2013年02月02日 ザ・コンパスで放送
政治・政策

アベノミクスの今後-日本が目指すべき成長戦略とは?

《参考情報》
1:設問テーマの背景 (facts)>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

安倍晋三首相は28日午後の衆院本会議で所信表明演説を行い、
「わが国にとって最大かつ喫緊の課題は、経済の再生です。」と述べ、
<経済再生が最大、喫緊の課題。大胆な政策でデフレ、円高から抜け出し「強い経済」を取り戻す>との経済政策の方向性を示しました。

すでに、昨年末の第二次安倍内閣の発足から安倍内閣は、「大胆な金融緩和」、「機動的な財政出動」、
「民間投資を喚起する成長戦略」を三本の矢と呼び、いわゆるアベノミクスとする
経済政策を打ち出しています。

まず、「大胆な金融緩和」では、物価上昇率を前年比2%に引き上げる目標を導入し、
できるだけ早期の実現を目指すなどを明記した、政府と日銀の政策連携強化のための
共同声明を1月22日に発表しました。

次に、「機動的な財政出動」では、1月15日に「復興・防災対策」「成長による富の創出」
「暮らしの安心・地域の活性化」の3つを重点分野とした緊急経済対策を盛り込んだ、
今年度補正予算(13.1兆円)を閣議決定しました。
また、2013年度予算として、一般会計の総額を92兆6,100億円とする閣議決定が
1月29日に行われます。

そして、「民間投資を喚起する成長戦略」については、「日本経済再生本部」のもとに
「産業競争力会議」が発足し、今年6月を目処として、2030年の日本の「社会のあるべき姿」を
前提に、「国民の健康寿命の延伸」、「グリーンで経済的なエネルギー需給の実現」、
「安全・便利で経済的な次世代インフラの構築」、「世界を惹きつける地域資源」の
4つの分野を戦略目標とする成長戦略が策定される予定です。



2:番組として (our aim)>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

昨年12月26日の安倍内閣発足時点で、85円前後であった円相場は、1月28日現在では、
91円台の円安・ドル高傾向となっています。また、28日の東京市場では、
2年9ヶ月ぶりに日経平均が1万1000円台を回復しました。
また、近年の内閣では、発足直後の内閣支持率が時間とともに、低下してゆく傾向が多い中、
FNN世論調査では発足時(昨年12月26、27日調査)の55%から、
1カ月後(今月26、27日調査)は64.5%と9.5ポイント改善したほか、
各報道機関による最新の世論調査でも軒並み65%前後と、発足時点よりも
上昇する結果となっています。

アベノミクスの三本の矢のうち、「金融緩和」「財政出動」が実行に移された現段階では、
市場や国民が好感していることが伺えますが、まず、これまでの政策はどう評価されるのか、
考えたいと思っています。
さらに「成長戦略」についてはいまだ中身が見えない状態ですが、安倍首相は所信表明演説で
「いつまでも国の財政で需要を作り続けることはできない。持続的に成長するためには、雇用や
賃金を増やすという好循環を生み出していく必要があり、成長戦略が極めて重要だ。
同時にプライマリーバランス=基礎的財政収支の黒字化も目指していく」と述べ、
財政規律の重要性とともに、経済成長の原動力となる需要を作り出すためには、
「成長戦略」が重要であるとの認識を示しています。
そこで、今後の日本経済のカギとなる成長戦略の在り方についても考えたいと思います。
コンパス・オピニオンリーダーの皆さまからご意見をいただき、番組ユーザー及び視聴者とともに
議論しながら、アベノミクスについて多角的に捉え、日本が目指すべき成長戦略を考えたいと
今回のテーマを企画しました。
どうか、ご意見をいただけますようお願い申し上げます。


《参考資料》
政府による成長戦略の動向を知る資料として、産業競争力会議の第1回(1月23日)にて
各出席者から配布された資料を確認できる官邸ページURL、及び甘利明 経済再生担当大臣の名前で
提出された新たな成長戦略についての資料のURLをお送り致します。
<産業競争力会議の第1回資料ページURL>
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai1/siryou.html

<新たな成長戦略について>
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai1/siryou4.pdf

オピニオンリーダーへの問いかけ

※コンパスで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
Q1:これまでのアベノミクスをどう評価しますか?
Q2:問1の回答理由をお聞かせください。
(コメント欄-文字数に制限はありません。)
Q3:これからの日本は、どうすれば経済成長できるでしょうか?
どんな分野でどんな取り組みをすればいいのか?ご意見をお聞かせください。目指すべき成長戦略の具体策、また目指すべきではない成長戦略の具体策があれば合わせてお聞かせください。
Q4:アベノミクスによって今年の経済はどう変化すると予測されますか?
下記の選択肢よりお選びいただき、ご意見をお聞かせください。

オピニオンリーダーの回答

( 27件 )
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1. 評価する

山村武彦
防災システム研究所所長
Q2. 「1 - 評価する」の回答理由
発足からたったひと月で、国内の沈滞・閉塞感を払しょくし、坂を転がり落ちていた政治に対する信頼感をとりあえずストップさせた。この安倍政権の鮮やかな戦略に拍手を送りたい。事業仕分けなど均衡縮小政策、増税など後ろ向き政策と党内抗争などに明け暮れてきた民主党政権。安倍政権に変わった途端、経済浮揚策を次々と打ち出すなどスピード感と一貫性のある歯切れの良い動きを国民が支持し期待している。
Q3. コメントする
経済成長で重要なのは一過性ではなく持続性、部分ではなく全体、そしていくつもの牽引車が必要である。そのために経済戦略だけでなく、国民が一致協力できる「国のかたち・国のあり方」を含めた日本のグランドデザイン構築が不可欠。国政とは危機管理である。危機管理グランドデザインとして、目指すべきは折れない(レジリエンス)国家、安全・安心大国。そのために国土強靭化計画推進を基本ベースにしたイノベーション的持続的経済成長戦略が考えられる。
・東日本大震災の早期復興
・老朽社会インフラの整備・更新
・災害に強い社会インフラの強靭化
・エネルギー安定化のためのエネルギー多様化技術革新推進
・新技術・研究開発企業への積極支援
・全国高速交通ネットワーク推進による地方活性化
・TPPに耐え得る農山漁村、農林水産業の振興
・離島・領空・領海など国土保全
・日本全体の経済力・維持向上のための社会資本整備・アジア交易支援
※上記施策推進のため、向こう10年間に300兆円を投資する。
Q4. 現状よりも良くなる
円安、株高で企業業績が好転する。沈滞・閉塞感が払しょくされるため個人消費が増え、名目GDPは1.5~2%程度増える。持続的経済成長への第一歩を踏み出すと思う。
 
 
飯田泰之
明治大学政治経済学部准教授
Q2. 「1 - 評価する」の回答理由
金融政策のレジーム転換……第一段階は成功を収めつつある.
まだはじまったばかりだが,現段階までは評価してよいと思う.

政権交代前後の発言から市場の雰囲気は確実に変わってきている.
金融政策のレジーム転換は,それがレジーム転換であると市場が受け取ったならば半ば成功.
そのレジーム転換がホンモノであることが明確になれば本格的な成功と言って良い.

購買力平価水準と同程度(企業物価で90円台後半消費者物価で100円台後半であるから100円前後あたりか)まで為替レートが修正されると,輸出企業だけではなく雇用の国内回帰をテコに日本経済はようやく「正常な運行」が可能となる.

ここまでが経済を「取り戻す」活動である.

ただし,これだけでは「さらなる発展」へ向かうことはない(いままで「正常化」さえできていなかったのだから「取り戻す」だけでも一応は及第点だと思うが).

経済政策は成長政策・安定化政策・再分配政策に大別される.金融政策の大転換によって安定化政策は改善しようとしている.今のうちに後述の成長政策と,不公平感を抱かせない再分配政策への展望を示して欲しい.
Q3. コメントする
産業・分野を特定し,育成を目指すターゲッティングポリシーは……
・理論的に成功は難しい:政治家や官僚の方が経済のを見通すことが出来るという前提は成り立たないだろう
・歴史的に成功例がない:戦後の日本を見ると,政・官はむしろ新産業を抑圧してきた
ので考えても無駄だろう.むしろ,
・法人税減税
・研究開発投資減税
・長期雇用減税
が必要である.長期雇用への減税・補助金は効率化と逆のように考えている人がいるが,それは間違いだ.「人的資本への投資優遇」である点を忘れてはいけない.
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
まだまだわからない.

