数々の有力選手を指導する長光歌子さんが
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.67

対談企画 ゲスト:岡崎朋美さん

小学生の頃にスピードスケートと出会い、高校生で富士急行にスカウトされる。5度の冬季オリンピックに出場し、長野オリンピックでは500mで銅メダルを獲得した岡崎朋美さんに歌子先生とお話を聞いてきました。

長野オリンピックについて

長光歌子先生

長野が最初のオリンピックですか?

いえ、その前のリレハンメルからです。リレハンメルは14番で、でも自己ベストは更新していたので、自分では1番最初だし自己ベスト更新したのでいい結果だと思っています。ただ、500mに1回だけの出場で、同じ年代の子たちが1000mも滑っていたのでそこはちょっと後悔しました。そこから意識が少し変わり、次が長野だったので、俄然やる気になりました。リレハンメルが終わってから監督のメニューをやるだけじゃなく、自分で足さなきゃいけないトレーニング、足りない部分を補うのに自分で考えながら進めていくようになりましたね。身体が思うように動かせるようになってきて、さらに面白くなり、段々とワールドカップなどで優勝できるようになったんです。勝ち癖がついてきた感じになったので、長野では金メダルを狙えるなと思っていました。ですがその矢先、長野オリンピック1年前にスラップスケートの登場で覆されました。

全然違いますか?

違いますね。キックするポイントのタイミングが2段階というか、うまくかみ合わなかったです。本当は春から夏にかけては陸上のトレーニングで体をしっかり鍛えて、秋から冬にかけてはスケートのやわらかい筋肉に戻していくんですが、スラップスケートを乗りこなせなきゃいけないので、春先からスラップスケート攻略という合宿をしました。

その様子はテレビで一度拝見したと思います。

一応身体はしっかりと準備していたので、テクニックの問題でした。長野の選手村に入るまでブレードの位置をずらしたり、試行錯誤していました。選手村に入って五輪のマークや、ボランティアさんのウエアを見ていたら気分が上がってきて、スケートリンクに乗った時にすーっと身体が進んでいったので、「これはいけるかも!」という確信になりました(笑)まだまだ不安が多少はあったんですけど、ここまできたらやるしかないとも思っていました。スラップになって1秒2秒とか上がっていく海外の選手もいて、外国の人って力強いのでそのまま推進力に繋がるのがずるいですよね(笑)

1秒2秒は大きいですよね。

大きいですね。ただスタート時間が近づいてきて、やるべきことをやればいいという感覚と、いい方向に行くイメージトレーニングをめちゃくちゃしました。

それはどなたかに教わったんですか?

自己流ですね。後悔したくないというのと、アクシデントの回避などもある程度頭に入れておけば多少食い止められると思いますし、いいイメージを持ってゴールする準備をしておいた方が後々分析もできますよね。あとはスタートラインについたら何も考えず、身体に任せようと思っていました。

素晴らしいですね。自国開催だったので取り上げられることがすごく多く、よくお顔は拝見していました。活躍もあったので、プレッシャーだったんじゃないですか?

そうですね。ただ島崎京子さんもいて、注目されていたのは私だけじゃなかったので、そういう意味では助かりました。

自分だけじゃないと、闘志も燃えますよね。

はい。2人でメダルを取れたらという思いもありました。でもそこも変に意識して撃沈していくよりは、2人で向上して海外勢に食いついていくという方向に考えて、まずは島崎さんより前に出るということを意識しながら滑りました。結果は後からついてくるので。
 競技開始前に、陸上でウォーミングアップをしているとき、たまたまなのか探してくれたのか橋本聖子さんが急に目の前に現れて、「結果は決まっているから大丈夫だよ」と言って、すっと行っちゃったんです。大先輩に言われると、メダル取れそうというか、本当に取っちゃうのかもと思いました。

まるで神様ですね。

そうですね。とても集中していたんですけど、聖子さんに会えて、言葉をかけてもらえたのがうれしくて(笑)すごくリラックスできたんですよね。

長光歌子先生

トリノオリンピックについて―

岡崎さんにはトリノの時に初めてお会いしたのですが「あ、すごい!」と思いました(笑)憧れの人だったので。

ありがとうございます。

もうとにかく、私からしたらちょっと雲の上の選手だったので、会えたことに感動していましたね。

私はフィギュアの世界とスピードの世界って全く違うんだと感じました。先生も女性の方が多いですよね。だから、どんな指導されるのかな?と興味津々でした。しかも歌子先生は男の子を教えていらっしゃいますもんね。

そうですね。フィギュアの場合、女の子たちは二次性徴というか、身体とかがちょっと変わる時があったり、そこを乗り切る時にそれぞれ難しい子が多くて、女の子には大変なスポーツだと思うんですよね。

ジャンプする時とかきっとそうですよね。

そうなんですよ。ちょっと脂肪がつくと、ジャンプの回転が遅くなるし。それと反対で男の子たちは成長が遅くて、身体が出来上がってくるとぐーっと上あがるので、そこはまたおもしろいです。

オリンピックについて―

毎年ある世界選手権などの大会は、その時調子のいい人が上に行くこともありますが、4年に1度にピークを合わせるのは大変ですよね。必ずそこで力を発揮する場所、今の自分のレベルや価値、成果がどこまで通用して戦えるのかがわかる大会です。オリンピックは人間模様も出るので、絶対普通に滑れば勝てるはずなのに、プレッシャーで負ける選手、注目されていなかった選手がいきなり金メダルを取るとか、オリンピックならではの人間模様が楽しいですね(笑)特別感はすごいです。

何度出場されましたか?

5回ですね。リレハンメル、長野にスラップスケートで出て、ソルトレイクシティではヘルニアになり、それから更にチャレンジチャレンジ(トリノとバンクーバー)で5回です。

すごいですね!自国開催の時は応援も違いましたか?

違いますね!海外も「トモミー!」とかは言いますが、応援の仕方っていうのも全く違います。日本は日本ならではの応援の仕方で、みんなが一つにまとまるというか、日本人はシャイな方が多いので、声を出すのを迷っている人も多いですね。オリンピックの応援はみんな声をすごく張り上げてくれるので、選手も観客も一丸となって、みんなで応援してくれるというのがすごくありがたかったです。東京オリンピックは無観客だったからかわいそうでしたね。

選手たちはかわいそうでしたよね。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)