数々の有力選手を指導する長光歌子さんが
フィギュアスケート界を楽しく語ります!
歌子の部屋
vol.65
対談企画 ゲスト:谷本歩実さん
小学生の時に柔道と出会い、2001年に日本代表となり「平成の三四郎」古賀稔彦さんの指導をうけ、アテネ、北京では柔道史上初の五輪二大会連続オール一本勝ちによる金メダルを獲得した谷本歩実さんに歌子先生とお話を聞いてきました。
柔道のみどころは

谷たとえば内股という技がパーンとかかった時に、柔道では力ではなく技術が大切で一本の足で二人分の体重を支えているんです。そういった美しい技術の部分に点数をつけていただくみたいな(笑)力ずくでねじ伏せるっていうところではなくて、相手に向かって行って技をかけたときの完成度ですね。そういった部分を観ていただけたらと思います。「今のキレイに決まった!」でもいいし、キレイに決まれば「一本!」って言っていただいて、技術を楽しんでいただきたいなと思います。
歌一本は本当に明確で爽快感がありますよね。かっこいいです。是非日本選手が一本勝ちで勝ってもらえるように祈っています。
谷是非楽しんでください。解説しながら(笑)私もフィギュアスケートを個人的に解説しながらテレビで観るのが好きで、家では私の解説に合わせてみんなが観ているんです(笑)それくらい入り込んで観ています。
オリンピックについて
谷保育園の卒園式の時に、「私はオリンピックに出ます」と言っていたんです。でもオリンピックがなんなのかとか、なんの競技でいくのかとかは一切なかったんですけど(笑)。
歌実際に行けると思ったのはいつ頃ですか。
谷初めて日の丸を背負ったのが18歳だったんですけど、その時に本当に私はオリンピックを目指していいのだろうかと自問自答を繰り返しました。「きつい練習はできないな」とか「オリンピックの一回戦で負けたら立ち直れないだろうな」という思いをひとつひとつ乗り越えて覚悟を決めていきました。
歌実際に出てみていかがでしたか?
谷もう本当にすごかったですね。日の丸を背負うという重みが。私は恐れ多くてウォーミングアップの畳の上にも上がれなかったんです。古賀先生とも一切会話もなくなって、オリンピックのプレッシャーの魔物に食われてしまったんですけど。そこから切り替えて、なんとか試合の日には開き直った状態で挑めました。
歌古賀先生もそばでハラハラなさってたでしょうね。
谷その通りですよね。でも、当時よく古賀先生がおっしゃっていたのですが、私もセコンドについた時に思いました「自分で戦った方がよっぽどいいな」って。
歌本当ですね!
谷髙橋大輔さんを初めてオリンピックに連れて行かれた時はどうでしたか?
歌あの時は直前にフランスで行った合宿では大輔が絶好調で、このままいけば結構良いところに行くなと思ったんです。試合会場での練習が始まっても、選手やコーチ、ジャッジの方たちも、いつものグランプリシリーズや世界選手権の時と変わりない、魔物が住んでいるとよく聞くオリンピックも、今までの試合と大差ないな…と最初のうちは考えていました。でも、一日一日と本番が近づいてくると、すごく調子がよかっただけに、ちょっと調子が悪いことが心配になってきちゃって、試合の朝には大輔はクロワッサンも喉を通らない状態で…。勝てない試合でしたね。私自身もそうでした。でもそこで経験させてもらったことが次に活きました。フィギュアスケートはジャッジが点数をつける競技なので、独りよがりでは結果が出ません。たとえば練習の時からジャッジが見に来るじゃないですか、そういうところでかっこよく見せるんじゃなくて、日々積み重ねられたものをしっかりと見せられる。その結果がバンクーバーだったわけですよね。トリノの時はやっぱりいい格好もしたいし、ちょっと失敗すると落ち込むし。経験というのはありがたいものだと思いました。
谷本当ですね。経験は何にも代えられません。
歌谷本さんの一本勝ちで二連覇するっていうのは本当に凄いと思います。
谷勝ち方を古賀先生が教えてくれた時に、どうやったら勝てるのかを知っていたのが大きかったのかなと思います。勝った瞬間に頭が真っ白になるんですけど、私の実力じゃないなと冷静に思うんです。何か大きな力が働いて自分を勝たせたというか、私は何のために金メダルを取ったんだろう、私が与えられた宿命として何かあるのだろうと思いました。
自分の中の目標と目的があって、目標は金メダルだけど、その中に「一本を取る」という目的というものがあるとぶれない。緊張して相手に勝たなきゃいけない、こうしなきゃいけないっていう雑念が一切なくなって、邪念がもうないというのでしょうか。ただひたすら目的を目指す、そうすればおのずと目標が達成されるっていう状態だったのかなと思いますね。
歌ドラマだったとしても、そんなにうまくいかないですよね。
谷本当にそれはそう思います。
オリンピックの魅力は
谷オリンピックの魅力は神業の数々ですよね。それは日々積み重ねた選手たちのものなので、それを見ていただきたい。
歌素敵です。たしかにそうですね。
コロナ禍で頑張っている東京オリンピック代表選手達へ
谷今日は1日1日の積み重ねの話をしてきましたが、コロナ禍においてもできることをして、1日1日を積み重ねて明日につなげてほしいと思います。
谷本歩実さんのスポーツあるある川柳
谷色々と考えてきたのですが、真面目にこういうものにさせてください(笑)。

ありがとうございました!
- 長光歌子(ながみつ うたこ)