<第1回> <第2回> <第3回> <第4回> <第5回>
<第6回> <第7回> <第8回> <第9回> <第10回>
<第1回>
今年の冬は寒さが一段と厳しく、史上最悪の不景気とあいまって、ここ山中温泉を心底から冷え込ませていた。
そんな中、旅館「翠明」の仲居たちは、はるを先頭に明るく、朗らかにお客様を接待していた。
高齢の仲居、浜子が仕事上のミスが続き、旅館を辞めさせられそうになる。はるは、女将の涼子に抗議。が、人事に口を出すことは許さない、と叱られる。納得のいかないはるは職場放棄して、鉄観和尚のところで“修業”を始める。
翌日、涼子がはるの様子を見にくるが、はるはとりつく島がない。涼子は、はるを当分謹慎中ということにする。
<第2回>
はるが鉄観和尚のところにころがりこんで、三日経った。
和尚の使いで町へ出かけたはるは、涼子が中年の男性と親しそうに、改装中のワインバーへ入っていくのを目撃。そのバーの店長、佐島から、中年の男性がバーのオーナー、福井の造り酒屋の社長、朝倉であることを聞きだす。
翌日、寺で節分の豆まきが行われ、涼子も豆まきに参加する。朝倉も来ていたので、はるは憮然。その日、はるは行きつけのうどん屋「三井屋」で、下宿の下見にきた瀬川と会う。瀬川の話から、翠明の上得意のコンビニ「オールデイズ」が倒産するかもしれないと知ったはるは、涼子のもとに駆けつける。
<第3回>
はるは翠明のピンチを涼子に知らせようとするが、とりあってもらえず、三井屋でやけ酒をあおる。そして、柄の悪い男たちにからまれる。
その頃、涼子は和田支配人から、オールデイズの自己破産の噂を聞かされる。
その夜、はるは謹慎中にもかかわらず客の前に出て、サービス精神を発揮する。が、和田支配人から、余計な真似だと叱られ、しばらく自分を見つめ直した方がいいと忠告される。
翌日、和田支配人のもとに、オールデイズが自己破産宣言をする、という情報が入る。和田はそのことを秘密にしたまま、はるを仕事に復帰させる。はるはオールデイズの研修責任者として張り切るが……。
<第4回>
オールデイズが倒産。翠明での宿泊研修の予約は全部キャンセルになり、莫大な被害をこうむる。
研修の予約をとったはるは、和田支配人から責任を問われ、窮地に陥る。仲居たちも自分たちの生活が脅かされ、はるを責める。
翠明を辞めようか、と落ち込むはる。鉄観和尚は、あきらめたら終わりだ、とはるを励ます。
翌日、和田支配人は経費削減と営業努力でこの難関を乗りきろうと、従業員たちにはっぱをかける。仲居も頭数を減らしたいと。三井屋が店員を募集しているのを知ったはるは、主人の吾朗に、自分を働かせてほしいと申し出る。が、それが大問題に……。
<第5回>
はるが三井屋で働きたいと言ったために、皆に裏切り者だと誤解される。が、実は翠明のために、昼休みを利用してパートで働こうと思ったのだ。
涼子は家宝の古美術品を売り払い、当面の危機を乗り越える。仲居の和子と、翠明に出入りしている魚の仲買人、町田が結婚式を挙げる。町田は以前、はるにプロポーズして断られたのだ。
翠明の親会社が崩壊。翠明の連鎖倒産を恐れて、銀行や取り引き業者が取り立てにやってくる。翠明の絶体絶命のピンチに、板長以下板前たちが全員逃走。仲居も次つぎと辞めていく。
<第6回>
親会社の倒産で、翠明も倒産寸前。板前は全員脱走し、仲居も半分以上辞めていった。
涼子は心ならずも休業を決める。
そんなとき、有名な旅行雑誌の編集者、明子と幸恵が翠明に取材にやってくる。
涼子は実状を話して、宿泊を断ろうとするが、はると和田支配人は起死回生のチャンスだと思い、涼子を説得して、二人を泊める。
はるのアイデアで、料理は他の旅館に頼んで、二人前拵えてもらうことに。
また、温泉情緒を出すために、隣の部屋で芸者の竜子に山中節を唄ってもらうよう頼み込む。
が、他から料理を取り寄せたことが明子たちにばれ、二人は今すぐ帰ると激怒。
<第7回>
はるが考えた窮余の一策が裏目に出て、旅行雑誌の編集者を怒らせてしまった。
涼子の誠意ある対応でその場はうまくおさまるが、そこへ竜子の山中節が聞こえてくる。
それもはるのやらせだと気づいた明子は、隣の部屋へ乗り込む。すると、竜子と一緒に、朝倉がいた。
朝倉と意気投合した明子たちは、朝倉の店へワインを飲みにいく。
和田支配人がツーリスト会社の杉山に呼び出されてからまれる。
はるが助けにいき、ワイン通の杉山を朝倉の店へ連れていく。朝倉の気転で、杉山は上機嫌。
その夜、瀬川と、弟分の三郎が
翠明に泊まりにくる。なんとなく胡散臭い二人だ。
<第8回>
翌日、はるがなにくれとなく力になっていた仲居の友江と浜子が、翠明を見捨てて辞めていく。
宿泊客の瀬川と三郎、明子と幸恵を見送った後は、翠明には、涼子と和田支配人、そしてはるの三人だけがとり残される。
涼子はやむなく休業札を出し、今後のことを考えると言って、出かけていく。
浜子が三井屋に、働かせてほしいとやってくる。それを知った涼子は、ショックを受ける。
はるは、いつでも営業開始できるようにと、旅館内の掃除に精を出す。和田支配人はそんなはるを馬鹿にしたように見ていたが、はるの一所懸命さに打たれ、自分も掃除を始める。
<第9回>
涼子は明日から翠明の看板をおろすことを決意。その夜は涼子も、はるも、和田支配人も、一睡もできなかった。
翌日、謎の老人・相田が翠明にやってくる。
続いて、三人の取り立て屋が押しかけてきて、金目のものを持ち出そうとする。
そこへ、瀬川が現れ、取り立て屋を追い返す。
瀬川は六甲総合商事という会社の顧問弁護士で、相田はその会社の金融管理部長。同商事が翠明の株を買い取り、今までの体制で翠明の経営を続けていってほしいという。
相田の号令で、一流の板長と板前たちが集まってくる。辞めた仲居たちも戻ってくる。まもなく、翠明に客が来て、再び活気が……。
<第10回>
朝倉のワインバー「ヤマナカーナ」が開店。涼子も手伝いに駆けつける。
六甲総合商事の神戸本社の研修に行っていた和田が戻り、湯女制度を提唱する。
仲居たちに真赤な襦袢を着せ、客のリクエストに応じて体を洗うサービスだというので、涼子やはるは大反対。
が、お金に目がくらんだ他の仲居たちは賛成し、結局、希望者が湯女をすることに。
その夜、五人組の男の客が、湯女サービスをリクエストする。仲居たちは張り切って仕事につくが客のいやらしい態度に、一日で湯女を辞めたいと言いだす。
和田は承知しないが、翠明の監査役兼顧問弁護士になった瀬川が中止させる。