過度の円安が修正されつつある段階で既にメディアのみならず自民党内から「円安の行きすぎ」を警戒する声が出ている(OECD,IMFの推計する購買力平価レート100円台後半よりもまだ15%程度円が高い状況で!).3月の日銀の人事がアベノミクスへの本気度の試金石となるだろう.

さらに,円安とインフレの成果が中間層・低所得者層に実感されるには時間がかかる.また実際に好況になればなるほど格差感が強くなる(実際の格差拡大とは無関係に).このような「実感」によって上手く行きかけた政策が中途で頓挫してしまうのは実に残念.その意味でアベノミクスの中心課題とはされていない再分配政策がその成功を左右するのかもしれない.
 
 
山本博
日本体育大学体育科准教授/アーチェリー選手
Q2. 「1 - 評価する」の回答理由
とりあえず、不景気が20年継続している日本において、2年前からは復興問題も抱えている今、長期的負債(建前)より本音を優先して景気促進は急務であり社会の実情に即している政策であると同意します。
Q3. コメントする
今後、日本は少子高齢化社会と向き合う先進国となります。ならば、高齢化社会における医療・介護・労働に関するビジネスプランを世界に配信する先進国をめざす。
Q4. 現状よりも良くなる
景気は恐ろしいほどに、人々の心の気(気分)に左右されるものであり、現実的に安部政権後の株価は10000円台の上が当たり前になってしまいました。
今後、夏の参議委員選挙において自民党が大勝したならば、年末にかけて株価は11000円は確保されて推移すると予想します。
長年続いた自民党政権に嫌気を感じた国民が、民主党に政権を預けたが、結果は自民党以上の悪政であった。そして、再び自民党に政治を委ねたが、その真意は、だめもとの思いで投票した有権者が多いと推測します。
だからこそ、自民党議員はその民意を真摯に受けとめて、誠実に国民に向き合う政治をしたならば旧態の自民党と異なった新たな自民党として評価されるものとなる。まずは、いち早く実体経済に反映できる政治をすることである。
 
 
経沢香保子
トレンダーズ株式会社代表取締役社長
Q2. 「1 - 評価する」の回答理由
久々に好意的に受け入れられ期待されていることを市場などでも現れたので。
Q3. コメントする
具体的な成長戦略としては、短期的には女性活用と海外市場がメインテーマ。
中長期的には教育改革だと思っています。

特に女性活用について、女性リーダーの創出と仕事と育児が本当に両立できる環
境整備だと思っています。
女性リーダーの創出については、女性役員が半数以上の会社の法人税を減額する
などの、結果を出している女性経営者、女性を活用して結果をだしている企業に
対して何かサポートがあると、女性役員の選出機会も増えると考えています。
また、育児と仕事の両立環境整備については、保育園の整備はもちろんですが、
香港のようにフィリピン人女性など外国人労働者の受け入れ規制を撤廃し、家政
婦を安く雇えるようにすれば、積極的な女性が社会でリーダーシップを取り始め
ることによって変わってくると思います。とくにフィリピン人女性は英語もしゃ
べれるので、教育的にもすごくいいと思います。

日本は先進国の中でも一番女性が高等教育をうけていますが、それが十分力を発
揮できていない国だと思いますので、団塊ジュニアである世代の女性の生き方を
変えることもしくは選択肢を増やすことで、将来の日本のあり方は少しづつ変わっ
てくると考えています。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
具体的な成長戦略しだいだけれども、経済は少しづつよくなるといいと個人的に
も期待しています。
 
 
中津孝司
大阪商業大学総合経営学部教授,国際問題評論家
Q2. 「1 - 評価する」の回答理由
円高是正を訴えて、それを実現できたのは何よりの成果である。欧米の株式相場上昇の波にも乗って、日本株が見直されている。資産インフレを通じたデフレ脱却という方法は正しい。
 今後の政策と取り組みを提示しただけで、具体的な成果・結果は不透明なので、この段階で評価するのは時期尚早だが、方向性は正しいだろう。
 大震災後の苦境から未だ脱出できていない日本経済は現在、非常時にある。非常事態であるわけだから、日本銀行に政治的圧力を行使して、金融緩和の実施・継続を働きかけるのは当然である。日銀は短期国債を長期国債に転換すること、あるいは、いわゆるリスク資産を大量に購入すること、あるいは、地方銀行も含めた金融機関の株式を保有するといった追加金融緩和を視野に入れるべきだろう。資産インフレをベースとしたデフレ脱却を目指すべきである。
 財政出動に関しては、予算制約がハードであるにもかかわらず、思い切った予算を積み上げたのではないか。公共投資に対する批判は根強いが、即効性を考慮すると、非常時では致し方ないだろう。ただ、消費税率引き上げの時期には財政規律を死守する方向に転換しなければならない。それまでにデフレ脱却を実現しなければならない。
 但し、成長戦略については今後の課題である。この際、その課題の方向性を明示しておきたい。
 農業部門と医療部門とが規制緩和の鍵になる。農協と日本医師会は規制緩和に反対する抵抗勢力。双方をまず、解体しなければならない。その上で新規参入の道を開くべきである。
 農業部門に関しては、外国の穀物メジャーによる大規模投資で効率の向上を図らねばならない。農業の大規模化を通じて、日本農業の再生を探る方法を探るべきである。
 医療についても、外国系の医療団体、病院との提携を通じて、突破口を開く必要がある。
 日本は長年、貿易立国化を標榜してきた。グローバル時代と言いながら、内なるグローバル化に背を向けてはなるまい。自由貿易協定や経済連携協定の締結は日本経済の成長にとって不可欠の要素である。環太平洋経済連携協定(TPP)はその一部に過ぎない。
 オバマ米政権は日本のTPP参加を促していると聞く。日米安全保障条約を根拠に尖閣諸島防衛を米軍に依存するのであれば、ホワイトハウスが要請するTPP参加は日本の責務となる。ただ乗りや食い逃げは通用しない。
Q3. コメントする
 上記の規制緩和について触れた内容のとおりである。新規参入を促進するために、規制を撤廃し、政府は抵抗勢力と向き合っていかなければならない。参議院選挙直後には具体的な抵抗勢力壊滅戦略を明示すべきである。必要とされない人間はこの世に存在しないが、役割を終えた組織は数多く存在する。役割を終えた組織は社会から退場しなければならない。そうでないと、資源配分の効率性が損なわれてしまう。
Q4. 現状よりも良くなる
 円高是正による株高、不動産高が必ず進展する。まずは増収増益を達成した大手企業が賃金の大幅引き上げに踏み切れば、消費を底支えするだろう。もちろん、企業は設備の更新を怠ってはならない。利益の還元を通じた消費と投資の増加によって今年の日本経済は復活を遂げる。欧米経済が落ち着いてきたことも相まって、日経平均は1万5000円を目指す展開となろう。
 
 
熊谷亮丸
大和総研チーフエコノミスト
Q2. 「1 - 評価する」の回答理由
「アベノミクス」はきわめて真っ当な経済政策である。

過去の景気回復局面を検証すると、「(1)企業の売上高増加→(2)個人の所得増加→(3)物価上昇(デフレ脱却)」の3ステップの存在が確認できる。その意味で、まず円安・株高などを通じて(1)を目指す、「アベノミクス」の基本的な方向性は正しい。逆に、一部の政党や経済評論家などが主張する、「最初に『(2)個人所得』を上げろ」という主張は大間違いである。

事実、長期的に見て、わが国の「労働分配率(=雇用者所得÷国民所得)」が下がっていない。個人の所得が伸びないのは、企業がお金をくすねている訳ではなく、(分母の)経済自体が伸びていないことに原因がある。

