数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.11

対談企画 ゲスト:田山裕士さん

チーム大輔の靴担当、ロバさんこと田山裕士さんに、シャープナーという仕事についてお話を聞かせていただきました。

高橋大輔さんの身体のつくり

田山裕士さん

(髙橋)大輔は身体のつくりが他の選手とは全然違いましたよね。ふくらはぎが凄かったです。普段服を着ているとわからないですけど、人一倍太かったですよね。

本人は太くて嫌がっていましたよ(笑)ファンの方からは「ししゃも」って言われていますよね。

力を入れると、ホンマに「ザク」(ガンダムに出てくるロボット)の動力パイプみたいにモコッモコッて出るんですよね!でも本人にそれを言うと、嫌がるんですよね(笑)。

この間スイスのショーで「マンボ」を踊ったんですけど、シェイ=リーン・ボーンが振付けてくれたプログラムの。

あのプログラム大好きです!

ありがとうございます(笑)その「マンボ」のリクエストがあったので昔のコスチュームを持って行ったんですけど、ものすごくズボンが太かったんです!昔は太ももやふくらはぎの筋肉がすごくて、当時細いパンツにすると、筋肉のシルエットが出て嫌だっていうことで、幅の太いパンツにしていたんですよね。今は筋肉が落ちて細くなって、滑るとなんかバタバタってしてましたよ(笑)

靴の素材について

スケート靴

田山さんが今お仕事をされている小杉スケートさんのオリジナルの靴は、革の靴が多いですよね。

そうですね、それでも最近は軽量化が流行っているんですよ。革で全部作ると重くなりますから、カーボンを張ったりもしますね。
そういえばフィギュアの靴底について、一般の方は木だと思っている人が多いみたいなんですけ ど、あれは全部革なんですよね。革を何層も重ねて紳士靴のように作ってるんです。でも重いので、軽量化するために最近はプラスチックを使ったり、中を空洞にしたりしていますよね。

中が抜けて空洞になっているんですよね。

(髙橋)大輔のように、しょっちゅうエッジの位置を変える人は、中が空洞のものだとすごく困るんですよね。だから普通はやらないんですけど、ブレード側にドリルでネジ穴をあけてそこにネジを打ち直していましたよね。

すごく色々な技術を引き出してくれるのも、田山さんのすごいところですよね!

(髙橋)大輔は結構エッジを折っていましたよね。そもそもの靴のしなりなど色々な原因が重なって、エッジとプレートの間が折れるんですよ。新しい靴に新しいブレードをつけて渡した一週間後に「靴の調子が…」って持ってくると、もうひずんでいたりしましたよね。

ジャンプを降りる時ですかね。それも選手によって全然違います。

そうですね。(織田)信成君は、一回も折ったことがないんですよ。彼は本当にジャンプを柔らかく降りるんですよね。

あれは彼の素晴らしい才能ですよね。

彼のそれは凄いですよね。男子の選手は大体エッジを折るんですけど、本当に(織田)信成君だけは折らなかったですから。

最近のスケート靴の主流について

今どんどんフィギュアスケートの靴やエッジは進化していますよね?

進化していますね。なにより軽量化が進んでいます。

そうですよね。私は軽すぎるのは好きではなくて、ある程度重さを生かしたほうがいいんじゃないかなと思うんですが。

タイプによると思いますけれど、高く飛んであんまり回転しないジャンプの選手は重いほうが、高く遠くへ飛べると思いますけど、早く低く飛ぶ選手は軽い方がいいのかなと思います。
村上佳菜子選手が軽いエッジをつけた時に「(軽いエッジだと)ランが短くなって、セカンドジャンプへの勢いがなくなるから、重い靴の方が良い」って話していました。彼女は回転が早くない分、高く飛ぶタイプですよね。だから軽い靴だとジャンプに入る前のランでうまく勢いに乗れなかったみたいです。

タイプは色々なんですよね。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)