数々の有力選手を指導する長光歌子さんが
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.40

対談企画 ゲスト:池田美佳さん

有名アーティストのMVにも出演し、コンテンポラリーダンサーとして活躍する池田美佳さんに、ダンスについてお話を聞いて来ました。

様々な芸術的要素とは関係しますか―

長光歌子先生

そうですね、特に小学生の時にはダンスの他にいろいろな習い事をさせてもらっていました。書道、ピアノ、水泳、体操とか…その他に部活動では和太鼓をやったりしていました。部活の中では一番楽だったから選んだのですが(笑)

えー、和太鼓って大変じゃないのですか!

うちの小学校では必ず何かの部活に入らなくてはいけなかったのですが、その中で和太鼓部は一番練習が少なかったんです。その割にはフォームが綺麗という理由か?部長をしていました。

でもリズムとか大変そうに思います。

そうですね。和太鼓もそうですが、一見関係なさそうな事も、こうして経験させてもらった全てがいまの自分の踊りに生きているなぁと感じます。体操教室にも2歳くらいから行っていたので、逆さまになることに対して恐怖心がなかったからこそ色々な技に挑戦したり出来たのかも。

空間把握能力が高くなりますよね。YouTubeで演技を見させていただいたのですが、片手での倒立技だったりもされていて、空間の使い方が本当に凄いなとびっくりしました。

アクロバットやスケート、新体操なんかの要素も見て取り入れるのが好きで、よく研究させていただいています。

よくあんなに自由自在に動けるものだなと思います。バランス感覚も素晴らしいですが、どんなトレーニングされているんですか。

筋トレとかはほとんどしないのですが、それこそ髙橋大輔さんの密着映像を見て、陸上ではこんなトレーニングをされてるんだと思って、真似して取り入れたりしていました(笑)こうすると体幹がブレずに早く動けるんだ!とかステップが早くなるんだ!とか。

カルロストレーナーが芝生の上でやっていた陸上のステップですね、大輔はあれでかなり鍛えられたと思います。見てくださっていたなんて光栄です。

あと私、髙橋大輔さんの「月光」の演技が好きで、真似をして氷上じゃないバージョンを勝手に創って踊ったりもしていました。

えー!嬉しいですね!大輔を呼びましょうか(笑)

振付について―

ダンスの振付もされていると聞きました。振付を作るのと、自分で踊るのはどちらがお好きですか。

10年くらい前から、自分で振付した作品を発表してくださいというような舞台も増えて。最初は振りを考えるのが本当に苦手で、振付が全くできなかったんです。20代の前半で新国立劇場から作品の発表の場をいただいて、予算や練習場所などの環境も整えてもらったのですが、振付が最初の一手以降何も出てこなくて、毎日広いスタジオのど真ん中で泣いていました。そのうち何度も自作の作品を作ったり、クラスで人に教えるようにもなって、毎週のように振りを作るのが日課になっていき、その積み重ねで今は大分できるようになって来て、楽しいと感じるようにもなって来ました。

大輔は「自分は創作することは向いてない」っていうんですよ。私もあまり向いていないと思うんですが、結構頼まれることがあって、でも今のお話を聞いたら、彼もいずれはできるようになるのかなと、ちょっと期待を抱いてしまいますね。振付では即興を行うこともあるんでしょうか。

半分半分ですね、ここからここまではは即興で!という場合もありますが、即興にもメソッドがあるので、即興で踊る為の練習をしたりもします。例えば、身体の中に水滴が落ちて移動してゆくイメージで体を動かすとか、身体のあらゆる部位を用いて円や波線を描きながら踊る、とか。自由に踊っているように見せる為に普段から想像力の振り幅を増やしたり、身体から出てくる動きのパターンを増やしていくような練習をしたりします。

なるほど!

私は特に音楽に触発されることで踊りが生まれるタイプなので、好きな音楽をかけて、適当にワーっと動いて、その中で「いつもこの動きになるな」という部分をストックしていきます。曲を聴いてすぐにサクサク振りを付けられるほど器用ではないので、スタジオにこもって無駄な時間を沢山過ごして固めていきます。孤独な作業ですね。

最長どのくらい振付にかけられましたか。

最長だと1曲に半年くらいかかったんじゃないでしょうか(笑)逆に半年くらい前から言われてしまうとなかなか決められないですね。

確かにそうなりますよね。

時間が決められていればその期限に合わせて何とか形にしようともがきますよね。ところで、フィギュアスケートの振付期間はとても短いと聞いたことがあります。

私も遠い昔ですが、ジャンプも振付も曲の編集もすべて先生がやらなければいけなかった時代があったので、振付もやっていましたけれど、今の振付を専門にしている方たちにお願いをすると、人それぞれやり方は違いますが、よくこの短時間で組み上げていくなと感心します。

宮本賢二先生のドキュメンタリーを拝見した時は確か1曲を3日で作られるとか。

ショートプログラムなんかは2~3日で作っていきますね。

本当に凄いと思います。

あとはどれだけ選手が内容を膨らませて行けるかというのはありますね。

髙橋大輔さんは1を10にする才能が凄そうですよね!