他方で、「アベノミクス」は、「財政規律の維持」と「中長期的な成長戦略の実施(規制緩和、TPP等)」の2点が最大の課題となろう。
Q3. コメントを控える
Q4. 現状よりも良くなる
2013年の日本経済は、
①円安や海外経済回復を受けた輸出の増加、
②復興需要や大型補正予算による景気下支え効果、
③日銀による追加金融緩和が予想されることなどから、
着実な回復軌道を辿る見通し。
 
 
武貞秀士
拓殖大学大学院特任教授
Q2. 「1 - 評価する」の回答理由
安倍政権は、日本経済が成長路線を歩むための政策をさらに具体化した上で、大胆かつ迅速に実行に移して、「復活の10年」といわれる時代の始まりにしていただきたい。
 12月の総選挙が終わり、第二次安倍内閣は発足した直後に、三本の矢、すなわち「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」という経済政策構想を打ち出した。きわめて迅速だった。日本の危機的状況を考えると、この迅速さは大事だ。そして、物価上昇率を前年比2%に引き上げる目標を設定して、早期実現を目指すことを明記し、政府と日銀の政策連携強化のための共同声明を1月22日に発表した。このように迅速に政策構想を打ち出している。「機動的な財政出動」では、1月15日に「復興・防災対策」「成長による富の創出」「暮らしの安心・地域の活性化」の3つを重点分野とした緊急経済対策を打ち出し、補正予算(13.1兆円)を閣議決定した。「民間投資を喚起する成長戦略」としては、「日本経済再生本部」のもとに「産業競争力会議」を発足させ、今年6月、すなわち参議院選挙前までに、2030年、日本社会のあるべき姿を描いた上で、「国民の健康寿命の延伸」「グリーンで経済的なエネルギー需給の実現」「安全・便利で経済的な次世代インフラの構築」「世界を惹きつける地域資源」の4つの分野を戦略目標とする成長戦略を策定するそうだ。長期的な視野も備わっている。
 国会の所信表明演説や質疑を聞いていて思うのは、安倍首相の言葉から「このままでは日本はダメになる」という危機感を感じ取ることができることだ。そのとおりだと思う。日本の経済は時間との勝負であり、日本再建のための経済政策があと一年遅れたら、大事な国内の人材や工場は海外に逃げてしまい、日本は再建できなくなる。このように矢継ぎ早に政策構想を打ち出していることに対して、市場は好感をもって見ており、株価は大幅に続伸し、円高が急速に是正されている。この2か月の市場の変化を見て、誰も批判することはできないはずだ。日本政府が円安を誘導しているというとんでもない誤解が世界に片隅でささやかれているが、安倍政権が長期戦略に基づいて迅速に政策構想を打ち出した結果、市場が反応しただけであり、これまでとんでもない円高を放置して、自国の輸出産業の春を謳歌していた国々がいま円安に文句をつけるのは誤りだ。
Q3. コメントする
 いまは安倍政権が政策構想を打ち出した段階なので、構想が実際の政策として打ち出されてきたときどうなるか。また、今後、円安が進むことによって、日本が輸入する資源、石油などが割高になる。このことによって生産コストが上がるというマイナス面をどう克服するかという問題を解決しなければならない。また、2パーセントのインフレを実現したあと、労働者の現在の実質賃金をどう維持するかも課題だろう。
 では日本はどうすれば経済成長をできるだろうか。
 第1に、円高により日本の財産である輸出産業が海外市場で苦戦することになり、輸出産業の業績は悪化してきた。いまの円安の流れが持続することを期待したい。1ドル100円を目安にしたいものだ。これは、他のさまざまな要素が絡むので、日本政府が誘導できるものではないので、1ドル100円になるように、市場が動くような政策を繰り出してゆくという意味であるが。
 第2に、経済成長を維持するために、「脱中国」をめざす。過度に中国に依存することは是正すべきだ。中国は日本にとってかけがえのない友好国であることは事実だが、日本は「日中関係が悪化すれば日本経済が倒れる」という状態を放置してしまった。それを知る中国は経済問題を、対日戦略に活用している。中国からの観光客が来なければ経営がなりたたない観光業界であってはならない。中国が資源の輸出を制限したら、日本の会社の生産活動に支障が起きることがあってはならない。中国からの留学生が来なければ、大学経営がなりたたないという大学であってはならない。中国が輸入を制限したら日本の輸出企業の経営が傾くということであってはならない。「脱中国」の産業構造を加速する。そして、ベトナム、インドネシア、インド、フィリピン、豪州、タイ、ミャンマー、モンゴルといった国家との経済協力を強化してゆく。そのためにもTPPには加入する。
 第3に、日本人が苦労して完成してきた工業技術を安易に海外に移転したり、技術を売却したりしてはいけない。鉄道技術、モノレール技術、コンピューター技術など、日本は大事な技術を安易に海外に譲ってしまった。それらの国は今度は「自国独自の技術」として活用しつつ、輸出産業を育成している。そのことは日本企業が世界で競争力を失ってゆく原因のひとつになった。可能な部門はできるだけ日本国内に工場を作り、日本人を雇用するようにしたい。
 第4に、経済成長を持続するために、国際社会で尊敬される国家でありたい。そのために安全保障分野で責任を果たすことが重要だ。安保と経済をリンクさせる戦略を推進する。安保と経済は別個のものではない。中国はなぜ簡単にレアアースの輸出制限をしたり、輸入品の検査を厳格化したりして、「中国式非関税障壁」を日本に対して駆使しているのだろうか。それは日本が国際社会での影響力を低下させてきたので、少々手荒な対日経済政策をとっても大丈夫と考えたからだろう。慰安婦問題、円安に関する日本政府操作説、国連安保理事国入り問題など、国際社会で日本への理解や支持が不十分であったり、日本が「イジメ」にあったりするのは、日本の政治的影響力が不足しているからであり、安全保障分野での役割が見えないからである。李明博大統領が的確に指摘したように、日本の国際社会での影響力が以前ほどでなくなっているので、各国は日本を軽視して日本に対して強い姿勢をとるようになっているのである。強い防衛力を持って、国連の場で積極的に発言をして、国際テロリズム防止の分野で日本が積極的に関与し、国際紛争に対して積極的な仲介の労をとるという国家になって、国際責任を果たす国家になるのであれば、アジア諸国は日本を尊敬するようになり、経済関係に好影響を及ぼすだろう。
Q4. 現状よりも良くなる
「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」という三本の矢を準備した。これは短期的な構想ではない。大胆であり機動力を駆使して、民間の活力重視という政策であるので、これからの1年は好結果を生み続け、経済の回復基調は持続する。ただし肝心なことは、この回復基調を、10年間持続することだ。日本の経済戦略、防衛戦略、外交戦略は、10年間は同じ方針を続けなければならない。なぜ10年なのか。米国のオバマ政権は8年間続く。韓国の政権は5年任期だが、与党、野党の政権は10年続くことが多い。短命政権は百害あって一利なしである。日本が「失われた10年」で失ったものを取り返すには10年はかかるだろう。10年は持続する長期戦略をたてて、4本目、5本目の矢を放っていただきたい。
 
 
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2. まあ評価する

永濱利廣
(株)第一生命経済研究所 経済調査部主席エコノミスト
Q2. 「2 - まあ評価する」の回答理由
失われた二十年の最も大きな課題の一つであった金融政策にメスを入れたため。
財政規律の部分や経済連携協定の遅れなど懸念すべき点も散見されるが、海外の有力な学者からも概ね高評価を受けている。
失われた二十年の最も大きな課題の一つであった金融政策にメスを入れたため。
財政規律の部分や経済連携協定の遅れなど懸念すべき点も散見されるが、海外の有力な学者からも概ね高評価を受けている。
Q3. コメントする
基本的に産業の6重苦が解消できれば、他国のように人口減少の下でもそれなりに経済成長できる。その意味では、国内企業を同じスタートラインに立たせるために、金融政策以外の面でも経済連携協定や税制、エネルギー政策、規制緩和などグローバルスタンダードな政策が必要。
Q4. 現状よりも良くなる
基本的にこれまでに比べてプロビジネスな政策になっているので、政策の実現可能性が大きく低下したり、行き過ぎたりしなければ年内の経済は尻上がりに良くなる。ただ、特に年前半は参院選や消費増税実現に向けて過度な景気対策を行うことも予想され、来年以降の経済の反動には注意が必要。
 
