~フジテレビアナウンサーがスピーチ指導~
児童養護施設で暮らす子どもたちによるスピーチコンテスト「カナエール」
[2012年7月27日更新分]
児童養護施設で暮らす子どもたち(退所後の子どもたちも含む)を対象にした奨学金支援をかねたスピーチコンテストが7月1日に行われました。
テーマは"夢"
みんなの"夢"を「かなえる」ということで、コンテストの名称は「カナエール」といいます。
みんなで発声の基礎トレーニングこれは認定特定非営利活動法人「ブリッジフォースマイル」が主催するもので、児童養護施設を退所後の若者たちが、夢を叶えるために社会全体でサポートするプログラムのひとつです。今年の出場者は男子4人、女子5人。
この9人に対して、今回はじめてフジテレビアナウンサーが発声、滑舌などのトレーニングを行いました。
児童養護施設は、児童福祉法第41条の基づき、様々な家庭の事情により家族と暮らせない子どもたちが生活する施設です。現在全国に約580ある施設に2歳~18歳の子どもたち約31,000人が生活。
身寄りがないため児童養護施設で暮らす子どもは、全体の1~2割程度で、ほとんどは保護者の経済的困窮や病気、虐待などがその理由です。つまり児童養護施設で暮らす子どもたちの8~9割が孤児ではないのです。
そして、そんな児童養護施設で暮らす子どもたちも、高校卒業とともに(18才)自立しなければなりません。しかし、驚いたことに退所後のケアはほとんどなく、それが大きな課題となっています。
職業の選択の幅も狭くなかなか安定した職につけない、進学したくても経済的な理由などから進学できない、進学してもアルバイトとの両立がうまくいかず退学してしまう・・・などなど、自立にはたくさんの壁が立ちはだかっています。中には、親からの虐待などの経験から人間関係がうまく築けない、社会に適応できない子もいるといいます。
自立には、本人の努力はもちろんですが、【上手に人間関係を築くためのコミュニケーション能力・社会的スキル】、【支え合える仲間】、【経済的な支援】が必要なのです。
「カナエール」スピーチコンテストには、それらを同時にサポートするねらいがあります。
スピーチを通じてコミュニケーションや情報発信能力を養い、ひとりの子どもに対して3人のボランティアの大人がしっかりとサポートし、コンテストの入場料は、奨学金になります。(個人レベルでも企業など団体レベルでもこの活動のサポーターになることは可能です。)
今回、フジテレビアナウンサーは、このスピーチコンテストをよりよいものにするために、放送で培ってきた「伝える力」を、一人一人のスピーチ内容に合ったかたちで個別に指導しました。
参加してくれたアナウンサーは、奥寺健アナウンサー、川野良子アナウンサー、森昭一郎アナウンサー、梅津弥英子アナウンサーの4人。
レッスンは5回開催。子どもたちは、学校やアルバイトで忙しいため、全員に対して充分な時間がとれたかはわかりませんが、発声の仕方や、スピーチの組み立て方、間の取り方など真剣に耳を傾け、当日のプレゼンテーションに生かしていました。
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梅津アナ・川野アナ・奥寺アナが 声の出し方を指導 |
森アナのマンツーマン指導 | 2組合同で指導 |
感動につつまれた会場準備をはじめてから約3か月・・・途中どうなることかと心配された時期もありましたが、本番当日250人を超える観客で埋め尽くされた会場で、9人はそれぞれ立派に自分の将来の夢を語り、彼らのストレートな言葉に思わず涙する人も多く見られました。
小学校の先生になりたい・・・
児童養護施設の先生になりたい・・・
保育士になりたい・・・・ 音楽家になりたい・・・・
看護師になりたい・・・
芸術の素晴らしさを伝えていきたい・・・ スポーツインストラクターになりたい・・・
漫画家になりたい・・・
彼らの夢は、すべて「過去に自分に力を与えてもらったこと(人)」への"恩返し"でした。
奥寺健アナウンサー
子どもたちが輝く瞬間にご一緒させていただきました。子ども…というより素敵な若者と知り合えて、本当にうれしかったです。
スピーチの内容もさることながら、みな感性が豊かで、ほんの小さなことにも心が敏感に反応する様は、繊細な装飾を施された美術品を見るようでした。
それを磨く作業を、今回少しだけ手伝わせていただいたと思っています。言葉は彼らの心の動きを見事に辿っていたので、本番を聴いた方々は、きっと心が"共振"したと思います。またこのような機会をいただけたら幸いです。
川野良子アナウンサー
これからまさに社会人になろうとしている彼らに、「何を、どうやって」教えたらいいのか。
初めは不安もありましたが、高い志しを持った彼らに対して、その不安は杞憂に終わりました。沢山の人の前でスピーチをするというのは、本当に緊張するもの。でも、スタッフのみなさんや我々からのアドバイスを生かし「自分の言葉で伝える」ことができた彼らに心からの拍手を送りたいと思います。
この経験が、今後の社会生活の上での自信に繋がることを祈っています。
森昭一郎アナウンサー
みなさんの心の中には、とってもキラキラした"やりたいこと"が詰まっていて、私の方が逆に刺激を受けた気がしました。
あんなキラキラした「思い」が、叶わぬわけがない…と、信じています。
いつか自分が、みなさんの奏でる音楽に安らぎ、みなさんの描くストーリーに笑い、みなさんの教えを受けた子どもたちと一緒に仕事をし…そんな日が来ればいいなと思っています。
梅津弥英子アナウンサー
とっても貴重な体験でした。
限られた時間、限られたコミュニケーション。どこまで役に立てたのか・・・という想いは正直あります。
ただ、それぞれの子どもたちが自分を表現しようとしている姿に、心から感動しました。
自分の生きてきた道と向き合うことは、彼らにとって心地よいことだけではなかったはず。
それでも、必死に伝えようとする姿を見て、涙が出ました。
彼らが自立するための道のりには、きっと、これからもたくさんの壁があるはずです。
壁にぶち当たった時、今回の経験を思い出してくれたとしたら、こんなに嬉しいことはありません。
この「カナエール」スピーチコンテストの出場者は毎年10人前後で、今回フジテレビアナウンサーがサポートしたのは9人です。
数だけみると全体の内のほんのわずかですが、ここで夢を語った若者たちが、近い将来「夢をかなえる」ことで、
全国の児童養護施設で暮らす31,000人に大きな希望を与えるとともに、彼らの巣立ちが他の多くの子どもたちの“夢の入り口”になっていくことでしょう。
ブリッジフォースマイルが行っている自立支援活動は、セミナーやジョブプラクティスなど多岐にわたります。
フジテレビは今後も児童養護施設の子どもたちのために何ができるかを考えていくとともに、この活動に対する支援者の輪がもっともっと広がっていくことを心から願ってやみません。