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<第1回>
 一九八三年、秋。藍は司郎と結婚して、五年。子どもがまだできないことに悩んでいた。同居している姑しげも、早く跡継ぎをと望み、折にふれ、藍に嫌味を言う。
 そんなとき、臨月を迎えた義姉の佐代子が、突然実家に帰ってくる。夫と離婚したという。
 藍が驚いていると、佐代子に陣痛が始まり、その夜のうちに、佐代子は男児を出産する。
 しげは、その赤ん坊を藍たち夫婦の養子にすることを考える。
 藍と司郎は大学病院の産婦人科で検査を受ける。
 藍に異常はなかったが、司郎が造精機能障害だと診断され、子どもはできないと言われる。

<第2回>
 離婚と出産が一度に重なった佐代子は、ノイローゼ気味になり、子どもの郁夫の世話ができなくなる。しげが、しばらく佐代子のマンションへ行き、育児を手伝う。
 藍は子どもができるまで不妊治療をあきらめないつもりだった。司郎も積極的に治療を受ける。
 が、それから半年たっても、治療の成果はあがらなかった。非配偶者間人工授精を考える藍に対して、司郎は猛然と怒る。
 藍は母親・敏江のもとへ相談にいく。敏江はラブホテル街で旅館を経営、女手一つで藍を育ててきた。敏江は、子どものない人生を考えてもいいのでは、と忠告するが、藍は納得できない。

<第3回>
 不妊治療をめぐって、藍と司郎の意見が食い違い、藍は離婚届を司郎に突きつける。藍の気持ちを察した司郎は、非配偶者間人工授精に同意する。
 まもなく、藍は人工授精の処置を受ける。精子提供者は医学部の学生で、秘密は厳守されるという。
 一九八五年、早春。藍は女の子を出産。「春菜」と名づけられる。人工授精のことは夫婦だけの秘密だった。
 それから十六年、春菜は元気な高校生に成長する。司郎は名古屋支社に単身赴任していた。
 ある日、春菜宛に、切手も差出人の名もない封筒が届く。開けてみると、春菜の十六歳の誕生日を祝うカードが出てくる。

<第4回>
 春菜の十六歳の誕生日、高辻家でパーティーが開かれる。司郎は名古屋から上京。来月から東京本社に復帰することを告げる。
 しげ、佐代子、郁夫も祝福に駆けつける。しげは、佐代子と同居していた。
 旅行中でパーティーに参加できなかった敏江が、実は家にいることがわかる。春菜は、藍が敏江の職業にコンプレックスを持ち、嘘をついていたことを非難する。
 その夜、玄関の郵便受けに不審な封書が投げ込まれる。宛名は藍だが、切手も差出人の名前もなく、中には、春菜に関するカードと、藍と司郎が署名捺印した非配偶者間人工授精申し込みの誓約書のコピーが入っていた。

<第5回>
 藍のもとへ、人工授精の誓約書のコピーが送りつけられてくる。驚いた藍は司郎とともに、治療を受けた病院へ出かける。
 応対した西山助教授も衝撃を受け、徹底的に調査することを約束する。
 コピーのことを気にかけながらも、司郎は名古屋に戻る。実は、司郎は仕事の面でも悩みをかかえていた。
 春菜が変な男につけ狙われる。その男は藍を尾行していた男でもあった。
 また、高辻家に何度も不審な電話がかかる。
 藍はまだ知らなかったが、その怪しい男は、藍の治療に携わっていた大学病院の門倉医師だった。門倉の部屋には、妻子らしい遺影があり、その娘の顔は春菜にそっくりだった。

<第6回>
 藍は友人・百合枝の夫・祐輔に会いにいく。百合枝は二度の流産の後、妊娠。子どもを産みたかったが、夫に反対されていた。藍は百合枝の気持ちをわかってあげるよう祐輔に訴える。
 その帰り道、藍は自分や春菜をつけ回していた男を見つけ、果敢にも追いかける。
 偶然、居合わせた祐輔が藍に加勢し、刃物を振り回す男をねじふせる。
 藍が警察を呼ぼうとすると、男が誓約書のことを口に出す。藍は祐輔に席をはずしてもらって、男を追及する。
 藍は男が不妊治療のとき立ち合っていた若い医師・門倉だと思い出す。門倉は自分が春菜の生物学上の父親だと言い出す。

<第7回>
 藍は春菜に関する門倉の告白に絶句するが、門倉は証拠があるという。祐輔は二人の間に何か事情のあるのを察し、何も詮索せずに門倉を家まで引っ張っていく。
 藍が帰宅すると、司郎が戻っていて、佐代子と大喧嘩していた。しげの扶養をめぐって、佐代子が司郎に千五百万円要求する。
 翌日、藍は祐輔から門倉についての報告を聞く。アパートで一人暮らしの門倉の部屋には、去年事故で亡くなった妻子の写真があり、その娘の顔が春菜にそっくりだったという。
 藍は司郎とともに、治療にあたった江島教授を訪ねる。果たして、門倉の言葉は本当で、教え子に裏切られた江島は土下座して謝る。

<第8回>
 司郎が名古屋支社から本社勤務に戻る。が、社内の派閥争いに巻き込まれ、前途は暗かった。司郎は会社を辞めたいと、藍にもらす。
 門倉のことで、藍と司郎は弁護士の駒沢に相談する。告発すれば、門倉に刑事罰を与えるのが可能だったが、藍たちは春菜に秘密を知られたくなかった。
 駒沢は夫婦に、春菜への告知問題についても考えるべきだ、とアドバイスする。
 まもなく、駒沢立ち合いのもと、門倉に、今後春菜たちに近づかないよう誓約書を書かせる。
 藍は、「なぜ精子の提供者を志願したのか」、また、「病院に提出した誓約書を、なぜ持っていたのか」と、門倉を問い詰める。

<第9回>
 弁護士立ち合いのもと、藍は門倉から、二度と近づかない、という誓約書をとるが、彼のふてぶてしい態度に不安を持つ。
 司郎のもとに、名古屋でつきあっていた秋代から連絡が入る。夫が東京で飲み屋を始めることになり、またよろしくという。
 翌日、藍は堕胎手術をした百合枝を見舞う。傷ついた百合枝が痛ましく、出産を許さなかった祐輔を藍は非難するが、実は百合枝が手遅れの癌におかされていることを知らされる。本人に告知はしないという。
 その夜、司郎は同期の若槻に偶然、秋代の店に連れて行かれる。秋代とは手を切ったはずの司郎だったが、家庭や会社でのトラブルが続き、再びよりを戻す。

<第10回>
 百合枝が入院。告知について悩む祐輔に、藍はしばらく様子を見たほうがいいと忠告するが、春菜への告知について改めて考えさせられてしまう。
 そんなとき、藍はしげから、百万円用立ててほしいときりだされる。佐代子に年下の愛人ができ、手切れ金で別れさせたいという。
 藍は嫁の立場として、敏江から金を借りようとするが断られる。
 その帰り道、自転車に乗った藍の前に、ワゴン車の男が飛び出す。門倉だった。警察も刑務所も怖くないという門倉は、自分が何のために提供者になったのか打ちあける。ずっと藍のことが好きだったと・・・・・・。
 その二人の姿を、春菜が見ていた。


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