 
森信茂樹
中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員
Q2. 「2 - まあ評価する」の回答理由
期待が先行しているが、実際に円安になり株も上がっている。それ自体は評価すべき。
Q3. コメントする
最大の成長戦略は、女性パワーの活用。そのためには、「配偶者控除の廃止」とその財源を使っての「子育て支援」のセット政策。

1980年には、先進諸国で、「女性の労働力率が高いほど出生率は低く」なっていた。つまり女性が働く比率が高い国は出生率が低かった。しかし、20年後の2000年を見ると、「女性の働く比率が高い国ほど出生率も高く」なった。一方わが国の20年間の推移は、「女性労働力率は上昇したが、出生率は低下した」。

女性の労働力率が増えるにつれて出生率を上げていくためには、公的な制度、企業の支援、家庭における夫の役割の見直しの3つが必要。

そのためには、女性労働に不利な配偶者控除を廃止して、その財源(およそ6000億円)を子育て支援に向けるべき。これこそ一丁目一番地の成長戦略だ。

安倍政権にできるかどうか、真価が問われる。
Q4. 現状よりも良くなる
補正予算効果に加えて、秋口から消費税率の引き上げ前倒し効果も出てくるので、今年度は高い経済成長が予想される。
問題は8%引き上げの後の14年度経済。
 
 
沈才彬
多摩大学大学院フェロー(中国ビジネス研究所代表)
Q2. 「2 - まあ評価する」の回答理由
 過去1週間、講演を2回こなした。1回は個人投資家向けの講演会で、出席者の顔は明るい。アベノミクスの円安株高対策で、投資者たちは利益を得ているからである。別の講演会は労働組合主催のもので、出席者の顔は暗くはないが、投資者に比べれば明るさが明らかに劣る。企業関係者はアベノミクスから目に見える恩恵をまだ受けていないためだ。こうした違う反応から、国民のアベノミクスに対する評価がわかってくる。つまり、とりあえず評価するが、本当に経済を再生できるかどうか、国民に目に見える実利をもたらすことができるかどうかは、検証する時間が必要だ。
 個人的には基本的には評価する。長引く不景気に喘ぐ悲観論を払しょくするには、根拠ある楽観論が不可欠だ。アベノミクスは確かに完璧ではないが、国民に希望を与える意味では評価すべきである。1960年代の池田内閣の国民所得倍増計画も、発表当初は完璧なものではなかった。しかし、結果的には経済成長加速のきっかけを作ったのである。今回のアベノミクスもぜひ経済再生のきっかけになってほしい。
 ただし、2つのことが懸念される。1つは予算増額による政務債務の悪化だ。欧州債務危機に示すように、日本の財政は本当に大丈夫なのか?2つ目は円安誘導政策は国際的反発を引き起こすことだ。ドイツ首相が既に懸念を表明。今年のG20金融サミットでは、日本は批判・非難されるのではないか。この2点について、政府は国民に対し、国際に対し、きちんと説明責任を果たさなければならない。
Q3. コメントする
 経済再生には平和的な国際環境が不可欠だ。日本の国益と安全・保障を考えれば、アメリカと親しく、中国と仲良くという「親米睦中」戦略が望ましい。
Q4. 現状よりも良くなる
 多分、短期的には景気が良くなると思う。ただし、消費税増税後、成長の勢いが継続するか止まるかは予測が難しい。
 
 
岸本裕紀子
エッセイスト,政治コラムニスト
Q2. 「2 - まあ評価する」の回答理由
アベノミクスが素早くスタートを切り、日本の経済に対して、これまでの重苦しく停滞した気分が薄れ、これから好転するかも、と人々がちょっと期待していることに対しての評価です。
しかしながら、これらは気分とか、時代の空気といったものであって、実際まだ経済が力強く動き始めたわけではないのは事実です。
公共事業は復活するようだけれど、古くなったインフラの補修など必要なものを除いて、果たして相変わらずの公共事業頼みで経済活性化が図れるのか、TPPなど意見が分かれる問題に対してはどう対処するのか、雇用の拡大や非正規社員の待遇改善にについては具体的にどうするのかなど、課題は多いと思います。
あくまで素人考えですが、財政的には従来の自民党的な色彩を残し、また産業競争力会議や成長戦略に見られるような競争社会推進、など、この政権は経済政策ににおいて、既存の価値観と新しい価値観を共存させているように映ります。が、時間がたつにつれて、両者の対立、矛盾が出てくるようにも感じます。
また、今回のアベノミクスは夏の参議院選挙に向けた短期的に結果が出るものに主眼を置いているといわれていますが、人口が減少していく日本で、長期的にはどのような経済戦略が可能なのか、もっといえば、どのような成長の仕方、どのような社会が理想的なのかは見えてきません。
Q3. コメントを控える
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
円安・ドル高で、輸出はある程度伸びるでしょう。
しかしながら、輸入物価は上がります。食品、燃料価格、など、それが身近のモノの価格にはねかえってくるでしょう。長く続いたデフレは日本経済全体にとっては大問題でしたが、一方で、国民ひとりひとりは、ワンコインランチなどデフレ的経済、というより「デフレ的消費」に慣れて、それを楽しんでいた面もあると思います。
経済が動くことで、そういった国民の意識がどう変わるかはわかりません。
 
 
潮匡人
国際安全保障学者,拓殖大学客員教授
Q2. 「2 - まあ評価する」の回答理由
株価などの数字をみても「これまでの」結果は歴然としている。緊急避難的な措置として評価されてしかるべき。ただし今後は別問題。財政規律や輸入コストなどの不安もある。そもそも(市場ではなく)政府の「大胆な」措置に依拠する姿勢は、保守的・自由主義的でない。
Q3. コメントする
やはり民間が頑張るしかない。自由主義陣営の政府は、規制緩和や税制改正などで民間を支援すべき。それを前提に蛇足ながら私の専門分野で言えば、防衛産業の裾野は広い。政府が「武器輸出3原則等」の制限を全面緩和すれば、莫大な経済効果が期待できる。日本の防衛産業の基盤育成も図るべき。
Q4. 現状よりも良くなる
すでに良くなっているのだから、今後も良くなると予測するのが妥当ではないかと思う。ただし、国債の格付けが下がり「日本売り」が始まるなどの経済リスクに加え、夏の参院選を含む政治リスクもある。総理の靖国参拝による日中関係の悪化というリスクも無視できない。
 
 
渋谷和宏
作家・経済ジャーナリスト
Q2. 「2 - まあ評価する」の回答理由
 企業経営者や投資家のマインドを前向きに変えた点では安倍政権のこれまでの取り組みを評価したい。しかし実体経済を活性化しなければ、失望を招きかねない。
 景気の気は気分の気とも言います。円安は明らかにその気分を変え、先々への期待を喚起しました。経済活動とは企業経営者や投資家のマインドの函数であり、マインドの好転がもたらす実体経済への好影響は小さくはありません。
 とはいえ期待はあくまで期待に過ぎません。とりわけアベノミクスの第一の矢である「大胆な金融緩和」には過剰な期待を煽っている面があり、期待はずれのリスクと表裏一体です。政府・日銀が共同文書で発表した2%の物価上昇率目標の実現は容易ではありませんし、円安による輸出企業の業績改善が設備投資を増やし、賃上げや雇用増をもたらすまでには2~3年はかかります。その間に実体経済に点火する二番目のロケットを放たなければ、失望がマインドを凍らせてしまうでしょう。
Q3. コメントする
 今年1月15日、興味深いニュースが報じられました。コメダ珈琲店を展開するコメダがアジア投資系ファンドに買収されるとの報道です。買収の狙いは詳らかにはされていませんが、モーニングサービスで成功した名古屋発の喫茶店の海外展開を目論んでの買収だと私は見ています。
 推察が当たっているかどうかはともかく、日本国内では店舗数を減らし“絶滅危惧業種”と言っても過言ではない喫茶店も、海外の投資ファンドの目で見れば高い国際競争力を秘めている、この事実はとても重要だと思います。
 なぜなら、そのような産業・業種は喫茶店だけではないからです。環境や素材、観光以外にも、日本には高い国際競争力を秘めた産業・業種が多々あるはずです。
 外資系ファンドの目になって――つまり国内での常識にとらわれず、それらを発掘し、国が資金や情報提供、リスク管理などの面で支援する――このような成長戦略こそいま求められているのではないでしょうか。
Q4. 回答を控える
 
