数々の有力選手を指導する長光歌子さんが
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.40

対談企画 ゲスト:池田美佳さん

有名アーティストのMVにも出演し、コンテンポラリーダンサーとして活躍する池田美佳さんに、ダンスについてお話を聞いて来ました。

2019.9.10

池田美佳さん
池田 美佳(いけだ みか)
池田 美佳(いけだ みか)
コンテンポラリーダンサー、振付家、モデル、女優。
秋田県出身、8歳からモダンバレエをはじめ、全国コンクールで第1位を4度受賞。安室奈美恵、久保田利伸、スピッツ、superflyなど有名アーティストのMVや「docomo」「GU」のTVCMに出演するなど、ダンスを活かした様々な舞台や映像作品で活躍中

コンテンポラリーダンスについて―

長光歌子先生(以降:歌)ローザンヌ(スイス)のバレエコンクールにコンテンポラリー部門があるのは知っていますし、「コンテンポラリーダンスのように」とプログラムを振付けて頂くこともあります。ですが、定義は何かといわれたら、私も理解できていません、どういったものなのでしょうか?

池田美佳さん(以降:池)コンテンポラリーダンスの定義はとても曖昧で、やっている私たちさえも説明が難しいのですが、簡単に言えば、ジャンルを超えた自由なダンス、そして踊る人ひとりひとりの個性が尊重されるダンスとも言えると思います。クラシックバレエやストリート、ヒップホップを極めた人が更なる自由な表現を求めてコンテンポラリーに行き着くこともありますし、ダンスよりお芝居の要素が強いものもあったりして、本当に十人十色です。私が好きなコンテンポラリーダンスは、ある程度クラシックバレエの要素も取り入れながら、そこから自由に発展して行く、美しくてドラマティックな世界観を表現するようなダンスです。身体を自由に使いながら、喜びや悲しみと言った感情や抽象的な世界観を表現します。こんな感じで…(実際に身体を動かす)

もう今その動きが素晴らしく美しいですね!

ありがとうございます。でも言葉で説明するのが本当に難しいので、一番は生で観て頂きたいです。クラシックバレエは手のポジションから足のポジションまですべて決まっていて制約の中の美だと思うのですが、私が求めているものはもう少し自由に、感情が高ぶったならこう、時にはみ出してもいいのではないか、行きたいなら行きたいところまで手を伸ばしてもいいのではないか!という感じで。その表現の自由さや可能性を模索しています。

モダンバレエをはじめたきっかけは―

先ほどモダンバレエから始めたとおっしゃいましたが、どうしてクラシックではなくモダンバレエだったのでしょうか。

母が、私が女の子なのでバレエを習わせたいと近所のお稽古場を探したところ、そこがモダンバレエの教室だったんです。初めは違いも分からずにやっていましたが、そのスタジオではクラシックバレエもやっていたので、高校生まではトゥシューズで踊ったりもしていました。でも今思うと、もしそこのスタジオがクラシックバレエだけのスタジオだったら、今はもう踊っていないと思います。バレエは骨格で小さい頃から向き不向きが決まってしまうんですよね。私はあまりバレエに向いている骨格ではないんです…。

どうしてですか?踊っていられるところを見るとそんな風には全く見えませんが。

私は骨格上、股関節の外旋※が苦手で。足は上がるのですが、外旋しないので、外旋の動きを基本とするバレエには向いていなくて。その点、モダンやコンテでは他の部分の柔軟性を活かして踊ることが出来ます。

そうなんですね。

なので小さい頃にたまたまモダンバレエに出会えたおかげで、今までこうして踊る事が出来ているなぁと思っています。

出会いって本当に大事ですよね。

子供の頃は自分で選択ができないですからね。

てっきりクラシックバレエから入られたのだと思っていました。

いえいえ、でも大人になってからクラシックバレエの基礎の大切さが身に沁みて、今は基礎としてバレエを取り入れるようにしています。基礎があればこそ、自由に動いた時に綺麗に見えるんですよね。フィギュアスケートの方もバレエをやられていますよね。

フィギュアの方はスケートで滑るので、イーグルなどで外旋は使うのですが、少しバレエの基礎とは違うかなと思います。でも足首の使い方などでは基本のバレエレッスンは、フィギュアにとっても大事だなと思います。

※外旋とは―

股関節が外方に回旋する動きなので、開脚をしたり脚を上げたりするのとは別の柔らかさになります。

股関節の横の柔らかさですよね。

そうですね、その柔らかさを決めるのは元々の骨格の形状だと思います。骨格的に初めから開く人は開くけれど、私は脚は180度以上上がるし開脚もべったり開く割には、股関節は5度くらいしか外旋しない(笑)なので今教えている生徒たちにも、たとえ身体が硬いところがあってもいくらでも柔らかく魅せることはできるよ!と教えています。

そうなんですか!ちょっと(髙橋)大輔に聞かせたいです。彼も硬くていつも苦労しています。

そうなんですね!滑りを見ていると硬いというイメージがないので驚きです。

彼も柔らかく見せたいという本能に近いような欲求があり、その努力をして来たと思います。彼より柔らかくても硬い演技をする人は沢山いますからね。でも、もう少し柔らかくなれば、彼の理想の動きに近づけると思います。

でも演技をしていると、硬い方が出来ることもあったりしますよね。

そうですね、跳ね返りが速いので有利な所もありますよね。

池田美佳さん

コンテンポラリーダンスを始めたきっかけは―

モダンバレエからの延長です。秋田で習っていて東京に出てきてからいろんな舞台に出ていく中で、コンテンポラリーと呼ばれるものが多くてそのままという感じ。モダンとコンテは流儀語のようなところもありますし、要は自由な表現という意味ではそもそもジャンルに分ける必要がないと言うか、ミカダンス!なるものを確立していけたらと言う感じです(笑)

東京の方では先生なんかはいらっしゃるんですか?

東京に来てからは特に誰かの元に付いたり、カンパニーに入ると言うことはなく、一人で、フリーでやっているので、師匠と呼べるのは秋田での恩師(吉沢蔦先生)だけです。こちらに来てからは、自分でオープンレッスンやワークショップなどを探して受けたり、舞台の現場で振付家や周りのダンサーから学んで自分の要素にしていくと言う感じ。なのでフィギュアスケートのように専属のコーチのような方がいらっしゃるのは羨ましいです。

よく一人でここまでやってこられましたね。私たちからは想像つかない世界です。今は教室もされているそうですが、どのくらいの人数を教えていらっしゃるのですか。

教室によって全然違いますが、個人レッスンのような少人数のものもあれば、多くてひとクラス20人限度。年齢も幅広くて、2~3歳くらいから上は60代、男性も結構いらっしゃいますね。

でも自由に曲をとらえて身体を動かすっていうのは羨ましいですね。土台がなければできないですし。リズムだとか色々なことが分からないとできないのですか?

実はコンテではあまりリズムは取ることは多くなくて、間とか呼吸とかの方を重視することが多いんです。

そういうところも素敵だと思います。

音に対して敢えてちょっと外していったり、裏で聴こえている音を取ったりするのが私は好きなのですが、髙橋大輔さんもよくやられますよね。そういうところのセンスの良さとかにも注目して見ています!

そういう外していくところがクラシックバレエと違いますよね。

そうですね、バレエはある意味音に対しては0.1秒の狂いも許されませんよね。

それはそれで凄い表現だと思います。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)