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<第1回>
 有吉響子はK大学病院の産婦人科医師。大手建設会社の設計士・晃と結婚して四年目になる。
 三十歳の誕生日を迎えた響子に、晃がそろそろ子どもが欲しいときりだす。
 が、響子はまだ欲しくないと。響子は松本の山野産婦人科で生まれた。母は響子を産むとすぐに亡くなり、父親が誰かもわからなかった。
 山野医院の院長・山野は引き取り手のない響子を養女にした。
 やがて、出生の秘密を知った響子は、自分を産んでくれた母への感謝から産婦人科医の道を選んだのだった。
 ある日、晃の子を妊娠したという真奈美が、響子の診察を受けにくる。

<第2回>
 晃と同じ会社の専務秘書真奈美から、晃の子どもを妊娠したと告げられ、響子は愕然とする。
 その夜、響子は真奈美が病院に来たことを晃に告げる。晃は響子を裏切ったことを認めるが、それは一時の気の迷いで、真奈美とはきっぱり別れたという。
 翌日、晃は真奈美に子どものことを確認し、処置してほしいと頼む。
 真奈美は、産む、産まないは自分が決めると……。
近所に住む晃の母・和子が晃の不倫を知り、大騒ぎする。響子と晃は二人でよく話し合う。
 真奈美とは本当に終わり、今、愛しているのは響子だけだ、と訴える晃。
 が、響子は信じられずに苦しむ。

<第3回>
 響子の病院で、妊婦のみちるが中年女性・時子に嫌がらせをされる。不妊治療をしていた時子は、夫に離婚届をつきつけられるが、みちるのお腹の子の父親がその夫だった。響子は嫉妬に狂う時子が自分の姿と重なり、暗い気持ちになる。
 そんなとき、響子の父・山野が、心筋梗塞で病院に運ばれる。響子は急ぎ松本に駆けつけるが、響子の同級生で小児科医の大輔が、いろいろと親切にしてくれる。
 その夜、山野医院に入院中の患者が苦しみだす。響子は緊急オペ、患者の容体は落ちつく。
 山野がしばらく入院することになり、医院は休診を余儀なくされた。
 晃が松本にやってくる。

<第4回>
 山野の容体と響子のことが心配な晃が、松本にやってくる。責任を持って真奈美を説得するから、もう一度話し合いたい、と訴える晃。響子は何も答えられない。
 山野を見舞った晃は、その日のうちに東京へ帰っていく。
 夜、晃は真奈美のマンションを訪ね、妻と別れる気はないから、子どもを処置してほしい、と説得する。
 が、真奈美は、誰が何といおうと産む、と全く耳を貸さない。
 響子は山野が仕事に復帰できるようになるまで、山野医院を預かることにする。
 その準備のため、響子は一旦東京へ戻るが、真奈美が訪ねてきて、響子をひどく傷つける。

<第5回>
 響子から山野医院を手伝うことを聞かされた晃は、驚いて反対する。響子は真奈美に侮辱されたことを告げ、しばらく別居したいという。
 響子の山野医院での生活が始まった。
 妊娠五ヵ月の智子が、突然中絶を希望する。響子は反対するが、妻子ある男の子を身ごもった智子は聞きいれない。
 響子は何かと親切にしてくれる大輔に、晃ともめていることを打ち明ける。
 真奈美が退職。自分を一途に愛してくれる真奈美が不憫になった晃は、彼女への責任として、子どもを産ませてやりたいと思う。
 そして、響子に対する責任の取り方として、離婚を決意する。

<第6回>
 真奈美が子どもを産むことを認めた晃は、響子に離婚をきりだす。愛しているのは響子だけだが、もう結婚生活を続けていく資格はないと。
 離婚など考えもしなかった響子は、ショックを受ける。
 山野が退院。離婚問題で悩む響子に、答えを急ぐな、と忠告する。そして、生まれてくる命に罪はない、ともいう。
 晃の母、和子が、離婚を思いとどまるよう響子に頼みにくる。このままでは晃の出世に響くので、和子は気が気でない。
 響子は真奈美に会い、子どもを産むことに決めた理由を問いかける。憎しみよりも、女の哀れさを感じる響子……。

<第7回>
 「愛している人の子どもだから産みたい」真奈美は言った。それは、未婚で響子を産んだ母親と同じ気持ちだった。
 響子は決意した。真奈美が子どもを産むことを受け入れて、離婚はしないことを。
 響子は有吉家に戻り、大学病院にも復帰した。山野は回復して、再び医院の仕事に就く。
 響子と晃は危機を乗り越え、表面的にはもとの日常におさまっているかのようだった。
 が、以前とは何かが違っていた。
 そんな折、真奈美が切迫流産で、響子の病院に運ばれる。いっそ流産してしまえばいい、という真奈美の頬を、響子は打つ。

<第8回>
 流産の危機を脱した真奈美が退院。流産してくれたほうがよかったのかもしれない、とつぶやく晃を響子はたしなめる。
 響子のことを心配した大輔が、それとなく様子を見にくる。響子はいつも一生懸命だから、どんなことも乗りきることができる、と励ます大輔。
 晃は真奈美を見舞い、食事の世話などをする。そして、できる限りのことをするから、無事に子どもを産んでほしい、といたわりの言葉をかける。
 その夜真奈美を訪ねたことを、晃は響子に言いだせなかった。
 翌日、響子は和子の口から、晃が真奈美の部屋に行ったことを知らされる。響子の心は揺れる。

<第9回>
 山野が突然、響子に会いにくる。晃とのこと、真奈美の子どものことなど、父親として、山野はやさしく響子に忠告する。
 松本に戻った山野が急死。
 あっけない父の死に、号泣する響子。
 山野の葬儀を無事済ませ、山野医院を閉めようとする響子に、晃が、響子は医院を継ぐべきだ、といいだす。
 自分も再出発のために、松本に引っ越すと。響子は驚くが、晃の思いつめた顔を見て、その意志に従う。
 晃は会社を辞め、真奈美に松本へ行くことを告げる。真奈美は何も言わずに、晃を見守る。
 晃の決心を聞き、和子は逆上。
 が、晃は自分の信念に基づいて、響子と松本へ発つ。

<第10回>
 響子は晃とともに松本に戻り、山野医院を引き継ぐ。
 開業初日、患者が全く現れず、響子は落ち込む。大輔は宣伝に協力してくれるといい、晃とも意気投合する。
 翌日、高校生の芳美が、同じ年の正人にかかえられて、山野医院にやってくる。  響子は妊娠している芳美を緊急手術。母子ともに助かるが、芳美と正人は家出してきたといい、子どもを産むかどうかも悩んでいた。
 まもなく、芳美の母・芳子が駆けつけてきて、響子に中絶を頼む。
 晃に励まされた正人は、父親になる覚悟を決め、芳子を追い返す。
 正人と芳美は新しい家庭をつくるため、晴れ晴れとした顔で去っていく。


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