 
朴斗鎮
コリア国際研究所所長
Q2. 「2 - まあ評価する」の回答理由
デフレ克服を当面の経済政策の中心に据え、その克服策として「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」という3つの矢を明示し、何をやるのかを内外に示すことでモヤモヤ感を払拭したことは評価できる。円安と株価の上昇は、市場もこれを歓迎している証だろう。
しかし、ここまでは、過去20年間にやってきた政策の範囲である。日本はここから前に進めなかった。特に経済成長による「財政の健全化」が実現できなかった。
そういった意味で、安倍政権のデフレ克服政策の評価はこれからだ。経済成長が伴わなければ通貨だけが市場にあふれ、インフレに歯止めが利かなくなる危険もある。こうなれば国民はハイパーインフレと消費税引き上げのダブルパンチを食らうことになる。
Q3. コメントする
いま、安倍政権がやらなければならない成長戦略は一言で言って、古い産業構造を破壊して新しい産業構造を作り出し、そしてそれを世界経済と結びつけることである。日本は過去20年間、それを求められていたが、政治の遅れと不安定が足かせとなり十分に実現できなかった。
過去の産業で需要を作り出す景気浮揚策では世界における日本の地位は取り戻せない。そういった意味では新しいビジョンと開かれた世界戦略が必要だ。
電力をはじめとしたさまざまな分野の規制緩和、先端未来産業への集中投資、農業の再編と先進化、少子化対策、TPPへの主導的参加などを果敢に行なう必要がある。成長を促進するためにはこうした分野の減税策を検討してもよいのではないだろうか。
特にさまざまな分野の規制緩和とTPPへの参加はぜひ急いでほしい。そうしてこそ今回の金融緩和と財政出動政策が過去の政策と差別化される。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
答えを出すには早すぎる。
 
 
クロサカタツヤ
株式会社 企 代表取締役/ 総務省情報通信政策研究所コンサルティングフェロー
Q2. 「2 - まあ評価する」の回答理由
景気は気分、気分がよくなった功績は評価されるべき
景気の主な成分は〈気分〉だと考えれば、気分がよくなったというのはそれだけで功績だと言えます。

実際それは過去数年成し遂げられなかったことでもあり、また単に政権交代すれば気分がよくなるというわけでもありません。

選挙前からここに至るまで、新政権は着実かつ謙虚に、国民とのコミュニケーションを重ねてきていると思います。「自民党は反省したんだな」という印象を抱かせるのに十分であり、その安心感が広がっているのではないかと思います。
Q3. コメントする
有機的な成長(オーガニックグロース)の機会に乏しい先進国の経済成長には、無駄や非合理性が必要です。

民主主義を前提とした自由主義経済の社会において、合理性とは多数決の結果であることが多く、効率化はその観点で行われます。しかしそれを突き詰めると、自らが属するエコノミー(産業や企業)の利己的な効率化競争が加速し、社会全体の経済的な循環は悪化するはずです。

そうした予定調和的かつ縮小均衡に進みがちな経済社会構造をシャッフルするには、合理性の裏側にある価値観、すなわち「誰が何と言おうと私はこれをしたいんだ」という生産と消費の行動を、経済社会の仕組みとして肯定することが、必要となります。

ただ、これを機能させるためには、再配分のロジックや説明がきちんと成立することが、必須条件です。たとえば「仮に日本社会全体の観点からすれば無駄であっても、私はこの土地に住みたいんだ」と考える人がいたとします。その人に対して、かかるコストをすべて負担させるように仕向けては、「この土地に住みたい」という思いを、事実上否定していることになります。

こうした希望を少しでも実現させていくためには、どのコストをどのように社会で負担していくのか、という議論と、その帰結としての合意形成が、不可欠です。それは、政治の営みそのものであると言えます。

そう考えると、日本の経済成長にとって必要なのは、実は「政治の信頼回復」なのかもしれません。
Q4. 現状よりも良くなる
2013年は、少なくとも夏の終わりくらいまでは、経済的にはいい状態だと思います。

補正予算も含め、これだけ大型の財政出動が組まれていて、それで経済が沈むとなれば、それはこの国の機構そのものがボロボロになっているということを意味しますが、日本はまだそこまでには至っていないはずです。

ただ問題はその先です。たとえばいま円安で輸出関連企業の業績が軒並み急回復しています。この利益を何に使うかが、この先の経済を決めることになります。

投資、生産、雇用の拡大に充てれば、景気は拡大するでしょう。一方、引当金なども含めたリストラ費用にあてれば、短期的には経済はしぼんでしまうでしょう。

そう考えれば、前者に使うべきだと考えるのが妥当に見えます。確かに経済は生き物であり、生き物は日々の積み重ねで生きている以上、ここで冷や水をかけるのは愚かな話です。しかし後者を進めて、一層の体質改善・強化を進めておかなければ、先々の成長機会が奪われるとも言えます。

こうした判断は、もはや個別のセクターや企業ごとで、判断が大きく異なるはずです。ただ、特に消費に大きな影響を与える、雇用という観点に絞れば、たとえば関連産業も含めて大きな雇用を支えている家電メーカーの直前までの業績不振は、もはや円安で一瞬利益が出たことで回復できるような、甘い状況ではありません。端的に言って「売りたくても商品を作れない」という状況まで、追い込まれている大手企業もあります。そういったところでは、残念ですがリストラ(撤退)費用として、使わなければならないでしょう。

ある面では撤退を進め、ある面では外需の掘り起こしを目指し、財政出動の影響が相対的に小さい、いわば純度の高い民間部門を、いかに伸ばしていくか。いろいろな矛盾と、過去10年以上の停滞による負債の清算を抱えながら、前に進まなければいけないのが、この先の日本だといえます。その準備をどれだけやりきれるかが、2013年の本当の課題だと、思っています。
 
 
細川昌彦
中部大学教授
Q2. 「2 - まあ評価する」の回答理由
社会の「空気」が閉塞感から変わったことは評価すべき。「スピード感」と「実行力」を印象づけるのに一応成功。「為替と株価」というマーケットの評価、結果が大事。
問題はこれから.「三の矢」の成長戦略は既得権、抵抗勢力との対峙が不可避で正念場。
経済界をはじめ社会の「空気」が、昨年までの閉塞感からはっきりと変わったことは評価すべき。「スピード感」と「実行力」を印象づけるのに成功している。
まず「為替と株価」というマーケットの評価、結果が大事。
政治とはプライオリティづけ。「経済の危機突破」が最重要課題ならば、その解決に伴って当然生じるマイナス、問題点(日銀の独立性、財政規律など)をこの時点であげつらうことは意味がない。

問題はこれから。
金融緩和、財政出動という「一の矢」「二の矢」の短期対策は日銀、財政当局が相手で、追い込めた。特に財務省は至上命題の消費税引き上げのために思惑が一致
それに対して、これからの「三の矢」の成長戦略は規制緩和、TPP,法人税減税など既得権、抵抗勢力との対峙が不可避。調整に時間も要する。特に農業、医療など自民党の支持母体もあって、参院選までは進展を期待できない。
雇用、所得といった「国民が実感できる」経済の再生にまで波及するまでタイムラグがあるが、その間、期待を維持できるよう、その他の分野で具体的打ち手を繰り出し続けられるかがポイント。

まさにこれからが正念場で、アベノミクス全体の評価を下すのはまだ早い。
Q3. コメントする
① 「6重苦の解消」は成長戦略の本丸。これ抜きでは画竜点睛を欠く。最大の成長阻害要因は日本企業が国際的に対等の場で戦えていないこと。
特にTPP,への参加、法人税の引き下げは調整に政治的エネルギーと知恵を要する問題(農業団体の抵抗にどう対応するか、財務省の硬直的な税の論理にどう向き合うか)。

