あらすじ
<第7回> <第8回> <第9回>

<第7回> 「謎の鬼面城」
 早乙女主水之介(北大路欣也)の屋敷を早朝、彦根藩江戸詰めの武士たちが取り囲んだ。彦根から主水之介のところに来る使者を斬るためだ。使者は行商人の格好をした名張の大八(岡田和範)。藩士たちに見つかり斬られるが、そこに朝帰りの主水之介が現れ藩士たちを蹴散らす。大八は彦根藩城代家老・高山修理(船越英ニ)からの密書を主水之介に差し出すと息絶えた。
 密書の内容はただの時候のあいさつだった。主水之介は逆に、それを命がけで奪い合おうとしたことが気になった。その時、三味線の音が聞こえる。彦根で流行っていたという俗曲だ。主水之介は彦根行きを決めた。
 道中で主水之介は、お仙(石野真子)という鳥追い姿の女から声をかけられる。主水之介の屋敷の近くで三味線を弾いた女だ。その直後に巡礼の一行が主水之介を襲おうとするがもちろん撃退。しかし早くも風雲急を告げている。
 彦根藩主はまだ若い井伊直継(岡田翔太)。七十歳を越えた高山との考え方の違いは埋めがたい。直継の周りには若い藩士たちが集まって、藩政改革を企てようとしていた。藩の財政は切迫し、その責任者は高山だという認識だ。江戸家老の村井大膳(中山 仁)を改革の旗頭にしようとしていた。
 しかし、主水之介宛ての密書を奪おうとしたのが村井。村井は巨額な公金横領をし、幕府の老中大久保加賀守(清水糸宏<糸へんに宏>治)とも通じていた。若い藩士たちは、藩政を牛耳ろうとする村井に操られていたのだ。高山もそうした動きを察知して、主水之介に密書を送った。お仙は殺された大八の妹だった。
 村井も江戸から彦根に入っていた。「改革派」の若い藩士たちは料亭に集まり、「村井様こそ藩を救う」と気勢を上げていた。そこに主水之介が姿を現わし、「その方らの目は節穴か」と一喝。主水之介の指示を受けた小女が桶の水を藩士たちに浴びせた。
 村井が行動を開始した。登城する高山の駕籠を襲って高山を拉致し、続いて直継に会って、「高山が不正を行っている。即刻切腹を命じるように」と迫る。直継が「余が直々に問いただしてから」と言うと、村井は「高山一味が動き出すと危ない」と言って警護を名目にして直継を軟禁してしまう。
 村井は高山の前に公金横領の偽の自白書を広げ、署名と血判を迫る。老中大久保と組んで藩政を牛耳る野望を隠そうともしない村井である。一方、主水之介の説得で若い藩士たちも目が覚めた。藩士たちが軟禁から直継を救い出し、主水之介と対面する。高山がいかに直継のことを思っているか。主水之介からそのことを聞いた直継も、やっと自らの不明を認めた。
 村井は高山を連れて彦根城を脱出する。お仙がその行方を主水之介に報告する。琵琶湖を見下ろす断崖での村井一味と主水之介の対決。村井の短銃が主水之介に向かって火を吹く。危うし主水之介・・・。

<第8回> 「黄金伝説の謎」
 深川の料亭の座敷で、橘屋(矢部義章)という上総・木更津の炭問屋が、芸者(鈴川法子)にかんざしでのどを刺されて死んだ。刺した芸者も自害したが、実は橘屋とは縁もゆかりもない。橘屋は「一生かかっても使いきれない金のなる木がもうじき手に入る」と自慢していたが、それにしても不可解な殺人だ。
 しかし、同じ料亭に居合わせた早乙女主水之介(北大路欣也)の目は鋭かった。料亭の片隅にいた虚無僧の異様なふるまいを見た瞬間に、陰陽師の仕業と見て取った。虚無僧、実は陰陽師・阿部市之丞(亀石征一郎)。彼が芸者に、人間を意のままに操る術をかけ、殺人を実行させたのだ。主水之介の追求に、阿部は逃げた。
 そこに、伊佐次(前田淳)と太吉(藤枝政巳)という二人の男が駆け寄り、土下座して、「真理谷(まりやつ)一族のためにお力を」と頼む。真理谷とは、木更津に近い郷で、旧武田家の黄金伝説のある場所だ。主水之介は上総へ向かう。
 真理谷の郷の支配者は関東郡代大室主膳(遠藤政慈)。主膳は欲深で、三十万両と言われる黄金を手に入れるため、武田一族の流れをくむ真理谷一族を束ねる名主を拷問にかけて殺した。名主は何も言わなかった。そこで今度は名主の娘おみつ(五十嵐いづみ)に狙いを定めている。伊佐次と太吉は、名主の屋敷の使用人で、主水之介に助けを求めたのだ。大室は陰陽師の市之丞を部下に引き入れ、江戸で黄金伝説の話を吹聴している橘屋も消した。
 主水之介は、おみつがいる名主の屋敷に泊まる。そこには、新城和馬(伊東貴明)という若侍もいた。黄金を軍資金に、真理谷一族が謀反を起こす恐れがある、それを探れ、という密命を和馬は大目付から受けている。だが、和馬はおみつに惚れていた。
 主水之介はおみつに、「本当に黄金はあるのか」と聞く。おみつは、「殺された父もその場所は知らなかった。ただ、黄金は閻魔大王に守られて眠っているとは聞いている」と言った。
 大室の手の者が、おみつの屋敷を襲う。主水之介が応戦する。戦いが始まった。そのなかに、要所要所でおみつと主水之介たちのために働く修験者姿の男がいた。おみつの屋敷の下男孫兵衛(伊東四朗)の変装した姿である。孫兵衛は、伊佐次にも術をかけようとする阿部を斬った。
 一体何者かと修験者に近づいた主水之介は、近くに小さな観音像をまつる祠があるのに気がついた。閻魔は観音菩薩の化身とも言われている。「黄金のありかを知っているな」と聞く主水之介に、孫兵衛は黙って祠の扉を開ける。やがて洞窟に通じる入り口が姿を現わす。石段を降りると閻魔の石像がある。台座を触ると石像が動き、まばゆいばかりの黄金の観音像が姿を見せた。
 孫兵衛はかつて、黄金伝説にひかれて真理谷の郷に来た。そして苦労の末に黄金を見つけたのだが、その時から心が変わり、「人の心を狂わせる黄金を世のなかに出してはいけない。自分は番人として黄金の菩薩を守ろう」と思うようになったのだ。
 頭上から大室の一団の足音が聞こえてくる。主水之介は外に出た。激しく斬りあい。そのさなかに、凄まじい爆発音が轟いた。

