数々の有力選手を指導する長光歌子さんが
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

最終回

対談企画 ゲスト:村元哉中選手&髙橋大輔選手

 今回で歌子の部屋は最終回を迎えることとなりました。そこでジュニア時代から長光歌子先生に師事し、現在は現役の日本男子選手で最年長である、バンクーバーオリンピック銅メダリスト髙橋大輔選手と、そのパートナーでオリンピアンの村元哉中選手にアイスダンスや歌子先生についてお話を聞いてきました。

2人はどうやってカップルを結成したのですか

ふたり

哉中ちゃんはクリス(・リード)と活躍してたからね。

哉中ちゃんがクリスと解散したタイミングと僕の復帰が一緒だったのかな。

クリスと解散して大ちゃんが復帰するニュースをみて、その時はカップルになるとは全く思ってなかったんですよ(笑)。

僕も全く思ってなかった(笑)。

大ちゃんファンだったので、プログラムとかも好きだったし、復帰するニュースを見て凄く喜んで、そのタイミングでクリスと解散して2シーズン空いたんですけど、いろんな方から「大ちゃんどう?」とか「大ちゃんダンス興味あるみたいだよ」って言われたから、復帰したばっかりだし本人に聞いてみないとわからないなと思って勇気を出して聞いてみて…というのがきっかけです。

復帰した年の、大阪の全日本の後に僕と同じ舞台を観に来ていて、僕が舞台に上げられてて、「あ、来てる!」となって、哉中ちゃんがさっちゃん(小月お姉ちゃん)に連絡先を聞いたんだよね。

その時は連絡先を知らなかったんで、姉にすぐに聞きました。

僕も普段は連絡あんまり返さないんだけど、たまたま返したんですよ(笑)。

さっちゃんが「あんまり返信返ってこないよ」って言ったら、すぐ返ってきて(笑)。

「アイスダンスのことで話したいことがあるんだけど」と連絡がきたけど、次のシーズンはシングルをするとを決めていて。

早くアイスダンスしといたらよかったね。

先生も最初は乗り気じゃなかったよね。「復帰したてだったし、もうちょっとシングルに」みたいな。

私的にはファンの人たちは大輔が1人で滑ってるところを見たいんじゃないかなと思って。

そこは私もすごく引っかかっていたところでした。大ちゃんというスケーターが復帰して、そこでアイスダンスっていうのはどうかなっていうのはすごく悩んだのを覚えています。

でもその年の氷艶を観ていて、今後大輔がパフォーマーとしてやっていくんだったら、女性と組んだり、多くの事にチャレンジした方がいいよねと感じて。

色々あったので、なかなかすぐ返事ができずに、7月に初めて一緒に滑ってみて、楽しかったんでやってみようかなと思いました。僕も色々考えたんです。哉中ちゃんはアイスダンスのオリンピアンだし、もっと上手なパートナーとやれば世界に行けると思っていました。なんで僕なんだろう?まだ27歳くらいならわかりますけど、33か4歳でスケーターとしてはまあまあ後半だぞって思ったり(笑)。経験者だったら全然気にならなかったんだろうけれど、よくここにきたなって思いました。でも「もうなんかいいや、哉中ちゃんが選んだから哉中ちゃんのせいにしよう」とか思って(笑)。でもやってみないとわからない、やってみたい気持ちもあって、先のことを考えても何も進まないなと思って。27歳くらいだったら逆にやらなかったかもしれないですね。34歳ってラストチャンスなんです。36歳くらいになってからもう1回スタートしたいと思ったらちょっと勇気出ないですしね。

私はアイスダンスは好きですけど、全然わからないからチャレンジしてみたらと思っていました。そしてペアを組んで数か月が経って練習を見る機会があったんです。そうしたら「えっ…もうすぐシーズン始まるよね?」と思うぐらいのありさまで(笑)。その時大変なことにチャレンジしているんだと感じました。

いやー難しかった。僕は振付を覚えるのは早い方なんですが、まず振付が覚えられないっていう。

速いもんね。

パッと見て、「ああわかった」と思うんですけど、いざやってみると動けない。固まってしまって。

だって組んだことすらないもんね。

そうそう。最近はこうきたらこう組むみたいなのがわかるようになってきたけど。それでもまだコーチに一気に振付を見せられると難しい。「人間ってわからないことがあると固まるんだ」と実感しました。

見えてなかった?

見てるけど、組む処理が追いつかなかった。すごく大変だった。

私もシングルからアイスダンスに行った時に、わけがわからなかったですね。私の場合は野口(博一)くんもクリスも2人とも経験者としてリードしてくれたっていうのもありました。大ちゃんと私の場合逆パターンじゃないですか。私もアイスダンスの経験が深いわけではないので、男性の「どっちにリードするか」っていうのはそこまで把握しきれていなくて、どうやったら助けられるかな…と思っていました。でもやっぱりすぐ習得するし、理解するのが早い。先生たちもびっくりしていました。普通だったら2年で今のレベルに到達できてはいませんね。

僕はちょっと頑固な部分があって、自分の中で違うと思ったら吸収できない時があるんです。譲らない時があって(笑)。

わかる。

そうですよね。歌子先生も大変だったと思う(笑)。

もうちょっと素直にやればやりやすいと思うんだけど、絶対曲げないよね。

僕の中では違うんですよね。でも素直にできた時はすごくやりやすかった。自分のイメージもまだまだと思いました。

でも本当にそれぐらい理解するのは早かったですね。

カップルの距離感について

それぞれなんじゃないかな。本当に普段から仲良くずっと話したりする人もいれば、アップも全然バラバラの人もいるよね。全然バラバラで、急に合わせて滑って。そのあとも会話もなく別に仲悪いわけじゃないんですよね。

それはたまにいるけど。

それでちゃんと氷の上でうまくいくの?

わからない。たぶんうまく行ってないんじゃないかな。

でも何が正解とかじゃないと思う。

そのチームに合った距離感を探さないといけない。

2人は話し合って決めるタイプですか

どうですかね?疲れすぎちゃって話し合いにならない時もありますけど(笑)。でも二人ともケンカになることはないですね。

ないね。

どっちかが言ったら相手がバランスをとる感じ。

ニコライに見てもらっていた時の5組のダンサーたちが、毎日どこかの組がケンカをしているんです。ダンスの先生ってケンカの仲裁役もしなくちゃいけないんだなって思ったの。

どっちの味方になりすぎてもダメだし…。

ところで哉中ちゃんはすごい勇気があるよね。

そうだね。

だってさ、体格のいいクリスに飛び込んでいくのはね、私もできるかもと思うんだけど(笑)。去年の大輔なんかまだ身体ができてないのに、アクセルで飛び込んで行ってたでしょ。よくやるなと思って。

あれはほぼギリギリで決まったね。

試合ね…ギリギリで決まったね。

1週間前にあのリフトが決まって、やるしかないって思いました。

でも私がビビッて引いちゃうと、本気でやった時の感覚がわからないから。最初から本気で行かないと危ないから。

あれは本当にすごいと思った。

僕はまだ怖いけど(笑)。落とさないように気を付けています。

でも理解するのが上手だから、危ない時はすぐに止まってくれます。

なんとかやれてるみたい。自分の中では止まっちゃうときは「ごめーん」って感じなんだけど。でも引っかかっちゃってこける時はどうしようもないよね。

もうセーブしようがないから。

昔からの選手がみたら、リフトとかまだ相当怖いと思う。

いやいや、そんなことないよ。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)