緋の十字架
運命の少女
昭和二十四年四月。悦子と結婚した直哉は、戦死した将一と悦子の子を「浩一」と名付け、自分の子どもとして育てていた。その浩一は六歳。二歳下には妹の雅美がいた。浩一の小学校の入学式の日。学校へ向かう途中の直哉は、教会で神父が倒れているのを発見。医者を呼び、神父を介抱する。七年前の罪を恥じた直哉は、信仰を捨てていた。直哉は神父に代わって、老婆ハツの見舞いに行く。貧しい暮らしのハツは、赤ん坊のときに捨てられていた詩織を薫と名付けて育てていた。薫は七歳になるが、目が不自由だった。その夜、ハツが急死する。駆けつけた直哉に、薫はすがりつく。