あらすじ
<第10回> <第11回>

<第10回> 「世界を敵に回して」
 真智(水野美紀)は、早朝の街を歩きながら「世界を敵に回しても、フサちゃんと離れない」と固く心に誓う。ベッドの中で「子供のころ、欠けた自分を探しに出るという絵本があった。俺も心に空洞があって、やっと埋まった・・・・・・」と拓海も感無量だったのだ。自分の部屋で着替え、病院へ向かう時、つい、喫茶『胡桃』に立ち寄った。目をつぶって昨夜のことを思い出す真智。
 「何サボってる」
声を掛けたのは雅枝(加藤治子)だった。
 「おばあちゃん、タバコ貰っていい?」
いつもと違う真智に雅枝は何か感づいたようである。
 ともかく、拓海への思いが、いやます真智は、病院での仕事にも手がつかない。上の空で、小犬にだす薬を間違えてしまう。心は拓海に会いたいという願いで埋め尽くされているのだ。
 夜になって、真智は拓海が撮影しているスタジオをのぞいた。歩きながら拓海は「初めて俺が写真を撮った場所」に行こうといいだす。
 数日後、二人はその場所に立った。ともに景色美しさや、シャッターを押す感覚を味わいながら、真智はこの幸せが永遠に続くように願うのだった。
 が、その帰り道、おんぼろ車は山道でエンストしてしまった。「遭難するかもな」「あなたとだったら何も怖くない」。しかし、大きな道路に出てどうにか助かることに。ちょっとがっかりする自分に驚く真智だった。
 拓海のアパートで、拓海は作品のポジチェック。真智は医学書を読んでいる。拓海がごろりと真智のひざに頭を載せ、「一緒に暮らそうか」と言い出す。答える間もなく、真智の携帯が鳴った。由加里(篠原涼子)からであった。用があったわけではなかった。だが、真智は逆に由加里を自分の部屋へ呼び出した。拓海のことをはっきり伝えようというのだ。
 真智の部屋に現れ、話を聞いた由加里は「仕方ないよね」とは言うものの、わだかまりは相当強そうだ。
 「これからも友だちだよね?」と身勝手な願いを語る真智に、由加里は「子供生まれても琴美と真智とは友人だと思っていた・・・・・・男に振られるよりも真智がいなくなるほうが辛い。でも今は真智の顔を見るのは辛い」。何も答えられない真智だった。
 翌日、真智は、敦史(オダギリジョー)にも拓海とのことを白状した。
 「なにそれ。誘っといて捨てるのか」。まるで女の子のようにうろたえる敦史。真智はこの問いにも答えられないのだった。自分の勝手な「恋と幸せ」があちこちで不幸を振りまいている。「恋って暴力だ」。実感する真智。
 敦史は、歩(小泉孝太郎)に真智に振られたことを白状しつつ、美佐(畑野浩子)とのこれからの恋愛のステップについて伝授する。一方で、敦史は真智のことが吹っ切れず、部屋の前で待ち伏せしていた。現れたのは拓海だった。
 「なんでこうなるわけ? 俺、マジだったんだよ。お前は彼女を泣かすんだよ」
 「だから、どうしたいの」。脇をすり抜けて行こうとする拓海を、敦史は殴りつけてしまう。
 「気、済んだ?」
 拓海はそのまま去って行った。
 真智の部屋に琴美(坂井真紀)がやって来た。琴美は拓海とのことを素直に祝福してくれた。琴美も話があるという。夫が福岡に転勤するのだ。二人は由加里のことを心配するのだった。そのころ、由加里は一人で寂しげに街を徘徊しているのだった。
 そんな黄昏時、歩と美佐はホテル街を歩いていた。敦史のアドバイスを実践しようと、歩はあるホテルの入り口の前で立ち止まる。だが、入れない。結局、二人は公園で話し始める。「あたし男の人から誘われると断れないの。嫌われそうで。愛され方も愛し方も分からないのよ」。そう言って、美佐は泣き崩れるのだった。
 渡部写真事務所へ拓海が帰ると、渡部が「ペルーへ行かないか」と持ちかけてきた。硬派雑誌の企画でストリート・チルドレンのルポを連載するのだという。期間は2年以上。魅かれながら、真智のことを思い出す拓海であった。
 そんなある日、先日、真智が誤って薬を指示したカルテを加奈(田村たがめ)が見つけた。大事には至っていなかったが、真智は自分の気の緩みを猛省する。雅枝は、静かに説教しながら、突然「私、この3月で引退するからね」と重大決心を発表した。
 「自信ないです」。うろたえる真智に「あんたなら出来る。引き際は自分で決めるのよ」
 小手島(矢嶋智人)も、雅枝の引退には驚きながらも、真智が継ぐことに関しては、あっさり認める。しかも小手島も近く独立を考えていると言う。真智は、あまりの責任の重さにしゃがみこんでしまった。
 真智は、拓海から貰った合鍵で拓海の部屋に入った。と、丁度拓海が戻ってきた。拓海はペルー行きの話を切り出したのだった・・・。

