数々の有力選手を指導する長光歌子さんが
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.68

対談企画 ゲスト:矢野桂一さん

幼少時から音楽に親しみ、音響業界に就職。現場でフィギュアスケートに出会い、その芸術性の高さに惚れ込み、音響や音楽編集で更なる競技の発展を目指し尽力される、矢野桂一さんに歌子先生とお話を聞いてきました。

歌子先生からの依頼の中で記憶に残っている曲目は―

長光歌子先生

いや、もうたくさん残っていますね。特に衝撃だったのはヒップホップのスワンです。あれはモロゾフさんの選曲ですか?

そうですそうです。

最初に音源が送られてきたとき「お!これやる!?」って感じだったんですけど、すごくかっこいいなって思いました。まだ曲だけ聞いて演技を見る前で、彼がどう踊るんだろうって思ったのですが本番をみたら本当に格好いいんですよ。いい意味で「これフィギュアスケート?」と思いましたし、それはすごく印象に残っています。音楽的な部分を含め、ここで盛り上がってくるなって部分は大きくするように。抑えるところはちょっと抑えておいて、それより先が盛り上がるような形の抑揚感をつけたりとか。マスタリングというんですけど、そういうのをずっと担当させていただいています。ちょこちょこ調整をしたり、だから大ちゃんのプログラムは全部印象に残ってますね。音楽が始まると別人になっちゃうところが本当に好きです。

ありがとうございます。バンクーバーの前の年、怪我をした年のシーズン用にショートも矢野さんに編曲していただいたんですよね。最初に何か音が欲しいんですけど何かないですかって相談したら何種類か持ってきてくださって、その中で私も大輔もガラスの割れる音がよくて、それを入れていただいて。後から聞いた話が、大輔の今までの本当にひどい時を見てるので、それを割って新しい大輔になって欲しいという思いがあったというのを聞きました。

ガラスのハート。本当は僕の中に収めておこうと思っていたんです。なんでガラスを思いついたんですかってしつこく聞かれて、いや実はって。

大輔のファンの方はそれはよくご存知で、本当にそこで割れて新しくなれたんだと思います。

矢野さんの今とこれからについて―

今、私はこれ以上ないくらい良い環境にあるので、今の場所を譲りたくないというのが本音です(笑)。トップ選手の方のお手伝いもさせてもらっているし、みんな頑張ってメダルも取れてきました。私がフィギュアスケートのお手伝いを始めた頃って本当にお客さんも居なくて、「こんなにも芸術的な素晴らしい競技、もっと多くの人に知ってほしい」という思いがありました。その中で僕にできることは音響だけだったのですが、もっと音楽的にも認めてもらえるようなお手伝いはできないかなと思って始めたのが音楽の編集なんです。こういう立場や環境に居て、たまたま先生方とお話しするようになって、今は夢が叶っていますね。

矢野さんの今まで積み重ねられてきたことで、もう選手たちコーチたち関係者も日本での試合は本当に安心しきっていると思います。そこはすごい信用ですね。

そう言ってもらえれば本望です。また大ちゃんがアイスダンスを始めて、フィギュアスケートを始めた頃の大ちゃんに戻った感じがあって(笑)、あの大ちゃんを見たから今後も楽しみなんです。今年またどう変わっているのか。僕の楽しみはまだ続きます(笑)。

ありがとうございます。今後とも是非よろしくお願いします。

矢野桂一さんのフィギュアスケートあるある川柳

矢野桂一さん川柳

大会の時に進行席に座っている僕等にしかわからない事だと思うのですが、練習の始まりはみんな反時計回りに滑るんです。そうするとずっと左側から冷たい風が来るので、ふと気がつくと左耳が凍りつくくらい痛い時があるんです。トップ選手になるほど風が強くなっていくんですよ。

それはとてもマニアックな体験ですね!

ありがとうございました!

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)