数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.9

対談企画 ゲスト:鈴木明子さん

2013-14シーズンで引退し、現在は若手の育成やコメンテーターとして活躍、振付師もされている鈴木明子さんにお話を伺いました。

鈴木明子さんの2015-16シーズンについて

鈴木明子さん

引退して1年目は、生活がガラッと変わってとにかく忙しかったですね。その分2年目はようやくちょっとずつですけど、ペースがつかめてきた感じでしたね。その中でも、この1年で一番大きかったのは振付師を始めたことですね。自分としては振り付けは、やりたかったですけれど、もっと先の予定だったんですよ。歌子先生には辞めた瞬間に誘われましたよね(笑)

そうですよね(笑)引退した後すぐに、うちの選手たちに振り付けしてってお願いしましたよね。

私のイメージ的にはプロで何年かやってるうちに、色々な振り付けを見て、自分が滑れなくなるころに振付師になりたいなって考えていたんですよ。
でもちょうど本郷理華選手が同じリンクで練習していて、彼女の練習の手伝いとかをしていたら、次の年には振り付けをすることになって…。さすがに世界選手権に出るような選手の振り付けを一番最初にやるのは、ものすごいプレッシャーでした。自分が滑ってダメだったら「ダメだったんだな」で終わりますけど、他人の振り付けって違うじゃないですか。どうしようって思っていました。

でも、すごく良い振り付けでしたよね。本当に華やかですし、本郷選手の特徴を生かしていますし。

私は、本当に不安しかなかったですね。振り付けは作った時が完成じゃなくて、選手に練習してもらって、ジャッジが評価してからが本番って感じじゃないですか。そこから手直し手直しで…。4月に振り付けをしてから、すごく長い期間を本当にこれでいいのかなって悩んで悩んで、しかも「ここはこれの方が良いかな」とか、アイデアもどんどん出てきたんです。
それで、出来上がったプログラムを選手が踊ってくれて、結果を出してくれたり、「ここが良かったよ」って言ってもらえたり、会場が盛り上がったりするのを見て、自分が滑る以外で新たなスケートの喜びを感じさせてもらいました。もちろん選手と一緒になって緊張もしますけれど、またやりがいを与えてもらえたような感じがして、すごくいい経験にはなっていますね。

振り付けを考えるのはやっぱり大変ですか?

思っていたよりも、遥かに難しいということに気が付きました。頭で想像して、自分だったらこういう感じだろうなって思っていても、人それぞれ感じ方が違いますから、滑ってもらってもまた違うなっていうのがありますね。まだ日々勉強ですけど、チャレンジし甲斐はあるなって思っています。

私も、うちの選手に振り付けしてもらうのはまだ諦めていないんですよ(笑)

もちろんです!

これからの鈴木明子さんの目標

これからどうしていきたいみたいなことはありますか?

今私は、引退して3年目に入ったんですが、2年で土台を作るという方針で、今までお仕事をやってきたんです。オリンピックは夏と冬が2年ごとにあるので、色々なお仕事をしていくにあたって、2年で道が決まってくると聞いたことがありましたから。
今は、ちょうど仕事のサイクルが見つかってきたかなという感じですね。この2年がむしゃらにやってきたので、これからもっと、やってきたことを進化させていこうって思っています。でも私は滑ることも好きなので、それはまだまだ続けていきたいです ね。自分の身体とも相談しながらですが、振付師の比重を徐々に増やして変わっていくものなのかなと思ったりもしています。私は頑なにコーチにはならないって言い続けていたんですけど、もしかしたらやっていくうちにどこかで気持ちも変わっていくかもしれないですね。

選択肢は限りなくありますね。

今のこの時代だから色々な選択肢もありますし、これと決めないで色々なことにチャレンジしてみればいいのかなって思いますね。歌子先生には、ショーを見に来られた時にお話しさせて頂いたり、悩みを聞いてもらったりしていてすごく心強くて、ほっとするんですよね(笑)

(鈴木)明子さんも(髙橋)大輔もそうですけれど、辛い思いや苦労は人を育てますし、その後の自分の人生にも役立つので、そういった事を、次の世代の選手たちに伝えていってほしいと思います。

選手は、みんながみんな順調にいくわけではないですし、10代で活躍できなかったら終わりかといったら、後になって伸びてくる選手もいますから、「スケートをやりたい」っていう選手が続けられるような、環境やバックアップが少しでもできるといいかなって思います。選手はケガもあると思いますけど、引退までやりきって初めて見える景色がありますし、指導してくれた先生たちと分かち合える喜びや達成感がありますよね。それは社会に出た時に生きると思うんですよ。

人生の財産になりますよね。

それに、フィギュアスケートが今これだけ人気になって、これがブームで終わってほしくないと思うんです。その盛り上がりに何か貢献できるとしたら、それが振り付けなのか、解説や講演なのかもしれませんが、次につなげていく努力を私はやりたいと思います。

選手時代とは全然考え方も変わった感じですね。

そうですね。全然違います。選手の時はとにかく一所懸命でしかなかったですし、身体もただ追い込んでいる感じでしたけど、今は10代からちゃんとケアしておくべきだったのかなって、もしこれから後悔したらどうしようって思ったりもしますね。
だからこそ、今は若手や女性のアスリートの身体のサポートする方もしたいなって思えるようになって。結構ジュニアの選手たちは、身体のことを考えないで頑張ってしまいますからね。

そうですよね。次の成績をとるためには、悪魔に魂を売ってでも勝ちたい!って思うのがアスリートですからね。

でも、辞めてからの人生の方がはるかに長いですから、もちろん頑張ることも大事ですけど、身体の管理は大事ですよね。無理な食事制限なんかでちゃんと骨とかに栄養が行き届いていない場合もあるかもしれないし…と思ったら、そういう正しい知識を若い選手たちに伝える人がいないといけないって思いますね。

色々な経験をしてきたからこそ、とても重みのある意見ですよね。

歌子先生も色々と乗り越えてこられているから、こういう話を聞いてもらえるのはとてもうれしいです!

本当に(鈴木)明子さんと(髙橋)大輔は運命的なものがありますよね。バンクーバーオリンピックも2人とも奇跡みたいなものでしたからね。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)