② 農業の構造改革(一律の生産調整による弊害、農地法の新規参入規制、農協問題、6次産業化)

③ 医療改革
社会保障の一体改革では「入」だけで、「出」は手付かず。今後医療費削減のためには健康、リハビリ関連産業など、の成長が重要

④ 規制改革
市場を作り、産業を育てるうえで有効な戦略分野で、海外と比較して日本の規制が問題なもの。例えば

1 再生医療、医療機器産業を育てるため、大きな制約要因になっている薬事法の規制緩和を大胆に行う(早期承認制度の導入など)。
2 省エネ産業を育てるため、住宅・ビルの省エネ基準を国際的に見劣りしない水準に早急に引き上げて義務付けする

⑤ 従来型公共事業から脱皮して、「次世代型社会インフラ」にする。例えば、
1インフラの老朽化対策、長寿命化のための材料革命(防腐食、防錆)
2エネルギー・インフラの整備(天然ガスパイプライン、超伝導による送電網)


⑥ 人材戦略
日本の成長にとって人材は最大の武器との認識が必要。
日本のイノベーションに不可欠な研究人材を確保するため、大学教育の国際競争力のテコ入れが必要。
活用されていない人材は女性。制度的に企業へのインセンティブを工夫すべき。


なお、ターゲティングという言葉を聞いて、あたかも国が特定の産業に資源投入を集中するかの誤解をしている人もいるので、この用語は使わない方が良い。
またこれまでも数多く成長戦略が作られてきたが、同じ轍を踏まないよう、フォローアップ体制を役人任せにしない。、
Q4. 現状よりも良くなる
今年に関しては、限定的であっても、財政出動のカンフル剤としての効果も出てこよう。4-6月期がそこそこで、消費税導入になれば、駆け込み需要も出てくる。
問題は来年春以降の反動減が予想されること。
 
 
土居丈朗
慶應義塾大学経済学部教授
Q2. 「2 - まあ評価する」の回答理由
インフレ目標を掲げた金融緩和政策は評価できる。財政出動は頂けないが、平成25年度予算案では財政収支が悪化するのをかろうじて踏みとどめた。あとは、成長戦略をどのように構築するか次第である。
参議院選挙を意識して、今後夏まではメリハリの効いた政策スタンスは期待できないが、参議院選挙後にはTPP交渉参加を含めて成長戦略の具体策の着手が求められる。
Q3. コメントする
金融緩和と財政健全化の組み合わせで、将来の財政金融政策に関するスタンスにコミットして、政策の不確実性すなわち政治的リスクを低くした上で、衰退産業保護をなくすことで、経済成長は結果的に促されることになると考える。

そもそも、政府が経済成長を直接的に促すことはできない。政府にできることは、経済成長を阻害している要因を取り除くことである。もちろん、阻害要因を取り除くだけでも現状よりはよくなるから、それが成長促進と認識されるかもしれないが、それはそれでよい。

特に、政治的に克服すべきことが多いのは、衰退産業保護であろう。さらには、「ゾンビ企業」を淘汰することも、成長阻害要因を除去することに寄与するだろう。そうした産業に従事している労働者には、適切な補償と職業訓練によって、他産業への移動をお願いすることが重要である。そうすることで、こうした労働者の所得も増加するだろう。
Q4. 現状よりも良くなる
もし金融緩和政策が功を奏せば、来年度からの消費税増税も予定通り実施でき、今年より来年は物価が上昇するという期待(予想)が人々の間で高まってくるだろう。そうなれば、仮に所得が増えなくても物価が上がる前に消費をしておこうとして消費の前倒し効果が生じ、GDPを押し上げる効果が期待できる。
 
 
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3. あまり評価しない

本田宏
医療制度研究会副理事長
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
 インフレ目標を掲げる経済成長理論は一見正しく見えるが、現実には最低賃金アップではなく消費増税・生活保護給付削減が選択された。これでは国内経済活性化は絵に描いた餅だ。持続的な強い経済成長を目指すなら格差拡大にこそ強力な歯止めをかけるべき。
 インフレ目標を掲げる経済成長理論は一見正しく見えるが、現実には最低賃金アップではなく消費増税・生活保護給付削減が選択された。これでは国内経済活性化は絵に描いた餅だ。持続的な強い経済成長を目指すなら格差拡大にこそ強力な歯止めをかけるべき。
Q3. コメントする
①世界の地震&津波大国の日本こそ、脱原発による新エネルギー開発、エネルギーの地産地消に力を注ぐべき。目先の経済最優先で原発を再開し、核燃料廃棄物をこれ以上増大させることは、長期的に大きな負債を積み増しているのと同じ。
②医療費亡国論で医療が疎んじられ先進国最低の医療費と医師数となった日本。iPS細胞が世界で認められて、ようやく医療分野が成長産業として認められるようになった。世界は日本が今後いかに超高齢化社会を乗り切るか固唾をのんで注目している。iPS細胞だけでなく、高齢化を乗り切るためには多くの新技術が産まれる可能性が高い。そのためには医療や介護現場のマンパワー増員を可能とする予算配分が必須だ。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
 一時的には経済が回復する可能性はあるだろうが、残念ながらアベノミクスに大きな影響力を持つのは、官と大企業と米国だ。格差拡大が問題になっている米国を見れば明らかだが、政策立案に影響力を持つ者がさらに富み、貧富の格差はさらに拡大する危険性が高い。加えてすでにその兆候が見られるが、国民の不満を領土問題等に振り向けて覆い隠そうという動きが現れている、社会が不安定になる危険性が高いことを懸念する。
 
 
浜辺陽一郎
青山学院大学大学院法務研究科(法科大学院) 教授,弁護士
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
成長戦略についての具体的な方策が今一つ伝わってこない。たとえば、規制緩和による成長戦略についても、発送電分離に消極的であるかのように報道されていることに象徴されるように、どこまで本気でやろうとしているのか疑問。
「持続的に成長するためには、雇用や賃金を増やすという好循環を生み出していく必要があり、成長戦略が極めて重要だ」という指摘に誰も反対する人はいないだろう。しかし、この点についての具体的な方策が今一つ伝わってこない。

たとえば、規制緩和による成長戦略についても、発送電分離に消極的であるかのように報道されていることに象徴されるように、どこまで本気でやろうとしているのか疑問。

あるいは、ガバナンスを強化するために会社法改正についても、どこまで本気で実行してくれるのか。これについても、先送りかという情報が聞こえている。

肝心の成長戦略が具体化して、それを本気で推進してくれないかぎり、結局、古い既得権益を「弱者」扱いして不当に保護して、他方、一般労働者切り捨てという古い自民党体質そのままということだと、失望感が広がっていき、アベノミクスも破綻してしまう。
Q3. コメントする
エネルギー戦略の立て直しと、新しいエネルギー政策の推進。

医療・介護、法務、金融など、サービス産業の強化のための人材強化と活用。

農業政策の転換、観光産業など、外国人向けビジネスなど。

サプライサイドにおいては、経営者に対するガバナンス強化も必要。

たとえば、日本のモノづくりの技術がすばらしくて、特許取得の件数がいくら多くても、利益に結びつかないのでは意味がない。2011年において特許取得件数の世界のトップ10に入った日本の企業は、パナソニックとシャープだったが、そういう技術力を持っていながら、世界の企業の中で苦戦してしまっているのは、日本企業の状況を端的に物語る。現場で技術者がいくらがんばっても、肝心の経営力で負けてしまっては元も子もない。円高だけではなく、経営者の経営戦略にも重大な疑義を抱かざるを得ない。ここのところをテコ入れしないと、成長戦略も実現できないのではないか。民間企業の問題だからといって、放置しておく時期ではないのではないか。もちろん、経営戦略を支え、実践していく法務・交渉力の強化も不可欠。

