あらすじ
<第7回> <第8回> <第9回>

<第7回> 「決死の告白ダイブ」
 救急車で病院に運ばれた琴美(坂井真紀)は拓海(藤木直人)と懐かし気に話し始めた。
「真智には、あたしたちのこと、黙ってて」と琴美。拓海は「忘れたよ、もう」と言葉少なに答える。そこへ真智(水野美紀)が戻ってきた。「椎名さん、仕事抜けられないんだって」。琴美の夫に連絡していたのだ。「そう言うと思った」。琴美は寂しげに応答する。と、そこへ由加里(篠原涼子)も登場した。真智が知らせたのだ。
 「なんか、不思議なところで4人揃っちゃったね」。琴美は、困ったようにその場の空気をまとめようとする。懐かしがろうとする由加里や真智を遮って、「帰るよ」と立ち去ろうとする拓海。琴美を除く3人は、引き上げることにした。3人で歩く状況に耐えられず、真智は「私は用事あるから」と拓海と由加里と別れることにした。タクシーに乗った真智は、拓海の腕に手を回す由加里をじっと見つめるのだった。
 そんな真智に、当てが有る訳ではなかった。バレンタインデーのポスターが踊る街を所在無く歩き、結局、動物病院に帰って来てしまった。
 「私には、ここしかないのか・・・・・・」
中に入ると、デスクの上に、雅枝(加藤治子)からのプレゼントが置かれていた。上質な手鏡である。「誕生日おめでとう。そのままの真智を愛しなさい」のコメントが添えられている。「おばあちゃん、私は変わりたいんだよ・・・・・・」。真智は微苦笑するしかなかった。そのころ由加里は、エステティックサロンで全身パックの最中。「きれいになれば本当に愛されるのかしら・・・・・」。不安を隠せないのだ。
 翌朝、真智はなんとなく落ち着かない。病院の薬品棚の模様替えを思い立ち、手をつけながら、途中で全部元に戻してしまう。そのまま、犬の散歩に行くことにした。真智は、小学校時代に、みんなで拓海にチョコを渡そうと試みたが渡せなかったことを思い出した。つい、菓子店に飛び込み、チョコを買ってしまう。
 病院の中でも女性スタッフが「幾らのにする?」「もう買ったよ」「本命には掟破りの前日渡し」などと喧しい。
 真智は自転車に飛び乗った。「そうよ、16年前のあの日とこれまでの自分にけりをつけるのよ。前日渡しだ!」が、拓海は不在だった。
 そのころ、拓海は琴美の病室を訪ねていた。
「ちょっと、聞きたいことがあって・・・・・・。今、幸せ?」と拓海。琴美は、少し驚きながらも「うん・・・・・・幸せ。でもどうして?」と逆に質問した。「不幸せって言ったらどうしたの?ひょっとして責任感じているの、15の時のこと・・・・・・」拓海は答えない。琴美は続けた。
 「傷つけたと思っているんだったら、違う。いい思い出になってるわ。それより、どうして私だったの? あなたに興味なさそうな私が気になったの?」
「そんなところかな」。そう言うと拓海は帰って行った。
 翌日はバレンタインデー。小手島(八嶋智人)と敦史(オダギリジョー)がスタッフから義理チョコを貰っている。小手島も慣れた様子で受け取っている。ただ、加奈(田村たがめ)だけが小手島に本命チョコを渡す。小手島は一向に気がつかないのだが。雅枝も玉木(矢島健一)にチョコを渡す。
 歩(小泉孝太郎)は、美佐(畑野浩子)から余った義理チョコを貰う。素直に喜ぶ歩に美佐は唖然とする。敦史は、真智のそばに寄って行った。「何の日か知ってます?」
「これね」と小箱を渡す。敦史は一瞬喜ぶが、それは寄生虫の標本だった。「あんた、子供ね」。真智に、きっぱり言い切られた敦史は、少なからず落ち込むのだった。
 そんな男たちが、リビングに集まった。大喜びの歩に「美佐のは義理チョコだ」と難癖をつける敦史。と、小手島が加奈から貰ったチョコに目をやると、それは手作りの「マジチョコ」。敦史に「加奈さん、本気です」と言われ、小手島はショックを受ける。
