大奥
第9話 特別篇・怪談凶事を呼ぶ黒紋付の霊あかずの間に染み付いた女たちの悲しき涙
大奥に夏が来た。盆になれば宿下がりで実家に帰る女中が増える。実成院(野際陽子)も瀧山(浅野ゆう子)も、江戸城から出られない和宮(安達祐実)の代参で寺参りに忙しい。そんなある夜、居残った女中たちが座敷に集まっての催しがあり、まる(池脇千鶴)も呼ばれた。
暗い座敷にろうそくの明かりが何本か灯り、それを囲むように女中たちが座っている。一人一つずつ、大奥にまつわる怖い話をし、終ったらろうそくの火を一本吹き消す。そして、消えたろうそくを持って暗い廊下を歩き、開かずの間に置いて戻って来るのだ。葛岡(鷲尾真知子)は、「すべてのろうそくが消えた時、何かが起こる」と言った。
藤波(小松みゆき)は、「駕籠部屋の狐火」という話をした。夜の駕籠部屋で狐火を見た女中が数日後に行方不明になり、やがて駕籠部屋で血まみれの死体で発見された。聞いていた女中たちが悲鳴をあげた。
こうして怪談話が続き、女中たちの悲鳴とともにろうそくが一本、また一本と消えてゆく。最後の一本を前に、「開かずの間の亡霊」を語り始めたのは、涼波(佐藤友紀)というお針子である。十二代将軍・家慶が開かずの間の前に、見慣れない黒紋付の女中が座っているのを見た。それを見たのは家慶ただ一人で、それから数日後、家慶は急に病となり死んだ。語り終えた涼波はろうそくを消し、暗闇の中を開かずの間に向かった。
かなりの時が流れたが、涼波は戻って来ない。まると葛岡たちが開かずの間に探しに行くと、ろうそくの火が灯され、黒紋付を被せられた涼波が胸を刺されて死んでいた。女中たちは、「開かずの間のたたり」と悲鳴を上げた。
翌日、まるは、涼波が働いていた呉服の間のお針子たちの様子を見に行く。すでに、「亡霊が出た」との噂が飛びかっていた。璃玖(松尾れい子)というお針子は、年長の涼波は、お針子たちから姉のように慕われていたと言った。秋には大奥を下がって嫁入りすることが決まり、うれしそうに花嫁衣裳を縫っていたという。
葛岡らは、事件はもののけの仕業だと言ったが、まるは誰かが涼波を殺したのではと疑った。開かずの間に再び入ったまるは、床の隅に金属片があるのを見て拾った。
盆が終わり、瀧山が大奥に戻る日が迫った。留守を預かる葛岡は、事件をどう報告するか焦った。まるは再び呉服の間の璃玖を訪ねる。璃玖は放心したような顔つきで、涼波が残した花嫁衣裳を縫っていた。手にしたハサミの先が欠けていた。
江戸城で花火が打ち上げられる夜。璃玖の姿が見えなくなった。女中たちが探すと、花火の光が望楼の上に女が立っているのを浮かび上がらせた。璃玖だった。まるが望楼を駆け上がる。璃玖は涼波の花嫁衣裳を羽織っていた。その目はもう、常人の目ではない。まるがハサミの破片を見せると、璃玖は涼波を殺したことを認めた。
涼波を姉のように慕ううちに、璃玖は同性愛の対象として涼波を愛するようになっていた。そして、涼波が嫁入りすることが許せなくなった。怪談話を語る催しに参加した璃玖は、暗闇をこっそり抜け出して涼波の後をつけ、開かずの間に用意しておいた黒紋付を涼波にかけ、ハサミで胸を刺した。「こんな牢獄のような所で、一人では生きていけない。私を捨てる涼波様が許せなかった」。そう言って理玖は望楼から飛び降り、命を絶った。 事件は闇に葬られ、いつもの暮らしが始まった。開かずの間の前の廊下を歩いていた将軍・家茂(葛山信吾)は足を止め、「黒紋付を来た女中が座っていた気がした」と言った。まるたちは驚愕して声もない。
