数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!
歌子の部屋
vol.19
世界選手権について
歌子先生に世界選手権2017について伺ってきました。
2017.4.29

世界選手権について
■今年の世界選手権を振り返っての印象は―
今年の世界選手権は、全体的にジャンプがすごく進歩しましたよね。男子では「このジャンプの4回転は無理」だとか思ってはいけなかったなと感じました。女子も、前回の宮本賢二さんとの対談の時に言いましたが、昔は女子が3回転ジャンプを跳べると思っていませんでしたが、今や3回転ルッツ+3回転のコンビネーションジャンプが出来て当たり前の時代になりましたね。
後は今大会、男子で言えば当初から羽生結弦選手、宇野昌磨選手、ネイサン・チェン選手など、4回転ジャンプに注目が集まっていましたが、4回転ジャンプはないけれど素晴らしいスピンやスケーティングを持つ、ジェイソン・ブラウン選手や、独自の世界観を持っているミーシャ・ジー選手など、素晴らしい演技がありましたし、全体的に内容の濃い大会だったのではないでしょうか。
■日本人選手たちの活躍を振り返って―
羽生結弦選手は、フリー冒頭の4回転ループを綺麗に着氷した時「これはいったな」と思いました。4回転ループの着氷が素晴らしく決まって、羽生選手の身体全体に自信がみなぎるのを感じました。そのままの勢いで滑り切りましたね。素晴らしかったです。滑走順も良かったと思います。後の選手にはとてつもないプレッシャーがかかったでしょうね。
宇野昌磨選手はフリーでは3回転ルッツの失敗が悔やまれますが、全体的に素晴らしい滑りだったと思います。全日本選手権の後3つの大会に出場して、直前のクープドプランタン(3月10~12日/ルクセンブルク) では300点超えも果たしました。それが自信になって、今回の結果につながったのでしょうね。彼がどこまでも自分を追い込み、仕上げていく若さと強さに感動しました。
田中刑事選手は初めての世界選手権で、ショートプログラムでは納得のいく演技ではなかったと思います。フリーでは4回転サルコウを2本決め、自信になったのではないでしょうか。それでも得意のトリプルアクセルの前に力みが入り、硬くなってしまっていくのを見て、世界選手権の独特の緊張感を味わっているなと思いました。あのプレッシャーを体で感じられたというのは大きな経験になったと思いますし、上位に食い込んでいける力はあるので、来シーズンでは更なる奮起を期待したいです。
女子は三原舞依選手のフリーが素晴らしかったですね。現地で見ていた(髙橋)大輔が「最後までスピードが落ちなかった」と言っていました。ショートプログラムは緊張からか納得のいく演技ではなかったと思いますが、初めての世界選手権での経験は大きかったと思います。次はショートプログラム、フリーともに揃えられるようになっていくのではないでしょうか。
樋口新葉選手はフリーでジャンプのミスがありましたが、初めての世界選手権であれだけ丁寧にプログラムを滑ることができたことは、とても成長につながったと思います。上位を目指せる十分な能力を持ち合わせているので、来シーズンの活躍が楽しみになりました。
本郷理華選手は難しい時期での大会になりましたね。女子は一度上がってから苦悩を味わう選手が多いので、ここで踏ん張ってこれからもっと成長していってもらいたいです。
女子は平昌オリンピックの出場枠が2枠となってしまいましたが、宮原知子選手を筆頭に、ジュニアから上がってくる本田真凜選手や坂本花織選手を含め、ロシアのように誰がオリンピックに出てもおかしくない状況になると思います。来シーズンは、選手たちにとっては厳しいシーズンになりますが、女子の選手全体がレベルアップするでしょうし、誰がその厳しい舞台を勝ち抜いて代表になるのか、見守っていく楽しみがあります。
- 長光歌子(ながみつ うたこ)