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<第41回>
 昭和二十五年、ひかるが勇作と結婚して八年が過ぎた。義父の政之助は亡くなり、静子、秀子とともに三枝の屋敷に移り住んでいる。
 絹は勇作を嫌い、和尚のもとに身を寄せていた。
 大河原商会はひかるの手腕によって敗戦後の危機を乗り越え、折しも勃発した朝鮮戦争によって、更なる発展を目論んでいた。
 そんなある日、大河原の土地を高値で買いたいと言ってきた東京の「北西興産」の社長から、勇作夫妻に会食の招待状が届く。噂によると、その社長はかなりあくどい人物らしい。
 勇作に急用ができ、ひかるは一人でその男に会いに行く。現れた人物を見て、ひかるは驚愕。戦死したはずの猛だった。

<第42回>
 戦死したはずの猛が、北西興産の社長として、ひかるの前に現れる。ひかるは喜ぶが、勇作への復讐の鬼と化した猛に、戦慄を覚える。
 ひかるは猛のことは勇作に話さず、北西興産とは関わらないほうがいい、と忠告する。
 翌日、北西興産の社長から勇作に、会いたいと電話がかかってくる。ひかるは猛を呼び出し、このまま東京へ帰ってほしい、と頼む。猛は勇作との約束をすっぽかす。
 その夜、勇作は秀子に酒場「アザミ」を経営させるため、オーナーに会いに行く。すると、北西興産の社長が先に交渉中だという。その男が猛だったので、勇作は呆然とする。

<第43回>
 猛が生きているのを知った勇作は嫉妬にかられ、ひかるに外出禁止令を出す。ひかるは妻としての自分を信じてほしい、と訴える。
 一方、猛を好きだった秀子は胸をときめかせ、ひかるに猛を好きになってもいいか、と聞く。
 猛が大河原商会へ乗り込んでくる。勇作への恨みだけで生き抜いてきた猛は、大河原商会を必ず潰す、と宣戦布告する。
 猛は伝衛門の墓に参り、改めて勇作への復讐を誓う。「三枝家を取り戻す」という猛に、絹は感激。
 が、和尚は変貌した猛に、危惧を覚える。
 その夜、勇作の取引先の製鉄会社が突然、取引停止を言ってくる。猛の仕業だった。

<第44回>
 早朝、猛が泥酔した秀子を連れて、勇作のもとへやってくる。自分がオーナーになった酒場で酔いつぶれてしまったという。
 勇作はとりつく島もなく猛を追い返すが、秀子は猛への思いを語り、勇作が猛と争うなら自分は猛の味方をする、と兄に反旗を翻す。
 その日、終戦以降、音信不通だった文彦が、友子という内縁の妻を連れて、勇作の前に現れる。小説家としてなかなか芽の出ない文彦は、いかにもみすぼらしい風情だった。
 勇作は文彦を絹に会わせる。絹は文彦の不甲斐なさに腹を立て、冷淡な態度をとる。勇作は文彦と友子を家に入れる。
 ひかるはアトリエで偶然、猛と顔を合わせる。

<第45回>
 アトリエでひかるは猛と偶然、会う。復讐の鬼に変貌してしまった猛に、ひかるは失望。決別宣言をする。
 そんな二人を秀子が目撃。勇作に二人のことをセンセーショナルに告げ口する。逆上した勇作は、ひかるを家から叩き出す。
 ひかるは絹のもとへ行く。すると、文彦も来ていて、絹は家族一緒にここで暮そうと提案する。そして、三枝家を取り戻そうと。
 が、ひかるは猛の復讐を非難。勇作のもとに戻る。勇作もひかるを誤解したことを謝る。
 秀子が猛から誘われたといって、家を出て行く。ひかるは秀子を連れ戻そうとするが、猛はひかるに見せつけるように、秀子に激しく口づけをする。

<第46回>
 猛と暮らすために家を出た秀子を、ひかるは連れ戻しにいく。猛の復讐の道具にされると思ったのだが、猛は秀子を愛しているという。そして、いずれ結婚するつもりだと。  勇作は長年の夢だったレジャーランド建設のために、駅前の一等地を買収しようとしていた。公開入札に向けて、すでに根回しもすんでいた。
 猛がそれに目をつけ、部下の佐古田と勇作の入札額について話し合う。
 その話を耳にした秀子はこっそり勇作の部屋に忍び込み、金庫の中にあった書類から、土地の入札金額を調べあげる。たとえそれが兄を破滅に追いこもうとも、猛のためならかまわなかった。

<第47回>
 入札の当日。勇作の手に入るはずだった土地が、猛の北西興産にまんまと持っていかれる。秀子が入札情報を流したのを知ったひかるは、秀子を利用している猛を非難しにいく。
 が、猛は、これで大河原商会は終わりだ、と平然としていた。
 そこへ、三ヵ月前に猛に倒産させられたという男が、ナイフを持って仕返しにくる。とっさにひかるが猛をかばい、自分の腕に怪我をする。猛はひかるに駆け寄り、無言で傷口の手当てをする。
 勇作の取引銀行が、貸し付けた金を月末までに全額返済するよう連絡してくる。狼狽する勇作に、猛が途方もない取引を持ちかけてくる。

<第48回>
 猛は勇作から横取りした土地を落札額の十倍で譲ってもいいと勇作に持ちかける。
 入札のやり直しをさせるため、勇作はある計画をたてる。文彦を知人の出版社に紹介して、猛の糾弾記事を書かせようというのだ。
 すると、出版社から、三枝家崩壊の暴露記事を要求される。
 勇作と猛の泥沼の争いをやめさせるため、ひかるは猛を説得にいく。猛は二人だけで話をしたいから今夜アトリエに来てほしいという。
 その夜、勇作のもとに、何者かから「アトリエニイケ」という電報が届く。
 ひかるがアトリエで猛を待っていると、勇作が現れる。

<第49回>
 アトリエでひかると猛が密会していると思った勇作は、逆上する。猛はそんな勇作をあざ笑い、密告の電報を打ったのは自分だと打ち明ける。
 勇作は文彦に猛の中傷記事を書くようそそのかす。そのためには伝衛門を貶めることにもなるので、文彦は断る。
 すると、勇作は今まで文彦のために使った金を返してほしいと高圧的な態度に出る。金がなければ、友子を売ってでも作れと。
 友子は文彦に逃げようと訴える。これ以上友子に苦労させたくない文彦は、記事を書く決心をする。
 ひかるは記事を出させないよう勇作を説得するが、失敗。一方、猛は記事が出てもかまわないという。

<第50回>
 文彦の書いた三枝家の中傷記事が雑誌に掲載される。猛を悪者に仕立て、駅前の土地の入札を白紙に戻そうとする勇作だった。
 が、生前の伝衛門を知る多くの人たちから出版社に抗議が殺到し、勇作の目論見は失敗に終わる。
 いよいよ倒産の危機に直面した勇作は、猛に土下座までして土地を譲ってもらおうとする。猛は断り、以前勇作から受けた侮辱の言葉をそのまま勇作に返す。
 文彦は記事を書いたことで自己嫌悪に陥る。責任を感じた友子は、遊郭に身売りする。
 その友子を誰かが助けてくれる。ひかるは猛だと直感する。
 そんなある日、ひかるは自分の妊娠に気づく。


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