家茂にも大奥にも、「終わりの日」が近づいていた。
暗い座敷にろうそくの明かりが何本か灯り、それを囲むように女中たちが座っている。一人一つずつ、大奥にまつわる怖い話をし、終ったらろうそくの火を一本吹き消す。そして、消えたろうそくを持って暗い廊下を歩き、開かずの間に置いて戻って来るのだ。葛岡(鷲尾真知子)は、「すべてのろうそくが消えた時、何かが起こる」と言った。
藤波(小松みゆき)は、「駕籠部屋の狐火」という話をした。夜の駕籠部屋で狐火を見た女中が数日後に行方不明になり、やがて駕籠部屋で血まみれの死体で発見された。聞いていた女中たちが悲鳴をあげた。
こうして怪談話が続き、女中たちの悲鳴とともにろうそくが一本、また一本と消えてゆく。最後の一本を前に、「開かずの間の亡霊」を語り始めたのは、涼波(佐藤友紀)というお針子である。十二代将軍・家慶が開かずの間の前に、見慣れない黒紋付の女中が座っているのを見た。それを見たのは家慶ただ一人で、それから数日後、家慶は急に病となり死んだ。語り終えた涼波はろうそくを消し、暗闇の中を開かずの間に向かった。
かなりの時が流れたが、涼波は戻って来ない。まると葛岡たちが開かずの間に探しに行くと、ろうそくの火が灯され、黒紋付を被せられた涼波が胸を刺されて死んでいた。女中たちは、「開かずの間のたたり」と悲鳴を上げた。
翌日、まるは、涼波が働いていた呉服の間のお針子たちの様子を見に行く。すでに、「亡霊が出た」との噂が飛びかっていた。璃玖(松尾れい子)というお針子は、年長の涼波は、お針子たちから姉のように慕われていたと言った。秋には大奥を下がって嫁入りすることが決まり、うれしそうに花嫁衣裳を縫っていたという。
葛岡らは、事件はもののけの仕業だと言ったが、まるは誰かが涼波を殺したのではと疑った。開かずの間に再び入ったまるは、床の隅に金属片があるのを見て拾った。
盆が終わり、瀧山が大奥に戻る日が迫った。留守を預かる葛岡は、事件をどう報告するか焦った。まるは再び呉服の間の璃玖を訪ねる。璃玖は放心したような顔つきで、涼波が残した花嫁衣裳を縫っていた。手にしたハサミの先が欠けていた。
江戸城で花火が打ち上げられる夜。璃玖の姿が見えなくなった。女中たちが探すと、花火の光が望楼の上に女が立っているのを浮かび上がらせた。璃玖だった。まるが望楼を駆け上がる。璃玖は涼波の花嫁衣裳を羽織っていた。その目はもう、常人の目ではない。まるがハサミの破片を見せると、璃玖は涼波を殺したことを認めた。
涼波を姉のように慕ううちに、璃玖は同性愛の対象として涼波を愛するようになっていた。そして、涼波が嫁入りすることが許せなくなった。怪談話を語る催しに参加した璃玖は、暗闇をこっそり抜け出して涼波の後をつけ、開かずの間に用意しておいた黒紋付を涼波にかけ、ハサミで胸を刺した。「こんな牢獄のような所で、一人では生きていけない。私を捨てる涼波様が許せなかった」。そう言って理玖は望楼から飛び降り、命を絶った。 事件は闇に葬られ、いつもの暮らしが始まった。開かずの間の前の廊下を歩いていた将軍・家茂(葛山信吾)は足を止め、「黒紋付を来た女中が座っていた気がした」と言った。まるたちは驚愕して声もない。
家茂にも大奥にも、「終わりの日」が近づいていた。