むかし私が大輔に最初に振付をしたことがあるんですけれど、言い方は悪いけれど「こんな地方都市に住んでいる少年に、この曲は無理かな」と思っていたんですけれど、その解釈と膨らませる能力にちょっとびっくりしました。

やっぱり最初から違ったんですね。

この子は世界に出て行かなきゃいけない子だな、この感性は外に出してあげないと、と思いました。

先見の明ですね。その髙橋大輔さんに感動をもらって、私はいま踊っています(笑)

そうなんですか!褒めすぎですよ(笑)

私の周りの第一線で活躍しているダンサーさんたちや、大御所の先生とかも含め、みんな髙橋大輔さんの滑りや踊りが好きだと言っていますね。

えーーー、でも身体は硬いんですって言っておいてください。池田さんはストレッチのトレーナーもやられているそうで、ぜひ来て手伝ってください(笑)

是非!生徒さんでも、開脚とか初めは少ししか開かなかった人もだいぶ変わっていきますし、大人からでも全然変わっていくと思います。

大輔には今本当に柔軟さ必要だと感じますね。いつも悩んでいます。

フィギュアスケートの振付の話になりますが、海外の方に振付をしてもらったら、日本に戻ってきてからは先生が指導されるのでしょうか。

そうですね、振付の方も工夫はしてくれるんですが、どうしてもジャンプの入りとかは選手によって違いますので、微調整していく時もあります。振付から見ていて、だんだん振付師さんの味が薄くなってきたこういう意味で振り付けたんじゃないの?って元に引き戻すようにしたりしますね。

歌子先生が振付けることはないんですか?

それはもうないですね、とんでもないです。やっぱり若い人の振付が素晴らしいです。でも、昔、私の頃はコンパルソリーフィギュアというのがあって、氷の上に図形を描くんですが、特に最近年々コンパルソリーの重要さがわかってきました。昔の人が作ったんですが、よくこんなものを考えたなと感じます。ジャンプの能力が元から高い子はたまにいるんですが、普通の子が綺麗にジャンプを跳ぼうと思うと、やはりコンパルソリーを基本に置いた方が綺麗に跳べると感じますね。そして基本をしっかりやることでスケーティングもジャンプも上手くなっていって欲しいです。パトリック・チャン選手なんかスケーティングがとても綺麗で、いつも見習っているんですが、昔どんな練習をしているのか聞いた時に、子供のころ指導してくれたおじいちゃん先生がコンパルソリーを基本にして、ステップにアレンジしたりして教えてくれていたそうです。おじいちゃん先生が偉大だったみたいですね。そのうちおばあちゃん先生、偉大だったなって誰か言ってくれませんかね(笑)

長光歌子先生

練習について―

練習は毎日されているんですか。

何かしら毎日踊っていますね。お休みは月1~2日くらいです。

よくモチベーションが保てますね。

最近は特にモチベーションが高いですね。もちろん全然湧かない時期も沢山ありました。

毎日だと気持ちが疲れてしまわないですか。

常に疲れていますが(笑)、今回の対談のような素敵な機会があるとまた頑張っていけます!髙橋大輔さんのドキュメンタリーを見て励まされていました。私も小さい頃からコンクールばかりだったので、重なる部分があって、復帰するのを見て「またやる?!!!」みたいな。私ももう一度コンクールやってみようかな、なんて思ったりして。

あの緊張感や、緊張感からの解放が麻薬みたいになってるんじゃないでしょうか(笑)池田さんは舞台もやられていますよね。

ちょうど、もうすぐ舞台があります!

舞台の合わせなどは大変ですか。

今回の舞台は活躍しているダンサーさんが多く、意見の出し合いから、あとは台詞やお芝居もあるので、連日13時から22時までやっています。

台詞もあるんですね。どのように学んだんでしょうか。

私は個人的に、踊りだけじゃなくお芝居も出来るような幅広い表現者になりたいなというのがあって、個人的に演技の勉強をしたりもしています。

素晴らしいモチベーションですね。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)