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<第11回>
 七年の時が流れて、昭和九年夏。ひかるは十四歳。女学校の一年生になって、初めての夏休みだ。猛は十六歳。三枝家の使用人として働いていた。
 伝衛門は一年前、郊外にアトリエを造り、ひかるはそこで男爵令嬢・崇子からバイオリンを習っていた。猛はひかるの練習に付き添うが、自分の立場をわきまえ、へりくだった態度を崩さない。
 文彦は高等学校に進み、弓道部に入っていた。友人の友春をよく家へ連れてくるが、ひかるは友春からラブレターを貰う。
 ある日、女郎屋に売られた農家の娘・お花が三枝家に逃げ込んでくる。伝衛門はお花を助け、屋敷で働かせる。

<第12回>
 伝衛門は村のために、灌漑用水路の工事を進めていた。猛は予備調査班の責任者に抜擢される。
 文彦が無断外泊。翌日、女給の織江に連れられて、泥酔して帰ってくる。伝衛門は烈火のごとく怒るが、絹はかばう。
 ひかると猛の仲睦まじい姿を目撃した絹が、猛にひかるのバイオリン練習に付き添うのを禁じる。猛は改めて自分の立場を思い知らされるが、仕事に集中できず、練習に出かけるひかるの後を追いかけてしまう。
 練習が終わり、猛が仕事に戻ろうとすると、ひかるが話があるとひきとめる。吾作が気をきかせて、水路の発動機を動かすのをかってでるが、まもなく、大爆音がこだまする。

<第13回>
 猛の代わりに発動機を回そうとした吾作が事故を起こし、腕に大やけどをする。そのとき、猛とひかるが番小屋にいたことを知った絹は、ひかるに猛と必要以上に親しくしないよう言い渡す。伝衛門も己の分をわきまえるよう猛に忠告する。
 ある夜、伝衛門と絹は温泉へ泊まりにいく。
 すると、弓道部の合宿へ行っているはずの文彦が、同じ宿で織江と泊まっていた。怒った伝衛門は文彦を勘当。絹もついに、文彦を見放す。
 その頃、ひかるは一人で甲府へ芝居を見にいっていた。猛はひかるを連れ帰ろうとするが、アトリエに引きとめられる。
 そこへ、刑事たちが乗り込んでくる。

<第14回>
 甲府で猛とひかるは刑事に目をつけられ、風俗紊乱罪で逮捕されそうになる。崇子が毅然とした態度で、刑事たちを追い払ってくれるが、事件のことが伝衛門に知られ、二人への監視の目はますます厳しくなる。
 ある日、友春からひかるに、ハイキングへの誘いの電話がかかる。ひかるは断るために出かけていく。
 文彦は光明寺に身を寄せていた。絹が訪ねてきたのを知り、心を入れ替えて修行するふりをするが、猛にはありのままの自分を見せ、恨みをぶつける。
 まもなく、天候が急変、激しい雨がたたきつける。ひかるは友春と番小屋で雨宿りするはめになる。ひかるは友春を避けるが、無理矢理抱きしめられる。

<第15回>
 雨宿りした番小屋で、ひかるは友春に乱暴されそうになる。猛が駆けつけ、友春を殴りつける。
 翌日、友春の父・県議会の副議長をしている古川が三枝家に怒鳴り込んでくる。友春が猛に怪我をさせられたと憤慨する。ひかるは真実を話して、猛の濡れ衣を晴らす。
 夜、三枝家では、崇子を夕食に招く。文彦も勘当を許され、仲間に加わる。崇子が持ってきたワインについて話しがはずみ、猛はワインづくりに興味を示す。
 しばらくして、猛が番小屋で仕事をしていると、崇子がやってくる。猛とひかるのよき理解者だった崇子だが、突然、猛を誘惑しようとする。
 そこへ、ひかるが・・・・・・。

<第16回>
 猛を誘惑するのに失敗した崇子は自分でブラウスを引きちぎり、悲鳴をあげる。駆けつけたひかるは猛の弁解を許さず、「穢らわしい」と軽蔑の目を向ける。
 猛は伝衛門に身の潔白を訴える。伝衛門は崇子から事情を聞こうとするが、崇子はとりつく島もなく帰っていく。
 猛は蔵に閉じ込められる。文彦がやってきて、猛をからかう。かっとなった猛は文彦に殴りかかり、罰として鎖につながれたうえ、一週間の謹慎を言い渡される。
 その日から、猛は一言も話さず、何も食べようとしなかった。
ひかるは猛を穢らわしいと言ったことを後悔して、自分の部屋に閉じこもり、食事も拒否する。

<第17回>
 崇子を襲ったと疑われ、傷ついた猛は、抗議の断食を始める。ひかるも猛のまねをして、一切の食事を拒否する。
 そんなとき、文彦が町の酒場で、偶然崇子と出会う。崇子は裏切られた過去の恋について語り、猛は何もしていないことを打ち明ける。
 文彦は両親に猛の無実を伝える。絹は自分の手で握り飯をこしらえると、猛のところへ持っていき、疑っていたことを謝る。
 猛はその握り飯をひかるのもとへ届け、一緒に頬張る。
 灌漑工事の現場で落盤事故が起こり、小作人が一人生き埋めになる。知らせを聞いた伝衛門は現場に駆けつけ、猛も急いでその後を追う。

<第18回>
 落盤事故で怪我人が出るが、猛の機敏な救出作業のおかげで、大事に至らずにすむ。伝衛門は猛を頼もしく思う一方、文彦のふがいなさに情けなくなる。
 断食の疲れから、猛が熱を出して倒れる。親身に看病するお花の姿を見て、文彦はお花が猛に好意を寄せているのを知る。
 伝衛門は猛を現場の補佐役に任命する。そして、番小屋で寝泊りするよう言い渡す。  絹は猛が屋敷からいなくなりほっとする。
 が、ひかるは両親が猛を追い出したと思い、憮然とする。
 その夜、ひかるはこっそり番小屋を訪ねる。戸を叩き、猛に開けるよう声をかけるが・・・。

<第19回>
 ひかるは猛に会いたくて番小屋を訪ねるが、猛は心を鬼にして会うのを拒否する。
 ひかるは猛にラブレターを書き、お花に届けてもらう。こっそり手紙を読んだお花は、二つに引き裂いて握りつぶす。
 文彦は猛を酒場に誘い、無理矢理酒を飲ませる。猛は酔いつぶれ、文彦は猛がお花から貰った手拭いを持ち去る。
 文彦はその足でお花の部屋に忍び込み、猛と一緒にしてやるから自分の言うことをきけ、とお花に襲いかかる。
 翌日、お花の父親・太吉が、猛とお花が結婚の契りを交わした、と伝衛門を訪ねてくる。それを聞いたひかるは気絶する。

<第20回>
 お花は、猛と契りを交わしたことを主張。その証として例の手拭いを見せる。
 文彦の陰謀だと知った猛は、怒りを爆発させる。
 が、ひかるが女学校を転校して、東京の寄宿舎に入ることを聞き、すべてをあきらめ、お花と結婚する決心をする。
 東京へ行く前夜、ひかるはお花の嘘を見抜くが、お花が哀れで、自分から身を引く。お花は関係を持ったのは文彦だったことを告白。居たたまれずに、姿を消す。
 翌日、ひかるの壮行会が盛大に開かれている中、猛が駆けつける。二人は思い出の横浜の海へ行く。猛は、仕事に打ち込み立派な男になるから、それまで待っていてほしい、とひかるに告げる。


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