一方、消費する人口が減っていくばかりでは、経済のパイは小さくなるばかり。かといって少子化対策も限界がある中で、外国人の積極的な受け入れも考えることが必要。優秀な外国人に限らず、移民を積極的に受け入れる方向で考えることがなければ、もう日本人だけでやるのは限界がある。むしろ、外国人を入れて日本自身がグローバル化する中で、日本が世界により広がっていくチャンスが生まれるのではないだろうか。
Q4. 現状と変わらない
日本だけの問題ではない。世界の経済はすべてつながっている。米国、EU、東南アジアの経済がどうなるかともからんでいるので、予測は困難で、今年も一寸先は闇の難しい時代が続きそう。

ただ、現状より悪くならないことを期待しつつ、変わらないレベルにとどまれば、とりあえず良しとすべきでは。

ぐずぐずして成長戦略が示せなければ、財政赤字の拡大に伴って、さらに危機的な状況に陥る危険性がある。そのあたりは夏あたりの選挙でも、さらに問われることになるので、その成り行きしだいでもある。
 
 
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4. 評価しない

南淵明宏
医療法人社団 冠心会 大崎病院 東京ハートセンター  心臓外科医
Q2. 「4 - 評価しない」の回答理由
国家破滅への壊走にアクセルを踏んだ感がある。国民は移住を検討すべきだ。
評価するも何も、よくわからない。誰しもそうだろう。と同時に「なにかとんでもないことに向かっているのでは・・・」という不安が日に日に増してくる。
具体的なネタなしに、ただ株価を上げる!インフレにする!など嘯いている様はまるで大政翼賛会政治だ。
誰も振り向かないオタク製品の開発でさらにそっぽを向かれているのに気が付かない電化製品産業、表面的な販売増で実のところは究極のコスト削減で自らの首を絞めつけ続ける自動車産業、騙されてカモにされて出し抜かれてピンハネされてばかりいるプラント産業。どこをとっても外貨を稼ぐ術はない。それでどうして株価が上昇しているのか?円が安くなっているのか?実体の産業が改善している現実はないのに、この景気は絶対におかしい、と誰もが感じているはずだ。
これから消費など絶対に伸びるはずがない。それは世代的要因も大きい。バブル後世代の嫌消費次は反消費の世代だ。買わず、群れず、萌ず、の世代に何を買わせるのか?おっさんら!そら無理でっせ!
株価を上げ、円を安くする、それで潤うのはごく一部のお金持ち、つまり有産階級だけだ。
労働者である限り、は株価が上がってその賃金が増える理屈はありえない。電気料金と消費税が上がり、生活は苛烈さを増すだけだ。
時代は脱消費。本当にこんなバカげた絵空事で乗り切れる道理は絶対にない。
近い将来、とんでもない破局的事態がやってくるに違いない。
Q3. コメントする
明治維新のように制度疲弊した社会の構造を根本から変える出来事が起こらない限り、成長分野で傑物が出ても必ず潰される。平和で閉鎖的で安定した社会では大半が危機感を持てず、教育委員会や文部科学省のように「自分達のための自分たちによる自分たちの」組織、機構を死守しようとする。変革の種はその百倍要る無能分子にとって存在自体が罪悪であり、陰湿なpolicingを受けることになる。これはフジテレビでも同じだろう。本当の地獄をまた再び社会の多くの人達が味わうまでは、この国はこのまま衰退するしかない。今回のおぼちゃま政策はその点、良い機会かもしれない。
Q4. 現状よりも悪くなる
どれくらいかわからないが、ある程度は景気は良くなったように見える状況が続くだろう。
ところが何らかの偶発的事件を境に、例えば尖閣事変や東南海地震、火山の噴火、などで一気に国家経済は破綻するのではないか?
そうなっても平気なように、国民は皆とにかく「手に職」をつけることに専念すべきだ。
 
 
小幡績
慶應義塾大学ビジネススクール准教授
Q2. 「4 - 評価しない」の回答理由
短期志向の政策であり、長期的には、日本経済に大きなマイナスの影響を与える
短期志向の政策であり、長期的には、日本経済に大きなマイナスの影響を与えるから。

金融政策に関しては、これまで築き上げてきた中央銀行の信頼性をすべて失わせ、今後、誰が総裁になろうとも、日銀という組織は、職員によって構成させるものであるから、組織として信用できないという国民の認識が定着する。これは国家的な損失である。これに乗じて、今後の日銀総裁や政治家たちが、再びスタンドプレイをすることも予想され、金融政策の国際的な信頼性は大きく傷つけられた。

財政政策については、単なるバラまきであり、これまでが民主党的なバラまきであれば、自民党的な、今までどおりのバラまきを踏襲したということになる。そして、ばら撒きの規模は、野党を経て、これまでの鬱憤の蓄積を吐き出すかのようにさらに拡大している。

よって、国債のリスクは高まり、日本経済自体の長期的な見通しは悪化した。
Q3. コメントする
1500兆と言われる個人金融資産を、1000兆円も政府部門で使っていては(すでに無駄遣いしてしまっていては)、成長するはずがない。

一刻も早く、国債発行を縮小し、その分の資金を民間部門に流し、それが有効なビジネスに投資され、付加価値と成長をもたらすことを願う。

投資が海外に逃げても止むを得ない。付加価値のあるものを作らなければ、世界で売れないし、日本国民、日本全体として利益にならない。雇用を一時的に守っても、翌年から製品が売れなければ、結果的に、雇用も企業も維持できない。

日本企業のノウハウを生かすチャンスがあれば、海外に積極的に投資し、そこへ赴任したり、出張したり、そして、利益を回収して国内に還流したりすることによって、日本の国富を増やしていくしかない。
Q4. 現状よりも悪くなる
短期の果実を求めたものなので、長期には反動が来るから。
 
 
にしゃんた
羽衣国際大学教授/落語家
Q2. 「4 - 評価しない」の回答理由
既にプチバブル?を謳歌している人も現れているようだが、それは円安により、特に、海外ファンドや海外の投資家が勝手にひと儲けしているに過ぎず、これはハゲタカが次の旨みを見つけるまでの時限付きで、あてにしてはいけない。もちろん実態経済を伴っておらず、一般国民には関係もなければ、もちろん安倍効果と勘違いしている場合でもない。現状のデフレスパイラルを絶ち、円安、株高、インフレを目指し、トップダウン、つまりばらまき公共投資や企業優遇政策を打ち出しているアベノミックスだが、効果は言わずと怪しい。小泉・第一次安倍政権時の、「いざなみ景気」は良い教訓ではなかったのか。金融緩和や公共事業により、株価は高騰し、大企業の経常収支が拡大し、GDP2%の経済成長という、史上最長の好景気はあったが、物価は下がった。もっとも、一般の国民が何の恩恵を受けることなく、それどころか、リストラや格差が社会問題化し、無力感が蔓延し、史上最多の自殺者を出した。

改めて本気で思っているか安倍氏に聞きたい。物価が上がって給料も上がるって本当ですか?「給料を上げれば法人税で優遇する」なんて政府は言ったが、財界トップはすぐさま反応して「給料のベースアップは無理。増やすとしてもボーナスで」と公言しているではないか。給料アップは考えにくい。百歩譲ってもし給料が上がったとしても、デフレ脱却出来るとは思わない。消費には向かわず、貯蓄にまわるに決まっている。福祉が貧弱はこの国で安心のために国民は貯金に回すのも仕方がない。アベノミックスは、弱者をやっぱり真っ先に切り捨て、年金は減らされ、生活保護も減らされ、生活に最低必要なものは値上げ…弱者はますます深みに沈んでいく。「アベノミックス」は「小泉ミックス」の再来であり、今回の経済ブレインは小泉政権時代と重複していることが何よりの証だろう。今度こそ、弱者を更に生活苦に追い込み、止めを刺すだろう。

被災地復興支援は別として参議院選挙を目論んでの人気取りの大幅な財政出動の名の大量バラマキは、子孫には膨大な借金を残すだけだろう。
Q3. コメントする
日本は最早「成長国家」ではなく、「成熟国家」であることの自覚し、成熟国家としての方向性を選択すべきだろう。経済成長を目指すなら、国民の健康、安心・安全や環境をキーワードに内需拡大を伴う高福祉国家構造の方向での経済成長を目指すべきだろう。その中で、例えば、いまでは「なあなあ」になっている、移民の受け入れをどうするかを真っ向から議論すべきだろう。

