がんばっていきまっしょい
初めての夜
悦子(鈴木杏)は元気がない。原因は初恋、相手は校内人気ナンバーワンの三郎(田口淳之介)だ。これまでは気安く話せたのに、今では遠くから三郎の姿を見つめてはため息をつくばかり。その三郎は男子ボート部に入ったものの、相変わらずのマイペースでミーティングにも顔を出さない。浩之(錦戸亮)はうんざりだが、引退間近の安田(北条隆博)から「お前とあいつでやっていかな」と諭されて我慢した。悦子は気づかれていないつもりでいたが、多恵子(岩佐真悠子)たちはすっかりお見通しだった。間もなく修学旅行で大阪へ行く。真由美(藤本静)が「チャンスよ!」と興奮すれば、利絵(相武紗季)は「自由行動、一緒に出かけようと誘ってみぃや」とアドバイス。敦子(佐津川愛美)も「中田君と一番仲えぇやない」と言ってくれたから、悦子も少し自信が出てきた。修学旅行初日、悦子が勇気を奮って三郎を誘おうとした瞬間だった。「会いに行く、小百合に。この街におるんや。忘れられん、好きなんや」。三郎の衝撃的な告白に悦子は言葉を失った。
同じころ、根本(小日向文世)のお好み焼き屋には、なじみの顔が続々と詰め掛けていた。オノケンコーチこと大野(池内博之)がシングルスカルの代表枠レースに臨むことになり、その壮行会が開かれていた。レースは進境著しい若手選手とのマッチレース。大野にとっては引退をかけた大一番だ。激励には幸雄(大杉漣)や友子(市毛良枝)、法子(浅見れいな)に混じって、ジュニア時代から教えてもらっている新海高校のちえみ(関めぐみ)も駆けつけた。隣り合わせた法子はちえみから、三郎が同じ絵の教室に通っていたちえみの姉とつきあっていたことを知った。それが小百合(石川亜沙美)だった。「でも、うちの親が厳しくて。姉の受験をきっかけに別れさせられたんです」。三郎より5才年上の小百合はすでに美大を卒業して大阪で就職しているという。
三郎は宿泊ホテルに戻っても「どうしても会いたいんや」と小百合のことで居ても立ってもいられない。真由美たちはなんとか話をそらそうとするが、悦子はますます落ち込むばかり。翌日ついに三郎は浩之にフォローを頼むと小百合に会いに行ってしまった。悦子は「ほうなんや」と言ったきりぼう然となったが、浩之もそんな悦子を複雑な思いで見た。ところがその夜、三郎は沈んだ表情で戻ってきた。久しぶりに会えた小百合は派手な外見でまるで別人のようだった。「夜の仕事」。さらに小百合は悪びれた様子もなく恋人と同棲していると打ち明けた。三郎は「ま、そういうこっちゃ」と平静を装ったがショックの色は隠しきれなかった。
翌日、悦子は利絵から小百合に会いに行こうと誘われて驚いた。三郎が捨てたアパートの住所メモを拾っていたのだ。「実物すぱっと見てしもた方がえぇんよ」。利絵に引っ張られるように悦子はアパートに着いたが小百合は留守だった。ところが隣りの老婦人によれば、小百合は働きながら寝食を惜しんで絵の勉強を続けており、生活ぶりも慎ましやか。同棲相手などいないという。小百合はどうして三郎にあんな偽りの姿を見せたのか。悦子は早速三郎に伝えようとするが、多恵子に「嘘ついたのは理由あってのこと」と反対されて困惑した。
悦子は小百合のことを黙ったままの自分が後ろめたいまま、旅行最終日を迎えた。一方、松山では代表枠レースの当日。大野は練習のオーバーワークで体調を崩したまま、本番に臨むことになった。仁美(石田ゆり子)は心配しすぎて応援に行く気になれなかったが、友子の「夫婦ってそばにいるだけでええんよ」の一言でふんぎりがついた。仁美がダム湖に着くと、すでにレースは抜きつ抜かれつのデッドヒートの真っ最中。「がんばって!いきまーしょいっ!」。最後の競り合いを制したのは大野だった。「勝った!ようやった」。根本と幸雄は喜びを爆発させた。
