第5回 2004年3月2日(火)放送 あらすじ

#5 消えた女

 秋山小兵衛(藤田まこと)が親しくしていた南町奉行所同心の永山精之助(宮崎豊)が殺された。小兵衛と弥七(三浦浩一)は、下手人と思われる浪人の山口為五郎(野崎海太郎)を探して北千住に行く。そこで鶴屋という旅籠に入り、隣家の旅籠・桔梗屋を見張った。桔梗屋には、おみつ(前田愛)という十七、八歳の奉公人がいた。おみつは囮で、彼女を見張っていれば山口が姿を見せるはずだと弥七は言った。
 小兵衛はおみつの顔を見てぼうぜんとなった。二十年前、四谷で道場を開いていた小兵衛は、住み込みで働いていたおたみ(前田愛)という女と男女の仲になった。
 その後おたみは小兵衛のところを去ったが、おたみと瓜二つのおみつを見て小兵衛は一瞬、自分の子供ではと疑った。
 おみつは山口の娘だと弥七は言う。ふっとため息をつく小兵衛である。山口は三、四人の手下を使い、大きな商家を狙って恐喝などをしている。女を使うこともある。弥七は、おみつがその道具にされるか、どこかへ売り飛ばされることもあると言った。心配した小兵衛はその夜は寝ずに桔梗屋を見張った。
 見張りながら小兵衛は、おたみのことを思い出していた。妻をなくしていた小兵衛は、おたみと一緒に暮らしてもいいと思っていたが、おたみはある日急に姿を消した。小兵衛の手文庫の金二十四両のうち、十両がなくなっていた。小兵衛は今でも、その時のおたみの気持ちが分からない。
 小兵衛のおみつを見る目が尋常でないことに気づいた弥七は、仲間割れした山口の手下からおみつの出生を聞き出した。母親はおたみという女。山口の下で恐喝の道具に使われたり、配下の男たちに身をまかせる不幸な境遇だった。嘉平という山口の手下が同情しておたみと親しくなり、おみつを身ごもった。生まれた子は表向きは山口の子とされた。やがておたみは嘉平の弟を頼っておみつを連れて越後に逃げたが、数年後に病死した。
 話を聞いた小兵衛はいたたまれず、桔梗屋に泊まる。世話をするおみつは素朴な娘で、板前の修業をする庄太(草野康太)という若者とは将来を約束しているらしい。自分の子供ではないと分かったが、どこか娘を見ているような思いで、庄太の料理の腕を誉めて駄賃をはずむ小兵衛である。
 弥七の予想どおりに山口がおみつを連れ去ろうとする。かばう庄太の肩先を斬る山口だが、小兵衛が相手となり峰打ちで一撃。弥七がお縄にした。
 事件が解決し、小兵衛は桔梗屋を立つ。おみつは小兵衛に、「庄太と店を持ったら会いに来て欲しい」と言う。うなずく小兵衛。別れ際におみつは、「小さい時に死んだおっ母さんが、お前の本当のお父っさんは江戸の立派な剣術使いの先生だと言っていた」と話す。久しぶりに不二楼を訪れた小兵衛は、おもと(梶芽衣子)に、「なぜおたみは娘にそんな嘘をついたのか」と尋ねる。おもとは、「心の支えだったんでしょう。辛いことをしのぐために、先生の面影にすがって生きた。そんな女心、分かります」と言った。
 小兵衛は夢の中でおたみに会う。おたみはまず、二十年前に十両を手文庫から出して姿を消したことを詫びた。その日、長い間別れていた父親が急に薄汚れた姿で現れ、十両ないと殺されるなどと言ったのでやむなく金を取った。ずっと返すつもりだった、と言った。小兵衛は、そんなおたみの言い訳を許した。おたみは小兵衛の好物のわらび餅を持って来ていた。やがておたみは幸せそうな顔で、「また来ます」と言って消えた。
 夢から覚めると、おはる(小林綾子)がいた。わらび餅を買ってきたという。

キャスト

秋山小兵衛 … 藤田まこと
   ○   ○
秋山大治郎 … 山口馬木也
三冬 … 寺島しのぶ
おはる … 小林綾子
四谷の弥七 … 三浦浩一
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おみつ … 前田 愛
おたみ … 前田 愛
庄太 … 草野康太
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不二楼おもと … 梶 芽衣子
  ほか

ナレーター:橋爪 功

スタッフ

■原作
  池波正太郎
■脚本
  中村 努
■企画
  能村庸一
  武田 功
■プロデューサー
  保原賢一郎
  佐生哲雄
  足立弘平
■美術監修
  西岡善信
■監督
  井上 昭
■音楽
  篠原敬介
■制作
  フジテレビ
  松竹

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