あらすじ
<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回> 「今まで最高の男」
 夜の公園で大学の同級生、甲田敦史(オダギリ・ジョー)と高梨歩(小泉孝太郎)が話している。「昨日変な女に会ったよ」と敦史は切り出した。
 敦史がラブホテルに連れ込んだ女は、入館するのは「楽勝」。でもベッドの上でブーツが脱げず、あまつさえ、そこで“こむらがえり”を起こしてしまう。「気が萎えた」と言う敦史にその女が言ったせりふは「私、27歳、処女。後腐れなく、処女が捨てたいの。お願い!」。敦史は、シャワーを浴びる振りをして、その場を逃げ出してきたのだ。
 横浜の高台にある「たかなしアニマルクリニック」。そんな夜、そこで忙しく働く女性獣医がいた。それは、敦史が逃げ出した女・高梨真智(水野美紀)だった。真智は、入院動物の回診が終わると、前日の“悪夢”がよみがえり、自己嫌悪で落ち込んでしまう。
 「姉ちゃん、なにやってるの」声を掛けてきたのは、なんと歩だった。
 「姉ちゃんも27歳だっけ」と、敦史の話しの主が姉だと知らない歩は、つい比べてしまう。
 「感じ悪いわね」。真智のイライラは募る一方である。
 翌朝、徹夜明けの真智が朝風呂に入っていると、祖母の雅枝(加藤治子)が、札幌時代の小学校の同窓会案内葉書を持って来た。
 「行ってらっしゃいよ」と雅枝。「忙しいのよ」と真智。雅枝は「忙しいのはどうにかなる。あんたは思い込んだらそれだけだからね。いい加減になりなさい」と勧めるのだった。
 その葉書は、まるで女性の住むような部屋に住む広田(旧姓房野)拓海(藤木直人)の元にも届いた。
 真智は小学校時代からの友人・椎名琴美(坂井真紀)のマンションに遊びに行った。共通の友人・榎本由加里(篠原涼子)が「会おう」と言い出したのだが、由加里が到着しない。「遅いじゃない」。また怒り出す真智。「まあまあ」と諌める琴美。「あんたは、きちっとしたいのよね」と半ば呆れ顔だ。その時、由加里からの電話が入る。急用で来られないと言う。またまた怒り狂う真智である。
 真智はあらたまって琴美に聞いた。
 「あなた、夫の椎名さんが初めて?」
 「いいえ。15の時。真智は?」
 答に窮した真智は、時計の針を見て「うーん、19、いえ20ってとこかな」
 「なぜそんなこと聞くの」と追及する琴美。
 真智は、自分のことを大学の同級生のこととして話し始めた。
 「同じ27歳で処女の子がいるの。珍しい?」と真智。
 「別にいいんじゃない」と言う琴美に、真智は興奮して「珍しいよ。相手が欲しいと言うんじゃなくて、自信が持てないのよ」とつい自制をなくす。
 「結婚すれば?」とアドバイスする琴美に、さらに興奮した真智は「仕事だけでいいのかって、思っているのよ!」
 家に帰った真智は、大好きなブルース・リーのビデオをかけ、画面に合わせてカンフーアクションを繰り返すのだった。
 翌朝、獣医の小手島(八嶋智人)が手を噛まれるなど、いつも通りの忙しさでたかなしACの一日が始まった。そこへづかづかと入ってきたのは由加里だった。厚かましく冷蔵庫からビールを取り出し「歩君いないの」とのたまう由加里は「札幌の同窓会行かない?」と聞いてきた。「忙しいし興味ない」と答える真智に、由加里は「フサちゃん来るかもよ」と追い討ちを掛けた。「6年生の時転校してきた超美形の男の子。半年で転校したのに強烈な印象よ」と由加里。「それにもう、飛行機取っちゃった」と由加里は、琴美の分まで予約したチケットを見せ、1枚を置いて飛び出していくのだった。
 由加里が帰った後、小学校のアルバムを取り出した真智は、「フサちゃん」のことを思い出した。いたずらっ子を注意し、空から落ちてくる雪を食べて遊ぶかわいい少年・・・・・・。「今までで最高の男だったかも・・・・・・」
 真智は、琴美、由加里と機上の人となった。
