自分への暴力へと進む」と警告した。驚く瑞穂。
瑞穂は耕輔を誘って、ミカのマンションに急行した。屋上に上がる二人。ミカがフェンスの外にいる。瑞穂は「あなたは悪くない。あなたは母親を守ろうとした意識から、暴力を振るうのよ」と説得する。だが、ミカは「彼にはもう迷惑を掛けたくない。もう終わらせたい」と応じない。と、耕輔が言い放った。「だったら死ねよ。分かってもらおうなんて甘えるな」。しゃがみこむミカを耕輔は急いで保護し「誰だって何かを背負ってるんだ」と優しく言い聞かせるのだった。
本部に帰って瑞穂は耕輔にミカを助けてくれた礼を言いながら「西島さんが19年前に見た犯人の顔を描かせてください」と切り出した。無視する耕輔。だが食い下がる瑞穂。「西島さんもミカと同じはずです。あなたの顔が見たいんです」。耕輔は立ち止まり、振り返った。耕輔はとうとう瑞穂の真剣な思いに心を開いた。19年前の母に馬乗りになり振り返る男の顔を、苦しげに思い出す耕輔。素早く描き続ける瑞穂。似顔絵が出来上がった。
そのころ、樋口のマンションのドアチャイムが鳴った。チャイムを押しているのは、19年後のその似顔絵の男であった…。