 真智は再び拓海の部屋に向かった。だが、ドアの前には、すでに由加里が座り込んでいた。帰ってきた拓海は、はなをすする由加里を抱きしめる。真智はその瞬間を目撃してしまった。静かに踵を返し、診療室で、持って行ったチョコを乱暴に食べ始めるのだった。16年前と同じように。「ぜんぜん変わってないじゃん、私・・・・・・」
 そこに雅枝が現れた。
「おばあちゃん、帰って来ていい?」「あたしはやっぱり指をくわえてみているだけしかできないよ」と、気弱にいう真智。
「駄目」。きっぱり答える雅枝。「恋は命がけよ。寂しくて一人泣く夜も必要なのよ。寂しさを知っている人が、人を愛せるのよ」と諭すのだった。そんな様子を歩がドアの外で聞いていた・・・。

<第8回> 「恋する大捜査線!」
 拓海(藤木直人)がマンションを出ていってしまった。真智(水野美紀)は寂しいながらも爽快な喪失感にひたりつつ、いつもと変わらぬ日常に戻っていた。
 そんなある日、真智は、琴美(坂井真紀)の退院を手伝って琴美の家へ。拓海が消えたことを琴美に知らせると琴美は「いつか二人はくっつくと思っていたのに・・・」と意味深な発言をする。真智も「後悔してない」とさっぱりとした表情で言う。
 そこへ、大慌てで由加里(篠原涼子)が現れた。「拓海がいなくなっちゃった」と半泣きしている。真智が知っていたことを知ると、由加里はとうとう大声を出して泣き出してしまった。
 真智は部屋に戻って、拓海が撮って、置き土産にしていった少女の写真を眺めていた。寂しげな目を上げる少女の思いに拓海の心情を重ねる真智だった。
 その頃、拓海は埠頭でルークを撮影していた。その写真で区切りをつけるかのように・・・。と、そこで倉庫の作業員募集の張り紙に目を留めた。
 真智がマンションに戻ると、拓海の部屋の前にカメラマンと思わしき男が立っている。拓海が引っ越したことを伝えると「仕事を持って来たのに・・・・・・」とつぶやいた。「カメラの仕事ですか?」。真智は慌てて、自分の部屋にあった拓海が撮った写真パネルを見せる。男は渡辺という名で、カメラマンアシスタント時代の拓海の先輩だった。渡辺は「拓海がよい写真撮るようになってくると先生がいじめるわけよ。その先生っていうのが有名なカメラマンなんだけどね・・・。それであいつ先生とぶつかってしまったんだけど、結局仕事干されてしまったんだ。業界ごと嫌になったんだろう」と当時の拓海の様子を教えてくれた。「1週間しかないけど、あいつと連絡取れる?」と渡辺。真智は反射的に「取れます!」と答えてしまった。
 真智は、仕方なく由加里を呼び出し居場所を尋ねた。だが、由加里は、自分より真智が拓海に近しかったことと、真智が拓海に告白したことに嫉妬を爆発させ、居場所についてまったく答えず部屋を出て行くのだった。
 そんな午後、敦史(オダギリジョー)は、獣医の小手島(八嶋智人)とともに行った往診の帰りにコンビニから出てくる拓海を目撃する。敦史は「自分の好きな人が別の男を好きな場合、邪魔していいですかね?」と小手島に尋ねる。「いいんじゃない」と訳も分からず答える小手島。真智が拓海に思いを寄せていることを知る敦史は、病院に帰って真智の顔を見てもそのことを話さなかった。
 その晩、真智の部屋で、琴美の快気祝いのパーティーを開いた。由加里もやってくる。由加里は、拓海の居場所を知らないことをやっと白状する。真智が怒ろうとすると、琴美が二人を制して話し始めた。
「ずっと黙っていようと思っていたんだけど、フサちゃんがいなくなった以上言わないと・・・」

<第9回> 「ついに運命のとき」
 拓海(藤木直人)の感謝の気持ちをきちんと受け取らないまま部屋に戻った真智(水野美紀)は、心ここになく拓海が撮った少女の写真パネルを眺めるだけだった。
 病院へ出勤した真智は、敦史(オダギリジョー)に、拓海に出会えた礼を述べ、つい、拓海から気持ちが遠のいてしまったことを漏らしてしまった。
