あらすじ
<第4回> <第5回> <第6回>

<第4回> 「伏魔殿の血闘」
 天下御免の旗本退屈男・早乙女主水之介(北大路欣也)は、ふと思い立って伊勢参りに行く。妹の菊路(佐藤友紀)も同行する。もとより主水之介の旅、途中で箱根の湯につかったり、祇園の茶屋に寄ったりと散財して、江戸に残る用人の喜内(矢崎滋)に金を送るように催促する旅である。
 そんな街道でのある日。主水之介は侍たちが乗り物に乗った上品な女を襲うのを見て助ける。備後福山藩の江戸屋敷の上臈で藤岡(古手川祐子)という。ほどなくして、今度は藤岡を迎える一団が到着した。元福山藩側役の宮永主馬(中島久之)で、僧姿の若者を連れている。卯三郎(出光秀一郎)といい、藤岡が幼い頃に分かれた腹違いの弟だという。 主馬によると、卯三郎の父親は藩主阿部主計頭正興(高橋長英)。実子であることを示す御墨付きも持っていた。しかし、藩内にはそのことに異論を唱える堀田将監(森山周一郎)のような勢力もいるために、藩主や重臣たちの前で証言してほしいと藤岡に頼む。弟なつかしさのあまり、藤岡は応じる。
 藩主の主計頭と主水之介は、昔江戸でともに遊んだ仲だ。主水之介は主計頭に卯三郎のことを問いただす。たしかにかって、鷹狩に行った時に、すでに夫を亡くしていた藤岡の母と懇ろになり、卯三郎という子供が生まれていた。
 藩主の前で、藤岡は、「卯三郎はまさしく弟」と言う。堀田が異論を唱えたが、「卯三郎の左のひじにあざがあるはず」という藤岡の言葉どうりで、これが決め手となって、卯三郎は実子と認められた。
 堀田の屋敷を訪ねた主水之介は、堀田から、主馬が野心の塊のような男で、五年前に主計頭の怒りを買って追放になったことを聞く。堀田は、卯三郎を連れて主馬が再び現れたことに疑惑を持っていた。
 主水之介は、江戸に帰る準備をする藤岡に、もう一度卯三郎に会うように勧める。卯三郎は瀬戸内海の小島にある龍山寺という寺に住んでいた。藤岡は菊路とともに小舟で龍山寺に向かう。その舟の中で藤岡は菊路に、卯三郎のひじにあざがあると言ったが、実は自分はそのあざのことを知らなかったと言う。主馬にそう言うように頼まれたのだ。
 極彩色のきらびやかな楼門を持つ龍山寺の本殿で卯三郎と会った藤岡は、「阿部家の実子として江戸の世継ぎを支え、決して藩主になろうなどとの野心を持つな」などと、姉としての忠告をする。そして、「お歳はいくつに」と聞いた。卯三郎は「巳年の生まれですから・・・」と言ってハッと口をつぐんだ。卯年生まれではないとすれば、この若者は一体誰なのか。
 藤岡が疑問を持った瞬間、柱の陰から主馬が姿を現わし、「たわけめ」と卯三郎を叱りつけた。「父上、申しわけございませぬ」と卯三郎。実は主馬の息子の兵庫だった。主馬は、卯三郎を探し、主計頭の御墨付きを持っているのを確かめた後で殺し、わが子を卯三郎に仕立てて福山十一万石を乗っ取ろうとしていたのだ。
 主馬父子がその正体を現わし、藤岡と菊路を亡き者にしようとしたその時、主水之介の高笑いがした。諸羽流青眼崩しが冴える。

