死との約束

ストーリー

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「分からないのか、こうなったらもう殺すしかないんだっ」。名探偵・勝呂武尊(野村萬斎)は休暇で訪れていた熊野古道のホテルで、その場に似つかわしくない物騒な言葉を耳にする。事件はこの時、すでに動き始めていた・・・。 翌日、朝食をとるためにホテルのラウンジに向かうと、そこで医学書を読んでいた医師の沙羅絹子(比嘉愛未)の姿を目にし、声をかける。沙羅は勝呂のことを新聞で見て知っていたため、二人はすぐに打ち解ける。そこに、本堂家の夫人(松坂慶子)、次男の主水(市原隼人)、長女の鏡子(堀田真由)、次女の絢奈(原菜乃華)がやってくる。どこか異様な雰囲気をかもしだす夫人は、やってくるなりホテルのスタッフをどなりつけ、子どもたちにはあれこれと命令し始める。さらに遅れて、長男の礼一郎(山本耕史)と妻の凪子(シルビア・グラブ)もやってくる。夫人の言動は、まるで一家の独裁者のようで、子供たちはみな完全に彼女の支配下に置かれていた。その風変りな家族の様子に、勝呂はあっけにとられてしまう。一家と古くからのつきあいがあるという男・十文字幸太(坪倉由幸)によると、主である本堂氏が、家族が一生遊んで暮らしていけるほどの十分なお金を残して死んだため、本堂家は家族全員で日本中を旅しているのだという。

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沙羅から誘われて本宮大社を訪れ、散策をしていた勝呂は背後から声をかけられる。振り返ると、婦人代議士・上杉穂波(鈴木京香)と編集者の飛鳥ハナ(長野里美)だった。穂波は、自伝の執筆のために熊野を訪れたというが、どうやら勝呂とは旧知の仲らしい。穂波の前では今まで見せたこともないような顔を見せる勝呂。

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その二日後、貸し切りバスで古道散策ツアーに向かった本堂一家と勝呂、沙羅、穂波、飛鳥。霊峰と言われる熊野には神秘的な山道が多く、景色もどこかミステリアスだ。そして、昔から天狗(てんぐ)の目撃談も後を絶たない。各人が、思い思いの場所に分かれて時を過ごす一行。そんな中、参道沿いのベンチで休んでいたはずの本堂夫人が、遺体となって発見される。地元の警察署長・川張大作(阿南健治)に事件解決を要請された勝呂は、早速捜査をはじめる。夫人は普段から心臓が弱かったというのだが、勝呂は、その右腕に注射針の痕を発見する。病死なのか?誰かに殺されたのか?勝呂は、ホテルに到着した晩に、偶然耳にした言葉をふと、思い出す。「分からないのか、こうなったらもう殺すしかないんだっ」。あの声は一体誰だったのか?夫人の死と関係があるのだろうか?ぎくしゃくしていた家族の誰にも動機があり、全員に殺害するチャンスがあった。名探偵・勝呂史上、最もややこしい事件の推理が、今、始まろうとしていた。