数々の有力選手を指導する長光歌子さんが
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.66

対談企画 ゲスト:江畑幸子さん

小学生の頃にバレーボールと出会い、2008年にVリーグの2部チームに入団、2012年にはロンドンオリンピックの代表に選出され、28年ぶりの女子バレーボールメダル獲得に貢献した江畑幸子選手に歌子先生とお話を聞いてきました。

東京オリンピックで注目していた競技はありましたか―

長光歌子先生

私は女子バスケットボールに注目していました。

どういったところに注目されていましたか?

団体競技で背が大きい人たちと戦うというのがバレーボールとちょっと似ているかな、と思って見ていました。トム・ホーバス監督も良かったですよね(笑)。試合中も凄く大きな声を出していて、あのようなタイプの方、最近はなかなかいらっしゃらないじゃないですか(笑)。

やっぱりチームプレーのそういうところをご覧になるんですね。最近は大人しい監督が多いということですか?

大人しいというか、感情を出すより淡々とデータを重視する感じですね。

眞鍋監督はどっちのタイプでしたか?

眞鍋さんはどちらもでした。私はよく怒られていましたね(笑)。

眞鍋監督は竹下佳江選手をかなり信頼しているように見えていたのですがいかがでしたか?

いつもタイムの時に眞鍋監督が竹下さんにタブレットでデータを見せながら話してるんですよ。それを見ながら私たちは「自分たちのデータを見られている~」と思っていました(笑)。そうやって小声で2人が話していたのが印象的でしたね。歌子先生は今回のオリンピックで注目していた競技はありましたか?

私は柔道ですね。特に阿部兄妹が神戸の出身というのもあって。お兄さんは代表になるために凄い戦いをしてきたじゃないですか。そんなこともあってすごく燃えましたね。一人で感動していました(笑)。

柔道の競技が日本チームを力付けてくれるみたいなところがありましたよね。

ロンドンオリンピックでもそうでしたよね!

そうでした!松本薫選手のご活躍で日本が勢いに乗った気がしました。

長光歌子先生

東京オリンピックのバレーボールについて―

日本の試合は全試合見ましたし、海外の試合もほとんど見ていました。決勝トーナメントに行けなかったというのは今までにあまりなかったので、今回すごく悔しかったと思います。今回の対戦相手はオリンピックにかける想いというのが特に強かったんです。最後の2試合が韓国とドミニカ共和国だったんですけど韓国の選手もドミニカ共和国の選手も「決勝トーナメントにいくぞ!」という気持ちが強くて目の色を変えていました。そこが日本選手とちょっと差があったかな、と思います。相手の選手はスパイク一本打つにも大きな声出しながら打ってて、すごい迫力がありました。逆に日本も高いブロックを避けたりワンタッチ取ろうとはしていたんですけど、それがミスになったりしてなかなかリズムに乗れていませんでしたね。

自国開催という重圧もあったんでしょうか。

そうですね、いつもはオリンピック最終予選もあって切符を取ってオリンピックに出るんですけど今回それがなかったのも影響があったのかなとも思いますし、初戦の古賀選手の怪我もチームが動揺してしまった原因だったのかなと思います。

テレビで見ているとなかなかわからないんですが、凄い角度でボールを打つんですね。現地で観てみたいなと思いますし、よく逃げないなと思います(笑)。痛くないんですか?

現役でやっている人たちはみんな、変なところに当たらない限り痛くないですね。引退して久々にやるとみんな痛い痛いと言っています(笑)。

スケーターも凄く固い靴を履くので、足のあちらこちらにタコができたり、骨が変形してしまったりするんですけど、しばらくスケートシューズを履かないと綺麗な足になっていくんです。次に履いた時は足が痛くて、またしばらく履き続けるとその足になっていきます。人の身体はそういう風に柔軟に変化していくのかもしれませんね。

日本の強みについて―

自国開催でありながらも無観客開催も多かったのでアドバンテージが少なくなったところはあったと思います。でもやっぱり日本のいろんな人たちが応援してくれているというのは選手それぞれが分かっていたはずなので、気持ち的な後押しはあったのかなと思います。

コロナ禍でやるかやらないかもわかりづらくてピークを合わせるのも大変だったと思いますよね。

ピークを合わせるという部分では海外の選手より日本の選手は我慢してできたというのもあるのかなと思います。

1年の延期って大きいですもんね。

東京オリンピックで引退を予定していた選手も最後まで頑張ってきたのに、「まだもう少し頑張る」というのはすごく大変だったと思います。

それぞれの選手達にそれぞれの1年の想いやドラマがあったんだろうなと思いますね。

バレーボールだと、予定通りに開催されていた場合と今とでは、メンバーが2、3人違うんですよ。そういったところも含めて調整しなければいけないというのも難しかったと思います。今回荒木選手がキャプテンででしたが、荒木さんも年齢的にも大変だっただろうし、そのサポートをする人たちの1人だった副キャプテンの古賀選手が初戦で怪我をしてしまったというのもあったので、セッターにも籾井選手が急遽選ばれてチームを作れなかったというのはあると思います。

中心となる選手がわかりにくかったというのはあったんでしょうか?

今回そういう選手がいなかったですし、オリンピック初出場の石川選手や籾井選手が中心になってやっていましたが、経験している石井選手、田代選手は控えになることが多かったので、若手を出したかったのかなという印象が私にはありました。オリンピックを経験しているのと経験していない差はあったのかなと思います。

無観客というのもプレイに影響はあったと思いますか?

そうですね、いつも凄い観客の中で試合するのに慣れているので、違和感はあったかと思います。

フィギュアスケートも、私たちの頃は観客席に関係者しかいなかったんです。最近の選手は観客がいるのに慣れているけれど、去年くらいから無観客になって、私たちにとっては昔に戻っただけだって(笑)。でもやっぱり選手にとっては悲しかったみたいですね。去年の近畿ブロック大会は無観客、西日本選手権も無観客、けど全日本ジュニア選手権では半分入りました。「こんなに観客の皆さんに力をもらえるんだ」って、皆とても感動していました。若い選手たちにも応援のありがたみがわかったみたいです。バレーボールでもお客さんの後押しを感じる事はありますか?

あります。点数が決まった時にワーッと喜んでくれたり、サーブの時に「行けー!」と言ってくれたりとか。

それが無いと確かにとても寂しいと思いますね。本当に不思議に力を頂きますもんね。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)