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<第1回> 「嵐、復活!」
 恐慌の足音が聞こえる昭和二年、山梨県白部村。三枝家は数十軒の小作農家を抱えた大地主で当主は伝衛門。妻・絹との間に、文彦(11)とひかる(7)がいる。
 伝衛門はしばしば横浜へ通っていた。そこには馴染みの芸者・琴子がいた。
 その夜も伝衛門は琴子の家で過ごしていた。
 すると、腹をすかせた一人の少年が台所に忍び込んでくる。伝衛門は少年に食事を与えるが、翌日、帰りの汽車の中へ少年がついて来る。少年は天涯孤独で、名前はないという。歳は九歳だった。
 野生児のように乱暴で粗雑だが、なぜか憎めないその少年を、伝衛門は屋敷に連れて帰る。

<第2回>
 伝衛門は横浜から名もない孤児を連れて帰る。絹は嫌がり、子どもたちも薄気味悪がる。
 が、伝衛門は少年の目が三年前に亡くなった次男の猛の目に似ていると思い、親近感を持つ。
 少年は木に登ったり、横浜で覚えた英語の歌を口ずさんだりする。猛も木登りが得意で、英語の歌が好きだったことから、ひかるは少年を猛と呼ぶ。
 女衒の欣造が三枝家に来る。伝衛門は欣造に少年の身元調べを頼む。
 一方、絹は欣造から琴子のことを聞き出す。少年が伝衛門と琴子の子どもかもしれない、と疑う欣造に、絹は動揺する。
 伝衛門の指示で、少年は正式に猛と名付けられる。

<第3回>
 三枝家に連れてこられた少年は、猛と命名されるが、伝衛門以外は誰も歓迎しなかった。
 猛が怪我をした野ウサギを拾ってくる。やさしく手当てをする猛に、協力するひかる。
 使用人たちは猛を琴子の子どもと思い、追い出そうとする。伝衛門は猛をずっと自分の手元に置いておきたかったが、絹に反対され、猛の身元を探すため、再び横浜へ連れて行く。
 猛はウサギの世話をひかるに頼む。文彦はウサギを捨てようとするが、猛が帰ってくるのを待つひかるは、必死にウサギを守る。
 欣造が、猛は孤児院を脱走した鳥居捨松だということをつきとめる。それを知られた猛は姿を消す。

<第4回>
 姿を消した猛の行方を、伝衛門は必死に探し回る。
 ひかるも猛のことを心配するが、そんなひかるの前に、猛がひょっこり姿を現す。
 文彦は遊び仲間たちと猛に襲いかかり、猛を蔑むような発言をする。怒った伝衛門は文彦を殴り飛ばす。
 伝衛門は再び、猛を三枝家に入れる。
 翌朝、伝衛門は小作人たちが働いている葡萄畑を猛に案内しながら、猛との出会いは運命に導かれたのだと語る。猛は自分が鎌倉の鶴岡八幡宮の大鳥居の下に捨てられていて、「鳥居捨松」と名付けられたことを打ち明ける。
 その日、伝衛門の金の懐中時計がなくなり、猛に疑いがかかる。

<第5回>
 伝衛門の懐中時計がなくなり、猛に疑いがかかる。
 文彦の不審な行動を見ていたひかるは、猛に知らせる。猛は時計を見つけるが、文彦に、自分が罪をかぶるから三枝家にいられるようにしてほしい、と取引を持ちかける。
 そのやりとりを、絹が聞いていた。
 猛は伝衛門に、自分が金時計を盗んだと申し出る。そのためにひどい体罰を受けるが、ひたすら堪える。
 絹は一部始終を伝衛門に伝える。
 そんな矢先、猛のいた孤児院の園長・黒岩が、猛の母親が見つかったと訪ねてくる。猛は黒岩に連れられていくが、実は、人買いの坂本が待ちかまえていた。
 ひかるがそれを目撃・・・・・・。

<第6回>
 人買いに連れ去られた猛を、ひかるが目撃。伝衛門に知らせる。伝衛門は人買いの手から猛を買い戻し、家族の一員として迎え入れる。
 文彦は猛に嫉妬。番小屋で探し物をする猛の姿を見つけると、こっそり棚の支柱を外す。
 そこにはひかるもいて、猛は崩れ落ちる棚から、とっさにひかるを庇う。その猛の背中に、落ちてきた鎌が突き刺さる。
 猛は大怪我を負う。文彦が支柱を外すのを見ていたひかるは憤慨するが、猛は誰にも言わないよう口止めをする。
 ひかるは自分を助けてくれた猛に感謝する。猛もひかるのおかげで人買いから助けられたと礼を言う。

<第7回>
 ある日、ひかるが猛から貰った大事な貝殻を、文彦がわざと踏み潰す。がっかりしたひかるは、海へ行こうと家を出る。
 猛はひかるを追いかけ、一緒に列車に乗る。途中、無賃乗車を見つかりそうになり、横浜の琴子に助けを求める。
 猛はひかるに初めて海を見せてやる。ひかるは感激して涙を浮かべる。
 その頃、三枝家では、小作人たち総出で二人の行方を探し回っていた。
 翌日、琴子は子どもたちを連れて、三枝家を訪ねる。絹は琴子を客としてもてなし、伝衛門と仲のいいところを見せつける。
 嫉妬を感じた琴子は、自分も負けまいと伝衛門の世話をする。

<第8回>
 伝衛門をめぐって、絹と琴子が見えない火花を散らす。絹は琴子をもてなすためにわざわざ台所に立ち、食事も一緒にする。どうなることかと、不安そうに見守る使用人たち。
 翌日、猛は文彦から風呂を焚くように命令される。水はすでに入っているというので薪をくべるが、実は嘘で、風呂の空焚きから危うく火事を起こしそうになる。
 一部始終を見ていた琴子は、絹に真相を話すが、絹はあくまでも文彦をかばう。
 伝衛門はそんな絹を非難。絹も琴子も自分にとっては欠かすことのできない存在だから意地を張り合うな、と忠告する。
 絹は、「心の秤が壊れた」と言って、家を出て行く。

<第9回>
 家を出た絹は行くあてもなくさまよい、光明寺の山海和尚のもとにたどり着く。
 その頃、琴子は伝衛門との別れを決意。必死に引き止める伝衛門をふりきって、横浜へ帰っていく。
 和尚と話して気持ちの落ちついた絹は、三枝家へ帰ろうとする。そこへ、猛が迎えにくる。
 伝衛門の計らいで、猛は学校へ行くことになる。絹が真新しい学生帽を買ってくれたので、思わず、嬉し泣きしてしまう。
 張り切って家を出た猛の前に、文彦と小作の息子・太郎、吾作、孝一が立ちはだかる。太郎は猛の帽子を小刀で切り刻み、文彦は教科書を田んぼにばらまく。
 その日、猛は学校へ行かなかった。

<第10回>
 文彦のいじめで学校へ行けなかった猛は、学校から帰った文彦に襲いかかる。伝衛門に取り押さえられるが、怒りの理由は言わなかった。
 ひかるはずたずたにされた猛の帽子を見つけ、文彦の仕業だと察する。伝衛門と絹もそれを知り、心を痛める。
 猛の怒りはおさまらず、ついに包丁まで持ち出す。それを見た和尚は叱りつけ、寺の松の木に猛を吊るす。
 和尚の忠告によって、伝衛門は文彦に水行をさせる。三枝家の跡継ぎとして、もっと強い人間になるようにと。
 ひかるは寺に駆けつけ、手の爪が潰れるのもかまわず、吊るされた猛の縄をほどく。


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