<第5回> 「幽霊城の姫君」
 旗本退屈男、早乙女主水之介(北大路欣也)が信濃路を旅する。立石藩という一万石の小藩の様子がどうもおかしいのだ。幽霊城と言われ、様子を探りに行った幕府の隠密も二度と戻って来ない。となるとますます主水之介は好奇心を持つ。
 城下に近い立石神社で主水之介は、幕府の隠密ではないかと、お秀(荻野目慶子)という女に問い詰められる。美しいが妖しい雰囲気がある。お秀は自らのことを「風の一族」と言って姿を消す。忍者である。城下の宿で主水之介はお秀と再会する。お秀の父は、風の一族から藩士に取り立てられた。だが二十年前、お秀が幼い時に姿を消してしまった。立石藩は異様なことになっていた。家臣たちが次々と城下を去っている。去る者には、老齢の藩主の立石右京太夫(森繁久彌)が金品を与え、立ち去ることを奨励するかのようだ。家老の木村頼母(横内正)もそれに従っている。世継ぎもなく、このままでは藩は取り潰しになりそうだ。そんな状態なのに右京太夫はわらべ歌を口ずさんでいる。「殿は乱心だ」という噂が流れ、次の藩主に仕えることを当て込んで城下には浪人が集まっていた。
 藩の大目付・高坂外記(原田大二郎)は反発し、早く世継ぎを決めて藩政を立て直せと頼母に迫る。五千両で藩を去れ、という頼母に高坂は、「世継ぎがいなければ、自分の妾腹の子を殿の隠し子だったということにして」と持ちかける。藩を乗っ取る気なのだ。
 勢力拡大のために高坂は浪人を集め始める。主水之介もそれに応募しようとするが、幕府の隠密と疑われ、高坂の配下と斬り結ぶ。頼母がその腕前を見ていた。
 高坂が右京を座敷牢に幽閉した。頼母は主水之介に助けを求める。その時、主水之介はお秀と一緒にいた。お秀は頼母に、自分は元藩士の熊谷源左衛門の娘だと名乗る。一瞬頼母の顔色が変わった。お秀は主水之介に、「殿様のために力を貸して」と頼む。主水之介は引き受けた。さっそく城内の偵察に出た主水之介は、右京が牢内で歌っているわらべ歌を聞く。お秀も同じ歌を歌っていた。
 主水之介に幕府の要職に就けとの指示があったことを伝えるために、菊路(佐藤友紀)と喜内(矢崎滋)が立石城下に入った。だが、運の悪いことに、主水之介が城下にいないかと尋ねた相手が高坂の腹心の島田蔵人(伊藤高)だった。二人はうまくいいくるめられて座敷牢に入れられてしまう。
 主水之介は頼母に、「源左衛門は生きているのでは」と問い詰める。頼母が告白した。二十年前、藩主右京太夫が急死した。世継ぎもなく、このままではお家断絶となることを恐れた頼母は、右京とそっくりな源左衛門を藩主の身代わりとした。当時赤字だった藩の財政が立ち直った時、源左衛門は、「これ以上公儀を欺くことは出来ない。藩士に金を持たせて藩を去らせ、最後に藩を幕府に返上する」と言って譲らなかった。
 主水之介は、何とか源左衛門とお秀をもう一度会わせてあげたいと思った。主水之介と高坂一味の戦いが始まった。

<第6回> 「海を渡った退屈男」
 早乙女主水之介(北大路欣也)の屋敷に幕府隠密の佐久田源八(火野正平)が来て助けを求める。四国丸亀藩の内情を探るために送った隠密がいずれも不慮の事故で死亡している。その中でも、秋月兵馬(井上高志)は源八の親友だった。丸亀で何か異常なことが起こっている、というのだ。話を聞いて、主水之介の退屈の虫がうずいた。
 丸亀藩ではここ数年、藩主の京極高宣(浅田祐二)が重病の床にある。世継ぎは五歳の松丸(谷口竜気)だが、正室だった生母は出産の時に死んでいる。その下に側室お豊の方(日下由美)が産んだ竹丸(國田亮)がいる。お豊の方は主席家老の田村帯刀(中原丈雄)と組み、竹丸を世継ぎにと画策している。お家騒動の嵐が吹き荒れそうな雲行き。
 主水之介は源八とともに海を渡って丸亀城内に入る。天下御免の額の向こう傷を知る藩の重臣がいて、主水之介は藩主高宣を見舞うことになる。高宣は苦しい息の下から、「松丸を頼む」と主水之介に訴えた。
 主水之介は帯刀に、「なぜ松丸が殿の側にいないのか」と尋ねた。その日は松丸の生母萩の方の命日で、萩の方の妹の楓の方(梶芽衣子)が付き添い墓参に行っているという。主水之介はそう語る帯刀の表情から何かを感じた。
 墓参帰りの山道で、松丸と楓の一行が野伏の一団に襲われた。腰に太刀を帯びた楓は果敢に戦うが、敵の剣が松丸に迫ってきた。その時現れたのが主水之介。諸羽流青眼崩しが次々と野伏たちを倒し、敵は逃げた。野伏たちは身が軽く、刀は短い。狭い船中で戦うためのもので、瀬戸内海の村上水軍の流れを汲む者たちと主水之介は直感した。
 帯刀とお豊の方一派が放った刺客たちと思われるが、主水之介の問に楓は「心当たりはない」と答える。そして、「前に江戸から来た秋月兵馬も、世継ぎ問題を聞きまわったあげく水難にあって命を落とした」と、主水之介を牽制するようなことを言う。
 帯刀と配下は、主水之介が予想したように村上水軍の末裔だった。今も長崎のオランダ商館と密貿易を行い、新式のライフル銃まで手に入れていた。竹丸を世継ぎとして藩政を牛耳ろうという魂胆である。そのために、血の連判状まで交わして結束をかためていた。 優れた隠密として連判状の存在を知った源八は、何とかそれを手に入れて幕府に報告、丸亀藩取り潰しの口実にしようと考えた。
 それにしても不可解なのが楓の行動だ。主水之介の疑問に源八は、もしかしすると楓は幕府がはるか昔に丸亀藩に潜入させた忍者「草」の子孫ではないか。それならば手を貸してくれるはず、と言う。そして城内の奥庭で焚き火をし、懐から取り出した粉をくべた。忍者の里伊賀上野に伝わる忍び草。その香に反応すれば相手は忍者だという。
 はたして、館の中から楓が姿を現わした。だが、その表情は苦しげだった。楓とは何者なのか。そしてお家騒動の行方は・・・。


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