第6回 2004年3月9日(火)放送 あらすじ

#6 その日の三冬

 三冬(寺島しのぶ)は亡き母の墓参りに行った日、その寺の境内で五年ぶりに岩田勘助(本田博太郎)を見かけ、言葉を交わした。勘助はかって三冬と同じ道場で腕を磨いていて、なかなかの腕だった。だが、気の毒なほどに醜い容姿の男である。この日は武家の娘と思われる美しい女お絹(匠ひびき)に付き添っていた。
 勘助の身分は低く、五年前にはある旗本に仕える足軽だった。門人たちは勘助を見下し、一緒に稽古するのを嫌がったが、三冬だけは差別せずに相手をしてやった。
 三冬には忘れられない思い出があった。ある日の稽古で、あまりにも覇気がない勘助を見た三冬は茶店に誘い、何かあったのかとやさしく尋ねた。すると勘助は突然泣き出した。三冬が思わず勘助の肩に手を置くと、勘助は三冬の手を取り唇を当てた。それから、「一期の思い出にござります」と言うと部屋から飛び出した。その日の夜、勘助はいつも自分を辱めていた主家の上役を殺害して逃亡した。
 勘助が、秋山大治郎(山口馬木也)の道場に三冬を訪ねてきた。かっての無礼を詫びた勘助は、身の上話をした。意外なことに主家からの咎めはなかった。上役に非がある上に、足軽と立ち会って敗れるような侍がいては家中の名折れということで、不問になったのだ。今は角倉伊織(勝部演之)という旗本に仕えているという。
 三冬の勧めで勘助は大治郎と手合わせをして帰った。大治郎が真剣になるほどの腕である。その剣を大治郎は父小兵衛(藤田まこと)に、「怨念がこもった邪剣」と話した。
 角倉家の一人娘お絹には縁談が持ち上がっていた。後添えだが相手は大身の旗本で、伊織も妻のすえ(大橋芳枝)も兄の兵庫(竜川剛)も乗り気である。お絹も将来のことを考えてその気になったが、実はお絹には青木丹三郎(鷲生功)という若い侍の恋人がいた。未練のあるお絹は、勘助に手引きをさせて荒れ寺の本堂で青木と会う。
 別れ話に青木は、一緒に逃げようと言う。その気はないお絹が帰ろうとすると、青木が襲いかかる。止めに入った勘助に青木が斬りつけた。逆上した勘助は刀を奪い取って青木の肩口を斬る。ようやく正気に戻り青ざめる勘助である。
 青木の家は旗本で角倉家よりも格上である。縁談にも支障が出そうだ。角倉家は窮地に立った。勘助は自らの行為を伊織に詫びた。一瞬、伊織、すえ、兵庫は顔を見合わせ、異様な沈黙となった。
 その後伊織は勘助に、「お前は娘を守ってくれた」と優しくねぎらいの言葉をかける。勘助は、「醜くていつも人に馬鹿にされてきた私に、やさしい言葉を」と、感激して泣き出した。伊織は、青木殿に詫び状を書くので明日届けて欲しい、と勘助に言った。
 翌日、青木の屋敷の中庭で勘助は書状を渡した。読み終えた青木の口元が歪み、「この書状に何が書いてあるか知っているか」と聞いた。「詫び状だと」と答える勘助に青木は、「詫びた後に、『下手人を差し出すから好きなようにしてよい』と書いてある」と言って書状を投げた。そのとうりの内容だった。青木の家来たちが斬りかかってきた。
 追い詰められた勘助が逆襲に出た。血まみれになりながら相手の刀を奪い、次々と斬り倒す。血刀を持った勘助は青木の屋敷から逃げた。追手が迫ると、通行人の女を抱き抱えて空家に逃げ込んだ。青木家の追手と奉行所の捕り方が家を囲むが、女に刀を突きつけているために手を出せない。
 弥七(三浦浩一)の知らせで勘助の名前を聞いた小兵衛、大治郎、三冬が現場に行った。小兵衛が青木家の家臣に話をつけ、三冬が家に入った。三冬の説得で勘助は女を放す。血と泥に汚れた勘助は泣きながら三冬に、「もう一度お目にかかれて、思い残すことはござりませぬ」と言い、自害して果てた。

キャスト

秋山小兵衛 … 藤田まこと
   ○   ○
秋山大治郎 … 山口馬木也
三冬 … 寺島しのぶ
おはる … 小林綾子
四谷の弥七 … 三浦浩一
 —————————
岩田勘助 … 本田博太郎
お絹 … 匠 ひびき
  ほか

ナレーター:橋爪 功

スタッフ

■原作
  池波正太郎
■脚本
  古田 求
■企画
  能村庸一
  武田 功
■プロデューサー
  保原賢一郎
  佐生哲雄
  足立弘平
■美術監修
  西岡善信
■監督
  井上 昭
■音楽
  篠原敬介
■制作
  フジテレビ
  松竹

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