第6回 2005年8月9日(火)放送 あらすじ

好きなんよ

 女子ボート部は退屈な陸トレにうんざりして、勝手にボートを漕ぎ出して遭難騒ぎを引き起こした。おかげで仁美(石田ゆり子)からはコーチを断られ、男子部からは艇庫の使用禁止を言い渡された。悪いのは自分たちだから女子部員は顔を見合わせてはため息ばかり。キャプテンの悦子(鈴木杏)が男子部に謝るしかない。いざとなれば浩之(錦戸亮)が口添えしてくれるはずと部室の前まで来たら、中から悦子のことをけなす浩之の声が聞こえてきた。「ジャングルジムのてっぺんから突き飛ばしたんです」。実は悦子との仲の良さを先輩たちにからかわれて、昔のケンカのことをとっさに口走ってしまったのだ。そんな事情とは知らない悦子はいきなり浩之の胸ぐらをつかむと「許さん!」と投げ捨てた。「あんたらのボートなんか、絶対借りん!」。怒りのあまり悦子は叫んでしまった。
 これでは話をつけるどころか逆効果。「余計こじれてしもたがぁ」。近くの堤防に座った悦子、利絵(相武紗季)、敦子(佐津川愛美)、多恵子(岩佐真悠子)、真由美(藤本静)の5人はうなだれた。浩之もひそかに心配していたが、上級生の窪田(田中琢磨)に代わって第一クルーに抜てきされたプレッシャーでそれどころじゃない。ラグビー部で補欠に回されて「いまどき年功序列か」とボヤく三郎(田口淳之介)とは大違いだ。男子部コーチの大野(池内博之)も元気が無いのは、口論になった仁美が実家に帰ってしまったからだ。つまりボート部はコーチも部員もバラバラの状態にあった。
 悦子はいつまでも落ち込んでいなかった。みんなで仁美の実家のうどん屋に押しかけて「また練習みてください」と頭を下げて、半ば強引に再びコーチをしてもらえることになった。仁美はまず男子部との関係を修復させようとするが、大野と顔を合わせるなり「ガキっぽい真似するな」「ガキっぽいのはどっちよ」と夫婦ゲンカ再燃。だから女子部も練習を再開したものの、男子部とは意地の張り合い。男女両部のボートは抜きつ抜かれつで海上を暴走していったが、前方への注意を怠った瞬間、女子部のボートににぶい衝撃音が走った。
 ぶつかったのは田中ちえみ(関めぐみ)率いる新海高校の女子クルーだった。どちらにもケガ人は出なかったが、新海高校のボートに大きな亀裂ができてしまった。修理代は1人5万円。悦子は母親の友子(市毛良枝)に泣きついたが「そんな大金」とつれない返事。あとは父親の幸雄(大杉漣)に頼るしかないが、祖母のキヌ(花原照子)に「今はやめとき」と耳打ちされた。長女の法子(浅見れいな)から結婚を考えている恋人のいることを打ち明けられて、すっかり落ち込んでいるという。事実幸雄から「お前はこの家おりゃぁえぇ」と声をかけられて悦子はびっくりした。そんな優しい言葉をかけられたのは初めてだった。
 結局誰も5万円を用意できなかった。5人が部室で肩を落としていると、顧問の福田(相島一之)が「問題解決したぞ」とやって来た。修理代はいらない代わりに、新海女子ボート部では雑用係をしてほしいという。琵琶湖で開催される全国大会に向けて人手が足りないらしい。ライバルチームの雑用係とは屈辱的だが、悦子たちは男子部のトレーニングを横目に見ながら新海高校のボート用具を運び出した。さんざんこき使われて自分たちのトレーニングはできずに1日が暮れた。
 いつまでも口をきかない男女ボート部員に業を煮やした根本(小日向文世)がOB会の開催を思いついた。準備を一緒にさせれば、OBの前でケンカしているところを見せるわけにもいかないはず。仁美からも「いい加減、歩み寄らな」と諭されて悦子は折れた。会場は根本のお好み焼き屋。緑(友近)も手伝ってくれて悦子たちがコップを並べていると、次々とOBたちがやって来た。ところが男子部員が来ない。悦子が部室に呼びに行くとイメージトレーニングの真っ最中。どの顔も脳裏に波を思い描いて真剣そのもの。「もうOB会なんですが」「うるさい、集中できんやろが!」。浩之に怒鳴られ、悦子は怒りをこらえて部室を後にした。
 結局男子部がお好み焼き屋に着いた時、悦子たちの姿は無かった。大野から「怒って帰ってしまったぞ」とたしなめられても、浩之は「いま大事なのは勝つことです」と言い放った。すると根本がにぎやかに盛り上がっているOBたちを指差して「勝つことだけがボートやないんやけどな」とぽつりと漏らした。長い人生のたった3年間一緒に頑張っただけで、いつまでも話し合える。ボートはそんな時間をくれる。「なのに将来、お前らの代だけあんな風に集まれんかったら寂しいよなぁ」。根本のつぶやきにも似た嘆きに、男子部員はしんとなった。
 翌朝、浩之は悦子に謝ろうとするがきっかけがつかめない。ぎくしゃくした空気の中、仁美がうれしい知らせを届けてくれた。昨夜のOB会でボートの修理代のカンパが集まったのだ。喜び勇んで悦子はちえみに手渡そうとしたが、ちえみは「いらんから、このまま練習手伝うて」と受け取らない。しかも悦子が「私らも練習せんと」と漏らすと、ちえみは「必要ないやない」と応じた。新海と松山第一ではボートのレベルが違う。悦子たちのボートはただ暇つぶしの部活と決めつけたのだ。「同じボート漕いでてもあんたらとはまるきり違う。どうしても嫌言うなら、頭下げて。ほうしたらもう手伝わんでえぇ」。思いもかけないちえみの要求に悦子たちは呆然と立ち尽くした──。

キャスト

篠村悦子 … 鈴木 杏

関野浩之 … 錦戸 亮
中田三郎 … 田口淳之介

矢野利絵 … 相武紗季
菊池多恵子 … 岩佐真悠子
中崎敦子 … 佐津川愛美
中浦真由美 … 藤本 静
   ●
大野仁美 … 石田ゆり子
大野 健 … 池内博之

福田正一郎 … 相島一之
篠村法子 … 浅見れいな
根本 緑 … 友近
   ●
篠村友子 … 市毛良枝
根本 満 … 小日向文世
篠村幸雄 … 大杉 漣

スタッフ

■原作
 「がんばっていきまっしょい」敷村良子(幻冬舎文庫刊)

■脚本
 金子ありさ

■プロデューサー
 重松圭一

■演出
 三宅喜重

■音楽
 オリジナルサウンドトラック「がんばっていきまっしょい」
 吉俣 良(ポニーキャニオン)

■制作
 関西テレビ

バックナンバー