<第11回> 「2人が選んだ道」
 真智(水野美紀)の部屋に琴美(坂井真紀)、由加里(篠原涼子)を招いて、琴美の送別会が始まった。そこで真智も拓海(藤木直人)と一緒に2年間ペルーに行くことを打ち明けた。「止めないで!」と興奮してしゃべりまくる真智に、やっと琴美が口を挟めた。「止めないよ。迷ってるの? どんなに愛していても、時間と距離を埋めるのは難しいの」。
 真智は、由加里にも同意を求めた。だが、由加里は戸惑っていた。「二人とも行っちゃうんだ。真智はこうなったら添い遂げろよ」。寂しげな由加里であった。
 雅枝(加藤治子)と歩(小泉孝太郎)に、拓海を合わせる日が来た。
 「何が好き」。にこにことどうでもいいことを聞く雅枝。歩は「結婚しないのか」「姉貴は2年たったら30才ですよ」と詰め寄る。真智は歩を外に引き釣り出し、「私と彼は、深いところで繋がってるの!」と黙らせる。その間、雅枝は拓海に「真智には傷ついてもいいから飛び込め、って、言ってきたの。だから何も言わない」とびしりと言い切るのだった。
 話が終わって、診察室を通り抜ける折、真智が動物の話をしみじみと始めた。手触り、癒し、そしてどうして自分が獣医になったことか・・・など。拓海はその様子を、心に引っ掛かるものとして感じるのだった。
 翌朝、雅枝は、スタッフに閉院することを報告した。真智がペルーに行き、小手島(八嶋智人)も別に開業すると聞いて、みな、納得せざるを得なかった。
 喫茶「胡桃」も閉店の準備中であった。10日後に入院を控えた玉木(矢島健一)に、様子を見に来た雅枝は言った。「いつかまた、あなたのコーヒーを飲むと信じてますからね」  拓海が仕事をしているスタジオに敦史(オダギリジョー)がやって来た。敦史は高梨動物病院がなくなることを告げた。
 「跡継ぎがいなくなるのさ。あんた、結局自分のことしか考えてないんじゃないの」。答えることの出来ない拓海だった。
 そのころ真智は、自分が動物の犠牲を伴って獣医になったことを思い出し、雅枝に「本当にいいのかな・・・・・・」と相談していた。雅枝は答えなかった。
 真智はそんな揺らぐ気持ちを吹っ切るために、拓海の部屋へ向かった。だが、拓海は「お前、これでいいのか?」と問いただす。真智は明るく、「もちろん」と答える。と、外へ出た時、携帯が鳴った。酔ったような声の由加里からであった。「寂しくて薬飲んじゃった」
 真智は由加里のアパートへ飛んで行った。ガラスを割り中へ入る。倒れている由加里を見つけ抱き起こす。吐かせようとして、飲んだ薬を見つけた。わずかな量である。ほっとする真智。すやすや眠り始めた由加里を見ていて、真智は涙が溢れ始めた。
 真智は再び、拓海の部屋へ向かった。ドアが開くや否や、拓海に飛びついた。「このままにしていて」。抱いたまま拓海が口を開いた。
 「高梨、俺たちはフィフティ・フィフティだよな。互いがどちらかの犠牲になることなんかしたくない。お前は俺をカメラの仕事に戻してくれた。俺がお前の仕事を奪うわけには行かない」
 「いいの、一緒にいたいの。走り出しているのに止めないで!」。叫ぶ真智。
 「別れるんじゃない、離れるんだ」
 「なぜ、離れなきゃいけないの?分かんない!もう一人になれないのよ。2年も待てない。あなたは平気なの?」。困惑する真智。だが、拓海は言った。
 「俺は平気だ。自信がある。そう感じるんだ。お前も感じろ」
 二人は途方にくれた。
 1週間後。琴美の引越しの日が来た。見送りにきた真智と由加里に琴美が言った。
 「誰かがいなくなったら倒れちゃうような関係はいけないよ。出直そう、新らしく」。二人に琴美の言葉が響いた・・・。
 いよいよ拓海の出発の日が近づいて来たのだが・・・。


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