第4回 2004年2月24日(火)放送 あらすじ

#4 狐雨

 秋山大治郎(山口馬木也)は、旧知の杉本又太郎(大鶴義丹)を訪ねた。家に着くと又太郎が気を失って倒れ、何人かの浪人が、「女はどこだ」と家探しをしている。大治郎は浪人を追い払ったが、気がついた又太郎は何も言わない。又太郎は二千石の旗本・松平修理之助の屋敷に奉公していたが、急に暇をとっていた。
 又太郎の父親・又左衛門(田畑猛雄)は無外流の達人で道場主。秋山小兵衛(藤田まこと)とは旧知の仲だ。又太郎には剣客として生き抜くだけの力はないと考えた又左衛門は、「剣をあきらめ、松平家にご奉公を」と遺言し、又太郎が守らぬ時はご助力をと小兵衛に頼んで死んだ。小兵衛は、弥七(三浦浩一)に又太郎の身辺を探るように頼んだ。
 傘徳(山内としお)が又太郎の後をつけると、一軒の百姓屋を訪ねる。老人と、武家風の小袖を着た若い女がいた。弥七が独自の情報網でその素性を調べた。神田明神下に住んでいた西国浪人の娘で小枝(吉本多香美)という。一年ほど前に父親が死に、知り合いのつてで松平屋敷の奥女中に奉公したが、殿の側妾にされそうだと分かり、屋敷を抜け出した。小枝に心をひかれていた又太郎がそれを助けた。
 隠れ家で又太郎は小枝に、「江戸を離れて上方で暮らそう」と言う。小枝はきっぱりと断り、今は閉鎖されている道場を再開し、自分を妻として迎えるように迫る。もし松平家から追手が来たら、迎え撃って共に討ち死にする。又太郎にその覚悟がないのなら、松平屋敷に戻ると、あくまでも気丈だ。そして、自分はかつて、捕らえられて毛皮として売られそうになった白い狐を助けたことがある。その狐が守ってくれるから大丈夫だ、と言う。隠れ家を出た又太郎はあてもなくさ迷い、やがて森の中で横になり、いつのまにか眠った。ふと気がつくと、小枝がいる。呼びかけると、自分は小枝ではなく命を助けられた白狐だと言う。そして、「自分が力になれば、又太郎は天下無双の剣士になれる。その代わりに小枝を守って」と又太郎をすがるように見た。又太郎が目を覚ますと、晴れた空からぽつぽつと雨の粒。狐雨である。
 それから又太郎は人が変わったようだ。おどおどとした態度がなくなり、万事に自信を持ったように見える。
 又太郎の家を松平家の用人・磯野儀助(花上晃)が訪ねる。いつか又太郎を襲った浪人たちも従っている。磯野は又太郎に、殿には世継ぎがなく、奥方は高齢。お家には小枝が必要だ。五百両で手を打とうと持ちかける。又太郎は毅然と断り交渉は決裂。浪人が抜刀するが、今度は又太郎が圧倒的に強い。浪人は逃げ、磯野も立ち去った。物陰で見ていた弥七と傘徳は驚いて声も出ない。
 小兵衛は、松平家がこれ以上動けないように一計を案じた。雇われた浪人たちは札付きの悪党で、あちこちで強請りたかりを繰り返している。小兵衛と大治郎は夜、飲みに外へ出た浪人たちを峰打ちで倒し、王子稲荷境内の大木に縛りつけ、罪状を書いた木札に「王子の狐より」と書いて立てた。翌朝は大騒ぎとなり、番所に連れて行かれた浪人が松平家のことも白状した。
 又太郎が道場を再開した。浪人を捕らえた狐の一件も、又太郎がやったのではと噂され、人気は上々である。小兵衛は道場を訪ね、又太郎に父親の遺言を守るように詰め寄る。自信過剰になった又太郎は聞く耳を持たず、ついに小兵衛と立ち会うことになる。小兵衛は真剣での勝負を申し出る。
 にらみ会って動かない二人。そして一瞬の動き。小兵衛の太刀が又太郎の額の皮一枚を残して止まった。血が一筋眉間から流れた。ずっと立ち会いを見ていた小枝が押し殺した悲鳴をあげた。又太郎は気を失い、眠り続けた。
 又太郎の夢にまた狐が出てきて、「役目が終ったのでお別れです。修業をしてまことの剣客になって」と言った。目を覚ますと小枝が枕もとにいる。そして、「白狐の話は、あなたの気持ちを楽にしようとするための作り話」と言った。
 小兵衛、大治郎、そして小枝の力で又太郎は生まれ変わった。門人との稽古を断り、連日大治郎の道場に通っている。

キャスト

秋山小兵衛 … 藤田まこと
   ○   ○
秋山大治郎 … 山口馬木也
三冬 … 寺島しのぶ
おはる … 小林綾子
四谷の弥七 … 三浦浩一
 —————————————
杉本又太郎 … 大鶴義丹
小枝 … 吉本多香美
   ほか

ナレーター:橋爪 功

スタッフ

■原作
  池波正太郎
■脚本
  田坂 啓
■企画
  能村庸一
  武田 功
■P
  保原賢一郎
  佐生哲雄
  足立弘平
■美術監修
  西岡善信
■監督
  小野田嘉幹
■音楽
  篠原敬介
■制作
  フジテレビ
  松竹

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