日本の輸出産業を真っ向から否定しているわけではない。でも純輸出は、たかがGDPの1、2%に過ぎないことの自覚、そして既存の輸出産業に対する過剰な依存から解放される必要もあろう。グローバル競争を余儀なくされている産業界は、金融緩和策によって保護されたところで、どうせ、その場凌ぎで将来ビジョンは描けっこない。政策として必要なのは政府からの異常なぐらい低い金利での資金提供ではなく(そうすると戦えず民間ファンドも海外に逃げるに決まっている)、国内外で堂々と戦える力の備わった産業・企業の養成するような規制改革である。国際競争力をもった新たな付加価値を提案できる成長企業の早急な発掘と政府としての後押しが求められる。ついでに政府に頼り過ぎで、甘えすぎの企業にこの場を借りて是非告げたい。今こそ「国が自分たちのためにではなく、自ら国のためになにができるか」の志をかかげよう。
Q4. 現状よりも悪くなる
「笑う人」と「泣く人」がはっきり分かれるシナリオになっている。金融緩和は、少なくともしばらくは海外ファンドや国内の資産持ちを喜ばせることになり、グローバル競争の中で限定的ながらも大企業の売り上げは上向くだろう。そしてバラマキにより建設業の機嫌をとって与党は、参議院選挙も有利に進めるだろう。数字の上では景気が回復したニュースは出回るだろうが、一般国民には関係のない、実感の伴わない結末になるだろう。それどころか、高い輸入依存で支えられている日常の生活必需が円安により値上りし、一般家計は火の車になるだろう。身近なもので、牛肉などはもちろん、ガソリン・灯油も値上がり、そのまま電気代UPにも結びつく。日本でのいつものパターンのように「便乗値上げ」という事態が生じて、なんでもかんでも値上がりする。ワインなどの贅沢品の値段が上がったとまでのわがままじゃなくても、フランチャイズ店の牛丼の値段が上がるか、容量が減らされるとなると我々貧乏人はこれ以上耐えられない。
 
 
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5. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)

山田昌弘
中央大学教授
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
今のところ、中立。
国が需要を作り出しても一時的。
本当に、賃金が上がる、特に、非正規雇用者の賃金が上がる、正社員が増えると言ったことがなければ、結局は需要が増えない。本当に、普通の人の収入が上がるのだろうか?
大学の先生としては、近年、親が学費を払えなくて退学する学生が増えているので、とても気になる。
Q3. コメントする
1.男女共同参画、つまりは、働く女性の増加。
私が、総務省の家計データを分析したところ、フルタイムで働く夫婦の消費力は旺盛である。外食、旅行、被服、小遣い、交際費などが相当増える。
公共事業をするなら、そこで、女性を雇い込み、消費力が旺盛なフルタイム共働き家族を増やすことが、内需復活の鍵である。
共働き率が高い国は、成長力が高く、低い国(イタリア、ギリシア、日本など)は成長力が低く、少子化が生じるのももこの理由から。

2.新しいサービス業の育成
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
素人にはまったく予測がつかない。専門家の意見も割れている。
一種のバブルではないのだろうか? 私の身近な経済学者、投資顧問会社経営者などに聞いても、見解が真っ二つに分かれているので、どう回答しても、結果論になるだろう。
 
 
坂野尚子
株式会社ノンストレス社長
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
ご祝儀もあり、まだ評価する段階ではないように思います。これからです。ただ、スピードが今までより速いのは評価できます。
Q3. コメントする
所得格差を心配し全体で沈没する政策から、とにかく日本全体を牽引し、全体を引っ張っていける成長軸を持っている分野や層にフォーカスすべきです。また、規制緩和を強く求めます。一時期、規制緩和を悪のように言う人たちがいましたが、既得権益を守っていこうとする方々と大声で声をあげる人に錯覚してしまった人がいると思います。実際はビジネスをやっていて、あまりにくだらない規制があるのに長年辟易としてきました。何が大事なのか、それは国全体が復興することだと思います。些末なことに囚われず、大きな幹をしっかり掴む姿勢が大事だと思います。
Q4. 現状よりも良くなる
円安は輸入作物やガソリンの高騰など懸念される面は勿論あります。弊社も輸入していますので、非常に厳しくなることを実感しています。ただ、国全体の経済活性化、再興のためには我慢をしていこうと考えます。目先や自分のことだけで反対するのなら、どんな政策も実行できません。
 
 
原田曜平
博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
回答を控えます。
Q3. コメントする
アジア需要を取り込むことが、今後の日本経済の成長の前提条件になります。
人口が減るわけですから、これ以上内需だけに依存していても、大幅な成長は見込
めません。経済発展を続ける中国13億、ASEAN6億と、日本のお隣には、日本も含め
ると20億人マーケットが存在します。このマーケットは、地理的に日本にとって欧
米企業より圧倒的に有利で、このエリアを掴み続けることができるかどうかが日本
経済の成長のキーになります。

但し、20億人マーケットと言っても、中国にはこじれた日中関係が横たわっていま
すし、中国にもASEANにも大きな格差が存在するので、全員が日本製品、サービスの
ターゲットとはなりません。このうちの、所得がある程度高くて、比較的親日意識
を持っている何割かをがっちり掴むことができれば、今の日本の市場規模を大きく
上回ることができます。
現在、ASEAN諸国に熱心なのは、小売業や自動車業界が中心になっていますが、もっ
と早く、多様な業界が、製造拠点としてだけではなく、市場として考えるようにな
ることが、国を挙げて必要とされていることです。

その際重要なのが、若者の価値観やライフスタイルを徹底的に調べる、ということ
です。中国の10代、20代で約4億人、ASEANも平均年齢が20代ですから、高齢者大国
日本のおじさん発想は捨て去り、日本の若者に権限を移譲し、アジアの若者たちを
掴んでいくことがマストです。
ちなみに、ライバルは、同じく地理的優位性のあるアジア先進国である韓国を中心
に、台湾や大陸の企業になってくると思います。
Q4. 回答を控える
 
 
長田渚左
スポーツジャーナリスト
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
まだスタートしたばかり、評価できるか否かの段階ではない。
Q3. コメントする
ちょっと良さそうに見える成長戦略ほど、危ないものはない。
じっくりみてゆく姿勢がひとりひとりに問われるとおもっている。
正直まだまだ分からない。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
だいたい経済評論家が良いと言ったもので、何年か先にNGの答えが出るものは多い。
全く安心していない。
 
 
ショーン・K
パーソナリティ/タレント
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
モルヒネとしては、いい結果。
期待値を煽っただけ、それ以上でも以下でもない。
モルヒネの効果が切れる前に、実体をつくる必要がある。
Q3. コメントする
日本の中小企業には世界的にも高い技術が多い。日本の高い技術を世界の市場で活かす方法として
『束ねる』という方法がある。たとえば、iPodで一躍有名になった新潟県燕市の
「磨き屋シンジケート」は、中小企業の集合体として、世界中から注文が集まっている。
こうした『束ねる』ことを国や自治体が率先し、支援することが必要。

さらに、

政府や自治体が環境整備として行うべきことは、以下の3つ。
1:産官学の連携促進、支援
2:(政府が)企業の成長を邪魔しない
3:日本企業が開発途上国に進出する際のカントリー・リスク対応支援
1は、企業、行政、大学をこと。これまでにも取り組みはあったが、事業化まで
形になった例は少ない。事業化までたどり着けるように支援を行う。
2は、規制緩和など行い、企業の能動的な活動を行いやすくする。資金繰りを円滑に行えるようにする
ファンドも考えられるが、企業同士が連携しやすい環境をつくる。
3は、個別企業には難しい海外進出を行う易いよう政府が環境整備を行うことで、企業の海外進出を支援。

日本の優れた企業が国内市場で争うのではなく、
市場を拡大していけるようにすることが成長につながる。
Q4. 回答を控える
 
 
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