数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.35

全日本選手権2018を終えて

5年ぶりの出場となる髙橋大輔選手と共に臨んだ全日本選手権。終了後に振り返っていただきました。

全日本選手権のお話―

長光歌子先生

■若い世代の選手について―

 山隈太一朗選手が今回良い演技をできて嬉しかったです。彼はリーダーシップもありますし、場を盛り上げる感覚もあって、愛される爽やかな性格をしていますよね。今回全日本選手権出場選手の中で一番身長が高かったとのことですが、最近は体幹と筋力が合ってきて安定してきました。私は林先生の所も含めて「基本的なスケーティング」を毎日やりなさいと課題を与えていますが、たった1分ほどで終わることでも毎月ずっと続けるのは難しいんですよね。その基本を毎日しっかりと太一朗君は続けていたので、いつかぐっと伸びると思っていました。
 島田高志郎選手と(三宅)星南君は背が伸びたのに細くて、見ていてちょっと心配になります。島田選手は足を痛めていた時期があり、氷上よりトレーニングを重視していた時期があったのでしょうか。少ししっかりした身体つきになったと思いました。でもあの2人の等身は規格外ですよね。大輔が羨ましがっていました(笑)。
 今大会、全日本ジュニアから勝ち抜いてきた子たちは、みな目を引くものがありました。4回転を持っているとか、それぞれに武器や勢いがありますし、北京の選考までまだあと3年あるので、その間にどれだけ伸びていくんだろうと、本当に楽しみになりました。
 若い子たちもどんどん出てきて、独特の緊張感もあり、全日本選手権って本当にいいですよね。

■田中刑事選手、三宅星南選手について―

 星南君は試練の年ですね。次にジャンプアップするまでの屈曲の時期というか、私はそういう時期がないとダメだと思うので、良かったんじゃないかなと思います。少し前までは失敗するとへこんでしまっていましたが、最近は結構自分の考えや計画をバンバンと持ってきてくれるようになって、そういう感じの子はこれまでいなかったので、面白いなと思います。以前から頑固な面がありましたが、それが良い作用に働くようになってきたと今後に期待しています。一時期、太一朗君も屈曲の時期のように伸び悩んだ頃がありましたし、星南君もこれから長く活躍していってほしいですから、ここで失敗をしてくれてかえって良かったと思います。
 刑事君は大輔がカムバックして負担に感じている部分もあったのではないかなと思います。でも、4回転も2種類持っていますし、上背もあり氷上での表現も年々華やかになってきたと思います。どんどん大輔を追い越し、世界のトップ達と常連としての仲間入りを早く果たしてほしいです。

■全日本注目の選手について―

 友野一希選手は世界選手権にも出て、自信もついたと思いますし、見せ方もうまくなってきたなと思いました。ジュニアと田中刑事選手、友野一希選手のベテランが北京に向けてどうなっていくのか楽しみです。
 また、山本草太選手はフリーでは4回転を決めましたし、足が治ってきたらまたトップ争いに名乗りを上げていくのではないでしょうか。羽生結弦選手と宇野昌磨選手はトップ2を譲らないと思うけれど、3つ目の席を誰が取っていくのか、2年後にはもっと濃くなるであろう男子の代表争いが楽しみであり、苦しみでもありますよね、コーチとしては(笑)。
 年々、全日本に出場する女子はもちろんですが、男子の選手達の実力が確実に底上げされていますね。特に今回は「この舞台に選ばれてきた選手達だな」という感じがしました。まだまだ本番での光り方が弱かったりする選手もいるけれど、今後どうなっていくのか本当に楽しみです。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)