朗報はすぐに大阪にも届いた。ちょうど悦子は三郎と公園の池でボートに乗っていた。悦子がケータイに出ると仁美の弾んだ声が聞こえた。「大切な人のとびきり幸せな顔、見れるいうんはええもんやね」。いつもは厳しいコーチの仁美が涙ぐんでいる。ハッとなった悦子は三郎の手を取ると「もう時間無い、はよう行こう!」とはじかれたように駆け出した─。
同じころ、根本(小日向文世)のお好み焼き屋には、なじみの顔が続々と詰め掛けていた。オノケンコーチこと大野(池内博之)がシングルスカルの代表枠レースに臨むことになり、その壮行会が開かれていた。レースは進境著しい若手選手とのマッチレース。大野にとっては引退をかけた大一番だ。激励には幸雄(大杉漣)や友子(市毛良枝)、法子(浅見れいな)に混じって、ジュニア時代から教えてもらっている新海高校のちえみ(関めぐみ)も駆けつけた。隣り合わせた法子はちえみから、三郎が同じ絵の教室に通っていたちえみの姉とつきあっていたことを知った。それが小百合(石川亜沙美)だった。「でも、うちの親が厳しくて。姉の受験をきっかけに別れさせられたんです」。三郎より5才年上の小百合はすでに美大を卒業して大阪で就職しているという。
三郎は宿泊ホテルに戻っても「どうしても会いたいんや」と小百合のことで居ても立ってもいられない。真由美たちはなんとか話をそらそうとするが、悦子はますます落ち込むばかり。翌日ついに三郎は浩之にフォローを頼むと小百合に会いに行ってしまった。悦子は「ほうなんや」と言ったきりぼう然となったが、浩之もそんな悦子を複雑な思いで見た。ところがその夜、三郎は沈んだ表情で戻ってきた。久しぶりに会えた小百合は派手な外見でまるで別人のようだった。「夜の仕事」。さらに小百合は悪びれた様子もなく恋人と同棲していると打ち明けた。三郎は「ま、そういうこっちゃ」と平静を装ったがショックの色は隠しきれなかった。
翌日、悦子は利絵から小百合に会いに行こうと誘われて驚いた。三郎が捨てたアパートの住所メモを拾っていたのだ。「実物すぱっと見てしもた方がえぇんよ」。利絵に引っ張られるように悦子はアパートに着いたが小百合は留守だった。ところが隣りの老婦人によれば、小百合は働きながら寝食を惜しんで絵の勉強を続けており、生活ぶりも慎ましやか。同棲相手などいないという。小百合はどうして三郎にあんな偽りの姿を見せたのか。悦子は早速三郎に伝えようとするが、多恵子に「嘘ついたのは理由あってのこと」と反対されて困惑した。
悦子は小百合のことを黙ったままの自分が後ろめたいまま、旅行最終日を迎えた。一方、松山では代表枠レースの当日。大野は練習のオーバーワークで体調を崩したまま、本番に臨むことになった。仁美(石田ゆり子)は心配しすぎて応援に行く気になれなかったが、友子の「夫婦ってそばにいるだけでええんよ」の一言でふんぎりがついた。仁美がダム湖に着くと、すでにレースは抜きつ抜かれつのデッドヒートの真っ最中。「がんばって!いきまーしょいっ!」。最後の競り合いを制したのは大野だった。「勝った!ようやった」。根本と幸雄は喜びを爆発させた。
朗報はすぐに大阪にも届いた。ちょうど悦子は三郎と公園の池でボートに乗っていた。悦子がケータイに出ると仁美の弾んだ声が聞こえた。「大切な人のとびきり幸せな顔、見れるいうんはええもんやね」。いつもは厳しいコーチの仁美が涙ぐんでいる。ハッとなった悦子は三郎の手を取ると「もう時間無い、はよう行こう!」とはじかれたように駆け出した─。