 同窓会は、にぎやかに盛り上がったが、フサちゃんこと房野は現れない。そのうち、真智が作り上げた「27歳処女」の話になった。真智は、自分の実体験を「その子」のこととして話し始めた。「15歳の時、一緒に勉強していた男の子に、押し倒されかけて、鼻息の荒さに突き飛ばして・・・・・・」「牧場の牛舎で実習生に抱き着かれ、場所が牛舎というのは、さすがに・・・・・・」「25歳の時ラブホテルでキャンドルつけて、ことに至ろうとした瞬間、蝋燭の炎に反応したスプリンクラーが作動して・・・・・・」「その子の夢は『悲しみよ、こんにちは』みたいな“初めて”なの」
 「さすがに同情するわ」という由加里たちに、真智は叫んだ。
 「決めたのよ、相手はどうでもいいの。27歳で経験するって決めたのよ」
 おおいに飲んで騒いだ3人は、深夜の母校を訪れた。雪の裏山で「フサちゃーん」と叫ぶのだった。
 その翌朝、歩は学校で敦史に捕まった。「動物病院の看護婦を紹介しろ」と言う。渋々の歩にクリニックに連れて来られた敦史は、札幌から帰ってきた真智と対面する。息を呑む二人。
 真智は自分の運命を呪いながら、街を歩く。路上の猫に手を伸ばそうとすると、猫は誰かの足元へ逃げていった。その顔を見上げる真智は、また息を呑んだ。そこにいたのは「フサちゃん」だったのだ。

<第2回> 「恋の決断力」
 高梨真智(水野美紀)は、猫を抱きかかえる男が、小学校の初恋の相手「フサちゃん」だと確信した。その男、拓海(藤木直人)は猫を抱えたままバスに乗って立ち去ろうとしている。真智も追いかけて慌ててバスに飛び込む。真智は、その間、ずっと妄想を抱き続ける。「君を忘れるわけないじゃないか」「子供心に気になっていたんだ」・・・・・・。と、そこで拓海はバスを降りる。我に返った真智も飛び降り、あとを付ける。拓海は、あるマンションの一室を訪ねた。そして部屋の中にいる女性に「猫、見つかったよ」と拓海。だが「あんたとは終わりなの!」と叫ぶ声が聞こえる。「ウソツキ男。取り柄は顔だけ。才能も金もなし」。拓海は女から突き返された荷物を抱え、路上に出た。一部始終を見ていた真智は、つい声を掛けてしまった。
「札幌の小学校でいっしょだった房野君じゃありませんか?私は高梨です」
だが、拓海が乱暴に差し出した所持品には「広田」の名前が書いてある。
 「人違い。ウザ・・・・・・」とまで言い放たれる真智。
 真智は家に戻って、楽しいことでも考えつつこの不愉快な体験を忘れようと努める。が、楽しいことを思い付かない・・・・・・。ブルース・リーのビデオを見てポーズを取り、一人慰めるのだった。
 そんな姉を見た歩(小泉孝太郎)は、友人の敦史(オダギリジョー)に「変な姉」の話をした。歩もなぜか敦史が真智の話を一生懸命聞いてくるのか気になっている。そこへ、学生課の美佐(畑野浩子)がやって来た。敦史は逃げようとしたが、美佐につかまって会う約束を一方的に取り付けられる。美佐から逃げようとしながらも敦史は歩が美佐のことを気にしているのを見抜く。
 真智のところへ、琴美(坂井真紀)が訪ねてきた。犬を飼いたいと言う。が、琴美は話を変えた。
 「真智の知人の27歳処女って・・・・・・」。琴美は、悟ったようだ。
 「真智、家を出れば?真智の家は守られすぎている」
 真智はその話に乗った。すぐ雅枝(加藤治子)に相談すると、雅枝も二つ返事で賛成する。もちろん歩も大喜びである。
 早速、真智は翌日から、家探しに出掛けた。が、なかなかうまくいかず、落ち込んでいるところへ、由加里(篠原涼子)から電話が入った。
 「フサちゃんの居所見つけたよ」
 その夜、真智と由加里はその住所まで出掛けた。由加里はさっさとマンションの中に入ってしまう。真智はつい、「空き室あり」の捨て看板に目を留める。由加里はマンションの住人を捕まえ「空き部屋はないか?」と訊く由加里。その住人は、空き部屋があるという。しかも、「フサちゃん」の部屋の真上である。
 「私そこへ引っ越す」と宣言する由加里。「絶対、フサちゃんと付き合うの。あんたには出来ないでしょうね。考えすぎちゃって。頭いいから」。勝ち誇ったように、ほほ笑む由加里だった。
 そんな由加里をみて真智は、そのマンションへの引越しを決心するのだった。
 翌日、とうとう真智は、「フサちゃん」の真上の部屋を借りた。自分の「行動力」に満足する真智。真智は引っ越し挨拶のため「フサちゃん」の部屋を訪れるが、留守。拍子抜けする真智である。
