数々の有力選手を指導する長光歌子さんが
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.70

対談企画 ゲスト:田中刑事選手

 岡山県で小学生の頃にスケートを始め、2011年の世界ジュニア選手権で銀メダルを獲得。平昌オリンピックでは日本代表となり、現在は歌子先生の下で練習を行っている田中刑事選手に歌子先生とのお話を聞いてきました。

ジャンプについて、最初に飛べた時の気持ち―

ふたり

4回転はあまり覚えていないんですが、トリプルアクセルはよく覚えています。僕には中学生の間にトリプルアクセルを絶対に跳びたいという目標があって、中学1、2年では跳べずに確か3年の終わり頃に跳べたんです。嬉しかったというより、自分が立てた目標の期限に間に合ったという感情の方が大きかったですね。

中学3年生は早いよね。

だいぶ早いと思います。バッジテストの級も小学1年生で1級、2年生で2級という感じで取りたくて、中学1年生までに7級を取り終わるという目標を自分の中で立てていました。4回転も自分で目標を作って区切っていましたね。

4回転はいつ跳べたの?

高校1年生の時です。トリプルアクセルから解放されて、やったと思います。

どっちが先?サルコウ?

トゥループです。サルコウは大学生になってからですね。トゥループは確か高校生になる年の1月から半年以内に跳ぶというのを決めていて、6月30日ギリギリに跳んだと思います。

期限を決めてクリアできるのはすごいよね。

先生に言われたとかじゃなく、これまで自分でそういう目標を立てている時期が多かったですね。

ジャンプの高難度化について―

現状進化せざるを得ない、みんな追い込まれて行く感じじゃないですかね。4回転ルッツまでを完璧にこなすという演技をネイサン(・チェン)選手がやっているので、ネイサンに勝つというのが4回転時代での到達点ですね。アクセルはまだ実際には半分ロマンのようなジャンプで、でもそれを現実的にさせたのはゆづ(羽生結弦選手)だと思います。これからもっとチャレンジしたい子が出てくると思いますね。

今のルールだとダウングレードやアンダーローテーションとか取られちゃうかもしれないけど、男子は昔から4回転ルッツも結構跳んでいましたね。確実にきちっとやらないと点数が出ない時代ではなかったので。女子に関しては今やもうトリプルアクセル跳んで当たり前な時代になってきていますよね。日本の選手は真央ちゃんの時代は20代後半でも現役で試合に出場されていて、素晴らしいことだと思います。今はそういう時代ではなくなってきているのが少し残念かな。

ふたり

今回のオリンピックを見て感じたのは―

クリアしないといけないことが多すぎるなか、辛い状況なのにみんながんばっているなという印象です。怪我だけじゃなくそれ以外のことでも試合に出場できなかったり、ただでさえオリンピックということで張り詰めているのに、気をつけないといけないことが多すぎてストレスがすごいんじゃないかなと思います。その中で戦っていると思うと、4年前の自分の状況と比べるというよりも、また別のステージで戦っているという印象です。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)