数々の有力選手を指導する長光歌子さんが
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.64

対談企画 ゲスト:青木愛さん

幼少時より水泳に触れ8歳の時にシンクロナイズドスイミング(当時)を始める。2001年にはジュニア世界選手権でチーム銀メダルを獲得、2008年の北京オリンピックに当時チーム最年少として出場し活躍した青木愛さんに、歌子先生とお話を聞いてきました。

2021.7.7

青木愛さん
青木 愛(あおき あい)
青木 愛(あおき あい)
1985年5月11日生まれ。幼少時より水泳に触れ8歳の時にシンクロナイズドスイミング(当時)を始める。高校1年生から井村雅代率いる名門井村シンクロクラブに所属、2008年の北京オリンピックではチーム最年少として日本代表に選ばれた。現在は引退し競技普及やタレント活動を行っている。

アーティスティックスイミングとの出会いについて

長光歌子先生(以降:歌)スイミングスクールでアーティスティックスイミングに出会われたと聞きました。スイミングスクールに通い始めたのはどうしてでしょうか。

青木愛さん(以降:青)ベビースイミングで、0歳10カ月から地元のスイミングスクールに母親に連れられて行っていました。両親ともに水泳をやっていたわけではないので、健康のための運動ですね。家から近いという理由で通っていたスイミングスクールでしたが、たまたまシンクロのコースがあり、そこではオリンピアンである奥野史子さん(1992年バルセロナ五輪 シンクロナイズドスイミング・銅メダリスト)も練習されていて、競泳の方の水泳しか知らなかった私は、その動きの美しさに憧れて始めました。

奥野さんのような方の演技を生で見たらそうなりますよね、運命的な出会いですね。スケーターも「よくスケートと出会ったな」という選手が沢山いますが、運命って大事ですね。

アーティスティックスイミングもフィギュアスケートと同じで、野球やサッカーとは違い中々出会いづらい競技ですので、共通するものを感じますね。

青木愛さん

トレーニングについて

アーティスティックスイミングではもちろん体幹が大事なのでウェイトトレーニングを行いますが、陸上で走ることはしません。これはふくらはぎの筋肉がモリッとなると足が美しくないからです。エアロバイクを漕ぐ時もふくらはぎではなく、ハムストリングを意識して漕いだり、持久力を付ける場合は競泳で鍛えていますね。

アーティスティックスイミングの方たちは足の形もとても大事なんですね。
 スケーターは体力をつけるために走らせますが、体脂肪率が低く筋肉が多くて沈んでしまうので、あまり水泳が得意な方ではないと思います。
 1日中水の中にいるなんて想像もできない世界です。良く息が続くなと思いますし、本当にお魚さんのような感じですよね。

自分でもよくやっていたなと思います(笑)。泳ぎ込みの時なんかは100mを4本泳いだ後に50mを潜水して心肺機能を高めるような練習をしていました。

それは過酷ですね。

実際に過呼吸になる選手もいましたね。

あれだけの長い間、最後まで力強く演技できるなんてどうなっているんだと思います。

ひたすら反復練習ですね、後は錘(おもり)を付けて外した時に高く飛び上がれるようにする練習なんかもあります。先日久しぶりにシンクロの出来る深いプールで泳いだのですが、なんであんなに練習できていたかわからないくらい疲れました。

消費カロリーも大きいので、食事も沢山摂られるとよく聞きますね。

よく食べる選手にメディアのスポットが当たりがちという側面もあります。私も食べないと痩せる体質でしたが、練習してもなかなか痩せない選手もいました。日本代表には栄養士さんがついてくれているので、コーチと共に一人一人身体を見ながらその選手にあった摂取カロリーを取るようにしていました。

なるほど!でも痩せやすいのは羨ましいですね(笑)。

でも現役の時は本当に食べることがつらかったですね、食べてすぐ練習で逆さになったり…

うわー過酷!スケートでも太りやすい子は時々いて、体つきが変わることでジャンプが跳べなくなったりするのですが、たとえば第二次性徴による身体の変化で演技に悪影響が出るという事はないのでしょうか。

第二次性徴による変化の影響は、私はあまり意識したことがありません。周りでもあまり聞かないですね。

とてもしなやかな筋肉をされていると思うので、使う筋肉や身体の部分が違うのかもしれませんね、回転のために同じ体幹を鍛える必要はあると思いますが。

マッサージを受けてもとても柔らかい筋肉だと言われますね。体幹のトレーニングではよく「丸太みたいな体型になれ」と言われました。くびれがあると軸が安定しないので、側筋を鍛えてくびれを無くすような、芯が太くなるトレーニングをしていました。当時の北京オリンピックの代表のキャプテンがとても軸がしっかりした方で憧れていましたが、なかなか筋肉が付かなかったですね。

そんな努力もされていたんですね!もう一つお伺いしたいことがあります。スケートはよく他の競技の方から「あんなに滑るところでどうやってバランスを取っているんですか」と聞かれますが、スケートはまだ床面があるので、ちゃんと力を伝えられれば立てるんです。ですが、水泳はどこにも足を着かないのにどうやってバランスを維持しているのか不思議でなりません。

私からすればスケートの方が不思議です(笑)。そうですね、例えばお腹に力を入れて、手を使わずに姿勢だけで身体をまっすぐにする訓練を行います。姿勢が悪いと段々と傾いていくので、ボディーコントロールが大事ですね。私はあんなに重いスケート靴を履いて、あんなに高く飛び上がる方が不思議です。氷の上に立ったことはありますが、とても滑れるとは思えません。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)