 そのころ、敦史に頼まれた歩は、美佐との代理デートをしていた。ちょっと擦れた美佐は、「ま、いっか。どこでもあんたの好きなとこ、行こ」。呆気に取られる歩が、自分の好きな場所に行こうと提案した。行き先は、電車に乗っての多摩川であった。
 真智の部屋に琴美が荷解きの手伝いにやって来た。そこへ由加里も登場。
 「あんた、出し抜いたわね」と由加里。
 「決断力よ」と得意げに切り返す真智。
 だが、由加里もただ者ではなかった。
 「ははは、私が契約しなかった理由は、ここに『房野』という人がいなかったからよ」
 自分の軽率な行動に青ざめる真智であった。
そのころ、敦史は、自分が仕組んだ美佐とのデートでご機嫌の歩に驚きながらも、身勝手な頼みごとをした。それは、気になる真智のそばにいられるようにすること。つまりは、たかなしアニマルクリニックでバイトすることだった。
 翌日、真智は、バイトで現れた敦史に卒倒しそうになった。なにせ「真智は処女」を知っている男である。真智は猛烈な反対をしたにもかかわらず、雅枝にきっぱりと却下されてしまうのだった。女性スタッフだけは若い男性スタッフと働けると大喜びである。
 その夜、新居の真智は、一人沈んで、相変わらずブルース・リーを見ていた。と、そこへ「開けろ」の大声。真智の部屋から水がでて、下の部屋がびょびょにぬれてしまったというのだ。
 慌てて開ける真智が見たのは、あの失礼な男「広田」だった・・・。

<第3回> 「顔か性格か」
 「同級生じゃん、ちょっと付き合えよ」。真智(水野美紀)の階下に住む広田拓海(藤木直人)は、自分が「フサちゃん」こと房野拓海であることを、突然明かした。両親の離婚で名字が変わっていたのだ。
小学校時代の別れから15年後の拓海は、二枚目なだけのどうしようもない青年に成り下がっていた。「フサちゃん」に憧れていた真智は、幻滅を隠せなかった。が、拓海が真智の目も気にせずすやすやと眠りはじめたので、寝顔を見ながら「人間顔だけじゃだめなんだからね。昔はいいやつだったのに。何でこんなになっちゃったの」とつぶやきながら見とれてしまう真智だった・・・。そして、そのまま朝を迎えてしまう。「フサちゃん」は真智にとって初めて朝までともにした男性にだった。
 翌朝、高梨動物病院では、てんてこまいの忙しさだった。しかも、真智の秘密を唯一知っている敦史(オダギリジョー)が病院にいるので真智はとてもイラついていた。
そんな敦史は自分がかつてつきあっていた美佐(畑野浩子)から逃れるために歩(小泉孝太郎)に美佐を押し付けようとしていたが、それが歩にばれてしまう・・・。
 家に帰った真智は琴美(坂井真紀)に電話していた。
「フサちゃん、やっぱり同じマンションに住んでた。しかもかなり嫌な奴になってた」。
琴美にだけは本当のことを話す真智なのだ。
 真智が病院から帰宅すると、ドアに紙が挟まっている。なんと拓海からの「部屋の修理代と慰謝料」としての50万円の請求書だった。高額をふっかけられて怒り心頭に発する真智。そのころ拓海は、元彼女から「誘拐した」猫にいつのまにか情がわき、飼うことを決めていた。
真智は、拓海の部屋へ怒鳴り込んで行った。
 「請求書の額は高すぎるのよ。それに猫はどこにいるの」
 「俺が飼うよ」
 「悪いけどあなたは飼えないわ」
 「変わってないね。そういう説教くさいところ。まだクラス委員やってんの?」
 拓海に不愉快そうにドアを閉められ、真智は立ち尽くすのだった。
弟の歩(小泉孝太郎)からは「すぐ怒る」と指摘され、由加里(篠原涼子)からは「いっつも偉そう」と罵られる自分を思い浮かべたのだ。「私は繊細で傷つきやすいのに、誰も気付いてくれない・・・・・・」。ため息をつく真智だった。
 由加里が真智を訪ねてきた。偶然、マンションの入り口で拓海すれ違い、入ってくるなり「あれ、フサちゃんじゃないの?」と興奮気味な由加里だが・・・。


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