数々の有力選手を指導する長光歌子さんが
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.69

対談企画 ゲスト:橋本聖子さん

幼少時よりスケートに慣れ親しみ、難病と闘いながらも高校2年生から全日本選手権を10連覇。自転車競技も合わせ7度オリンピックに出場し、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長を務めた橋本聖子さんに歌子先生とお話を聞いてきました。

2022.1.18

橋本聖子さん
橋本聖子(はしもと せいこ)
橋本 聖子(はしもと せいこ)
元スピードスケート選手で現在は政治家、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長。幼少時に腎臓病を患うも乗り越え7度のオリンピックに出場、1992年のアルベールビルではスピードスケート1500mで日本人女性として初めての銅メダルを獲得した。

歌子先生との出会いについて

私は昔からずっと橋本聖子さんをテレビで拝見していて、日本スケート連盟の会長になられるようになってから、実際にお会いした感じですね。大会の開会式などで聞く橋本会長のスピーチは毎回とても素晴らしくて尊敬していました。昔からのファンなので今回の対談は先日の全日本フィギュアよりも緊張しているかもしれません(笑)。

スピードスケートをやっていた時に見ていたフィギュアのコーチの方々は、少し高貴な雰囲気の方が多かったので、歌子先生とお会いした時は、こんなに一緒に居て落ち着ける方もいらっしゃるんだ…と思っていました。

あまり直接お話ししたことはなかったのですが、そう思っていただけていると思うと安心しました。橋本会長が会長になられてからは、本当にアスリートファーストを実感できるようになり、感謝しています。

それは絶対にそうしたいと心がけていました。バンクーバーオリンピックでは、参加選手がなるべくストレスを感じないようにと考え、その中で歌子先生とも「どうやったら一番いい形で現地に入れるのか…」というお話をさせていただいたことを覚えています。

橋本会長が描くアスリートファーストのおかげもあって、私のチームとしてもリラックスした中で大会を迎える事ができました。以前では考えられなかったことですが、本当に助かったと思っています。

そういったサポートも大会を経るごとに充実してきました。今ではオリンピックの際に日本チームでトレーニングルームを貸し切ったりもできるようになりました。

お二人

スピードスケートを始めたきっかけは―

生まれ育った環境ですね。私の小さい頃、北海道では田んぼや池がスケートリンクになる時代でした。私が中学生くらいの頃までは湖で全日本大会を行っていましたね。凄く風の強いような地域でなければ、たとえば御神渡のある諏訪湖でさえ、割れ目を避ければお湯を撒くだけで綺麗なリンクが出来上がっていました。そこでスケートのコースを作っていた時代でした。

昔は今よりもっと寒かったように思いますね。

50年でこんなに変わるのか?と思うほど気温が上がったと感じますね。

私が引退するまではフィギュアスケートもインターハイ、インカレ、国体は全部屋外リンクでした。

画像で見たことはありますが、とても寒いでしょうね!

向かい風の時にジャンプをすると、押し戻されて同じ位置に着地することもありました(笑)。

昔は運も実力のうちだなんて言われましたけど、実際本当に天候に泣かされた選手も多いと思います。今はできるだけ同じ条件で選抜できるように、選考会は屋内でのみ行っていますね。

当時のスピードスケートは―

聖子さんは高校2年生から全日本を10連覇されたと聞いていますが、当時はまだワールドカップなどはなかったのでしょうか。

私の選手生活の後半くらいにようやくできた感じですね。中学生の頃は世界選手権と世界スプリント、世界ジュニアという3大タイトルという形でしか世界戦はありませんでした。年内は国内だけでポイントを稼いでいる感じですね。

聖子さんは全距離にマルチで走られていたんですよね。メインの距離はどれだったのでしょうか。

私は中距離でした。1000mと1500mを専門にしていたのですが、1000mを走り切るのは中・長距離を走り切る持久力と、500mのスピードがないとダメな競技です。今の髙木美帆選手は理想的な選手ですね。500mも速くてスピードがあり、1500mから3000mまで完璧に滑ることができます。1000m、1500mという一番苦しい種目を世界で制する事ができるというのが、本当に凄いです。陸上競技でいうと400mや800mのようなものですね。でも小平奈緒選手の得意とする500mも、ものすごくきつい競技です。

本当に精密機械のように滑らないといけないですよね。ものすごいストレスなんじゃないかと思います。あとスピードスケートは2人で滑ってクロスするでしょう、あれを見ていると心配になるのですが…

クロッシングレーンでは、実力が拮抗していたり、多少の差だったりではぶつかることはないのですが、中距離以上で少し差があると危ない事もあります。外側が優先というルールはありますが、どうしても自身の全力を出したい…と先に外に出ようとしたところで接触してしまう事もありますね。

外が優先なんですね。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)