数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.18

対談企画 ゲスト:宮本賢二先生

髙橋大輔さんの「eye」をはじめ数多くの振付を手掛ける日本を代表する振付師。宮本賢二先生にお話を伺いました。

振付師を目指したきっかけ

宮本賢二先生

賢二先生が振付師を目指したきっかけはなんですか?

そうですね。きっかけは、昔から周りにいた、樋口豊先生やパスカーレ(・カメレンゴ)がみんな振付師だったから、なんとなく現役を終えたら振付師になるものだって思っていました。僕が振付師になった当時は日本にはあまり振付師さんがいなかったので、インストラクターより振付師をやろうと思いましたね。

そうでしたね。当時はコーチが振付けも練習もジャンプの指導も、トレーニングも何もかもやっていましたからね。海外では全部分かれているのが普通でしたね。私は、賢二先生が上野芝のスケートリンクまで「振付師になろうと思います。」って言いに来てくれたのを覚えています。

僕も覚えています。
「振付師になろうと思います。」って僕が言った後に歌子先生が「賢ちゃん、なんでスーツなの?」って聞かれたのを覚えていますよ。それで「仕事としてやっていく覚悟として、スーツ着てきました。」って言ったら「ええ心意気やないの(笑)」って歌子先生がおっしゃったんですよね!

そんなことがありましたか?

それで後日、樋口先生と一緒に韓国へ行く時にスーツを着ていたら今度は(樋口)豊先生に「飛行機乗る時にスーツはどうなの?」って言われました(笑)

(笑)

現在の振付師・宮本賢二さん

今や日本の振付師といえば、宮本賢二さんみたいなところがあると思いますが。

バンクーバー五輪があって、振付師として認知されたと思うので、やっぱりあれがなかったら今どうなっていたのかわかりません。僕の中で未だに、世界一の振付けはあれだと思っていますし、歌子先生と大ちゃん(髙橋大輔)のおかげだと思っています。

大輔がテーピングをぐるぐる巻きにしている時、合宿している韓国まで「eye」の振付けをブラッシュアップしに来てくれましたね。

僕が韓国に2日遅れで入ったら、わざわざ二人で出迎えてくれたんですよね。でもあの時、運転手さんも2人もニンニク臭くて大変でした(笑)

(笑)毎日毎日韓国料理を楽しんでいましたからね。
あの合宿で作ってくれたエキシビションナンバーの「Luv letter」が復帰後初めてお客様の前で滑ったプログラムでした。韓国のリンクの霧の中での滑りは、今でも忘れられません。

賢二先生は、振付けを作る時にどんなことをイメージしていますか?

そうですね。この選手がこういう演技をすると面白いかなとか、一生懸命探して見つける時もありますし、じっくりと先生からイメージを聞くこともあります。それでもボツになることも多いですし、パッとインスピレーションでいって出来ることも多いですね。

私たちは、選手たちに固定したイメージを持ってしまっている場合があるので、賢二先生のように新しいものというか、今までと違ったものを取り入れてくれると、選手たちも新しい挑戦ができて、違った魅力が出るので、嬉しいですよね。

僕も歌子先生に学んでいることもありますよ。歌子先生に「賢ちゃんの右に行った後に左に行って、上に行った後に下に行く、あれ好きなの。」って言われて、嬉しくて未だにそれを気にすることが多いんですね!

「eye」もですが「ソナチネ」のステップもその特色がよく出ていて大好きです。
※2013-2014髙橋大輔さんショートプログラム「ヴァイオリンのためのソナチネ」

歌子先生がそうやって言ってくれるので、自信を持てています。

あとは「バチェラレット」のタコの動きの話は感心しました。
※2007-2008髙橋大輔さんエキシビションナンバー「バチェラレット」

本当ですか!?あれは豊橋のリンクの近くにある海辺で大ちゃんと2人で曲を聞いていた時に考えたんです。歌詞に「サメに食べられて~」みたいな部分があって、「これは海のものやな!」ってなって、大ちゃんは良く動くから「足は8本じゃ足りんな。」って、ああなったんですよね。

(笑)

賢二先生は振付けを、どのくらいの期間で作られますか?

ベースは3日間ですね。3日間で作ったベースを選手に練習してもらって、1か月後、2か月後に見直しをして修正しています。もちろん選手にもよりますが、衣装や曲やジャンプの構成もやったりしますね。選手によってはシーズンの途中でジャンプを変えることもあるので、ちょっとくらいの余裕は持たせていますね。

振付師の仕事で挫折したことなどはないのですか?

一切ないです。先ほども言いましたけど、バンクーバー五輪の時にこれ以上ない経験をさせてもらいましたし。でもいつも不安はあります。不安がなくなったら振付師としては終わりだと思っています。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)