数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!
歌子の部屋
vol.19
世界選手権について
歌子先生に世界選手権2017について伺ってきました。
来シーズンに向けて

■ジュニアの選手たちに期待していること―
現在のジュニアの選手たちは、同年代で競える選手たちが多くとてもラッキーだなと思います。男子では、島田高志郎選手、須本光希選手、木科雄登選手、三宅星南選手など将来の日本を背負っていく選手たちがいますよね。みんなで切磋琢磨していってもらいたいと思います。また、その中で色んなことにチャレンジしていってもらいたいという気持ちもあります。昨年の全日本ジュニア選手権では、優勝した友野選手と三宅選手以外は4回転ジャンプもトリプルアクセルも回避していましたが、若いうちは失敗を怖がらず、手堅くまとめずどんどんチャレンジしてもらいたいですね。今私たちは三宅選手の指導をさせていただいていますが、3回転ジャンプを跳ぶための3回転ジャンプの練習ではなく、4回転ジャンプを跳ぶための3回転ジャンプの練習を目指してやっていかなくてはと思っています。さらに、彼らがシニアに上がる頃にはジャンプだけでは勝てなくなっていると思いますので、スケーティングの面も両立しないといけないと考えています。そういった意味でも世界選手権などの大きな大会を見ると本当に勉強になります。ジェイソン・ブラウン選手のスピンやプログラムでの一つ一つの所作はとても美しくて流れがあり、感動を与えてくれますし、私たちもジャンプばかりではなく、人の心を動かせる演技ができる選手に成長してくれるように支えて行かなくてはと、とても強く感じました。
女子では、本田真凜選手は天性の才能があると思います。華がありますし、身体の使い方や表情などの、練習で教えるのが難しいことが自ら出来るのは本当に素晴らしいと思います。荒川静香さんに似たスケールの大きさを感じるので、枠にはまらないでのびのびとした演技をしていってほしいと思います。坂本花織選手は他のスポーツでも上位に行けるような素晴らしい運動能力があるので、楽しみですね。彼女は明るくて元気もありますし、はつらつとした演技も観ていて気持ち良いですよね。白岩優奈選手は本番で強いですし、ジャンプもスケーティングも表現も総合力がありますし、色々なものを持っています。自分に自信を持って輝いていって、ショートプログラムとフリーを揃えられるようになれば勝っていけると思います。世界ジュニア選手権に出た3人もすごいですが、ジュニアには紀平梨花選手や鈴木沙弥選手などもいますので、層が厚くて良いのですが、他国も女子は層が厚いので、スケールの大きさが備わるようなスケーティングを教えていかなければと思います。
■五輪シーズンに向けて―
今はこれまで私たちが考えていたスケートでは計り切れない時代に来ていると思うので、大変だと思います。その中でもまずはケガをしないこと。冬の競技なので風邪をひかないなど体調管理も必要だと思います。難しいジャンプに必要な、強くて反射の速い筋肉をさらに良いものに作り上げつつ、ノーミスでプログラムを滑り切るスタミナを増大させることも不可欠です。加えて今回のネイサン・チェン選手のように靴など物理的な問題も起きないよう、靴も複数用意して万全で望まないといけないでしょうね。私もまたこの時代を勝ち抜ける選手を育てるために、勉強し直さなければいけないと思いました。ヴィンセント・ゾウ選手やメドベージェワ選手のように他のスポーツの経験がある選手が上位に来ているので、スケートばかりではなく、他のスポーツや多様なダンスを試み、選手たちの身体能力をあらゆる面で鍛え、また違う環境でトレーニングすることによる、リラックス効果を得る事や心の強さも養わなければならないと感じました。
- 長光歌子(ながみつ うたこ)