<第9回> 「化猫屋敷の怪」
 早乙女主水之介(北大路欣也)は妹の菊路(佐藤友紀)や用人の喜内(矢崎滋)と中村座の芝居見物をしている。佐賀鍋島藩の猫騒動に題材を取ったと思われる化け猫ものである。もちろん鍋島とは言わずに波島など、配慮はしてある。舞台は怪猫が侍と戦う夢幻的な場面で盛り上がっている。
 とその時、客席にいた三人の侍が抜刀して舞台に乱入し、「芝居を打ち切れ」と叫び、場内は騒然となった。一座の花形、藤村太夫(藤田佳子)が何事かと駆けつける。藤村に侍たちは、「自分たちは鍋島藩江戸屋敷の者だ。芝居はわが藩を愚弄している」と刀を振り回す。
 その時、白扇で侍の刀を叩き落した男がいた。主水之介である。退屈男の登場に場内はやんやの喝采だ。興奮した鍋島藩の侍に対して主水之介が刀を抜いた瞬間、「待たれよ」と頭巾の侍が現れ、侍たちに刀を納めさせる。鍋島藩江戸家老の山本神右衛門(近藤正臣)だった。芝居小屋の騒ぎはこれで収まった。
 江戸では、大店を狙う盗賊が暴れ回っていた。現場には「御用金頂戴 浮立党」という書置きが残されている。二度ほど奉行所が賊たちを追い詰めたが、鍋島藩下屋敷の角を曲がったところで一団は消えた。鍋島と聞いて、主水之介の退屈の虫がうずいた。
 主水之介は神右衛門を藩の下屋敷に訪ねる。鍋島藩のお家騒動は百年以上も前のことだ。もともと鍋島家は竜造寺家の家臣で代々の家老職だった。だが、九州に出兵してきた豊臣秀吉の口ききで藩主に取って代わった。おさまらないのが竜造寺一派で、鍋島一族を夜な夜な襲い、それが化け猫騒ぎの伝説を生んだ。
 竜造寺の血筋は今も健在で、十八代の当主白庵(木村昌栄)が母親と共に近いうちに佐賀から江戸に来るという。主水之介は神右衛門とそんな話をしながら屋敷の庭を歩いていて、大木佐助(堤大ニ郎)という若い侍と会う。熱血漢である。さらに、中村座の藤村太夫も屋敷に来ていた。竜造寺家の接待のために、中村座の座員たちが、武勇を称える古い踊りの稽古をするためだった。踊りの名前が面浮立と聞いて主水之介は驚く。盗賊の書置きが浮立党だった。
 その夜、主水之介は刺客に狙われる。その一人を捕らえると佐助だった。佐助は主水之介が藩の秘密を探っていることに気がつき、藩の名誉を守るために襲ったのだ。
しかし、悪いことを隠すだけでは藩のためにならないと主水之介に説得される。主水之介は、浮立党を操っているのは家老の神右衛門で、竜造寺の当主を呼んだのも何かの策略だと読んだ。そして、真相解明のために自分と手を組もうと佐助に持ち掛ける。
 主水之介は佐助に縄をつけて鍋島藩の下屋敷に行く。そして、自分を狙って失敗したことを神右衛門に話し、佐助の縄を解いた。神右衛門は佐助の誠意は認め、許した。佐助は、主水之介を討ち取るのは今こそ絶好の機会と神右衛門に言う。神右衛門も同意して、侍たちが主水之介を狙うが倒せない。だが、佐助が必死で切り込むと、主水之介は絶叫して深い井戸に落ちた。 数日後、到着した白庵母子に挨拶するために、上屋敷から藩主直次(古田求)が来た。神右衛門の目的は藩主の暗殺。そして白庵を藩主にという竜造寺派の陰謀だった。それが実行される寸前、佐助が、そして主水之介が立ち上がる・・・。


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