 「じゃ、今、フリー?ご褒美ということでデートしましょう」と喜ぶ敦史。そして真智は敦史とスカッとするようなデートをすることを約束する。
 そのころ、拓海は久しぶりのカメラマンの仕事を終え、その充実感をかみ締めるようにレンズを磨いていた。
 真智の部屋のチャイムが鳴った。拓海だった。
 「ちょっと、話がしたい」と拓海。
 真智は少し考え「じゃ、上へ行こう」と屋上を示した。
 「これまで部屋に入れたのに、どうして?」といぶかる拓海に真智は答えない。仕事のことやルークがいなくなったことを話すと拓海は帰ると言い出した。
 「用は何だったの?」と尋ねる真智に、拓海はくさった。
 「鈍いんじゃないの。下に住んでいるわけじゃないよ。電車でわざわざ来たんだよ。俺も好きだって言いに来たんだよ」
 そう言って拓海は去って行った。
 真智は叫びたいほど舞い上がる自分を感じ、一睡も出来ないほどだった。ただ、琴美(坂井真紀)や由加里(篠原涼子)と拓海の関係がわだかまっているのは否定できなかった。
 そんな晩、由加里が真智を訪ねてきた。ぐだぐだと拓海のことを探る由加里。真智は、拓海のことを心底思っている由加里に、拓海の自分に対する気持ちなんか言えるわけがなかった。
 「ああいう男って、誰のものにもならないのかもね」
 由加里は、希望的楽天的な感想を述べて、そのまま真智の部屋で眠ってしまった。
 だが、その翌朝、由加里は、渡部写真事務所を訪ねた。拓海の気持ちを聞こうとする由加里だったが、由加里にも拓海の気持ちはすでに分かっていた。本人の口から今、好きな人がいるといわれる。たがその名を聞かないまま、由加里は外に出て、空を見上げるのだった。 その頃、渡部(山西惇)が拓海に仕事の件で声をかけてきた。
 「あの仕事でクレームが来た。いい写真だが、撮り直しだ」
 渡部は以前の拓海であれば撮り直しを断ると想像していた。が拓海は了解した。
 「変わったな、いい意味で」と渡部は感心した。
 高梨動物病院に琴美(坂井真紀)がやって来た。
 「由加里が言ってた。拓海に好きな人がいるって。あなたでしょう」と琴美。うなずく真智。「フサちゃんが現れてから私達の関係おかしくなっちゃったね」と琴美はため息をついた。琴美は「3人とも幸せになればなれたらいいね」と言い残すのだった・・・。
 翌日、真智は敦史といっしょにアミューズメントパークにでかけることにする。単純なゲームに興じる。ここ最近の憂さを晴らすには絶好だった。そんな真智を見ているだけで敦史も幸せだった。マンションのエントランスで敦史に別れを告げ、部屋に入ろうとすると、そこには拓海が待っていた。
 「高梨は俺のこと避けてるな」と拓海は真智の微妙な変化を見逃していなかった。
 「琴美のことか?」
 「由加里はどうなの?」と友人を重ねる真智。
 「友達のことばっかか。今、うじうじばかりしている」
 「フサちゃん勝手すぎる!」。つい真智は叫んでしまった。
 「分かったよ。でも、大切なのは自分の気持ちだろ」
 言い残して、拓海は去って行った。
 歩(小泉孝太郎)は美佐(畑野浩子)とナイト・クルーズ、船上デートにこぎつけた。美佐はますます「純な女」に変身している。突然デジカメを取り出し、自分たちのツーショットを撮る。「パソコンの壁紙にするの。でも、こんな自分が信じられない。ね、嫌じゃない?」と言った後、美佐は優しく歩のほほにキスをした。歩はものも言わずに美佐を抱きしめるのだった。
 由加里がまた真智の部屋を訪ねてきた。酔っている。その日は、拓海が撮った写真が掲載される雑誌の発売日。真智は由加里に留守を頼んで、コンビニに走った。
 その間に、真智の部屋に拓海が訪れた。もちろん、応対に出たのは由加里だった・・・。


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