数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.57

歌子先生に今シーズンについて色々な事を聞いてきました

歌子先生にコロナ禍での指導や、大会を通してどのように感じたのか、また村元哉中&髙橋大輔組の初挑戦について聞いてきました。

歌子先生

教え子たちの様子はいかがでしたでしょうか。

 たとえば三宅星南選手なんかは最初に1日だけ大学に行って、後はリモートみたいになってしまってちょっと可哀想だなと思いました。せっかく大学生になったのに友達もできないし…。でも授業がないおかげで練習が多くできたということはありましたね。スケーターの皆は、リンクが早く対応してくれたのと、また個人競技で対面になる部分が少ないという事もあって、全く何もできないという状況よりは、コロナ禍にばかり目がいかなかったのは良かったかもしれません。

田中刑事選手について―

 今年はもう本当に大変でした。練習を始めてジャンプが凄く良くなりだした時に膝を痛めて、膝が良くなってきたと思ったら溶連菌で入院、しばらく練習ができず、治ったらすぐブロック大会でした。ブロック大会では最低限の演技で乗り切ろう、西日本ではトリプルアクセルを入れよう、そしてNHK杯では4回転を入れようと一つずつ進んできて、本当に苦しいシーズンだったと思うので、全日本では良いコンディションに持っていけるように私も支えて行ければなと思います。彼は引退後、指導者になりたいと言っているので、この辛い経験がいつか他人を教えるうえで役に立つものだと信じています。

三宅星南選手について―

 もともと高かった背がまた伸びて、今は男子シングルでは現役の中で一番背が高いんじゃないかと思います。彼はまだ体力に課題があって、全日本ジュニアからNHK杯と連戦だったので、NHK杯のフリーは厳しかったですね。でも最近は本当に色々な面で大人になって来て、このまま意識を高くもち続け、しっかり自分を追い込めば、この2、3年で見違えるほど強くなってくれると思います。性格もどんどん外向きになって、リンク内ばかりでなく外でも、いろんな話をするようになりました。
 関西大学は後期からリモートではなく対面授業になったので、ようやく学内に友達もできたようで「勉強を教えてもらえる」と喜んでいました(笑)。

本田太一選手について―

 彼は以前からずっと言っていたように、今年が最後のシーズンです。就職も既に決まっていて、最後に国体もありますが、最後の大舞台である全日本に向けて最後のステージにしたいという意気込みを感じます。自分のやってきたことの集大成を見てもらいたいと日々真摯に切磋琢磨している姿を、嬉しく見ています。
 彼は後輩の面倒見もとても良くて、皆からの質問にもよく答えている姿を見かけます。みんなが慕っていて良い兄貴分です。全日本ではみなさんの記憶に強く残る演技をしてほしいと願っています。

吉岡希選手について―

 吉岡くんは空中での能力が素晴らしく、回転ピッチが速いことが裏目に出て、自粛期間中に急に背が伸びてしまったため骨の成長が追いつかず、腰を痛めてしまいました。
 彼は凄く気が良く、自分も腰を痛めてるのに他の子の怪我を気にかけたり、練習中に4回転を成功させた子がいたら拍手をしたりする子です。ライバルに闘志を燃やすような子も良いと思いますが、大輔もそうだったので、ああいう暖かい子も私は好きですね(笑)。
 今年は腰を痛めていてジャンプが跳べなかったので、私が教えたコンパルソリーの基礎をずっとやっていて、向上したスケートを連盟の強化スタッフの方達にも褒められていました。来シーズンは花開いてくれると思います。

吉野晃平さんの振付での活躍と日本の振付師について―

 私は晃平くんが現役の時も、ショーに移ってからも彼のスケートがずっと好きでした。与えられたプログラムをこなすだけでなく、クリエイティブなところが上手いと思います。今、海外の振付師の方が呼べない中、国内の色々な選手から依頼も来ていますし、もっといろいろと膨らませて日本の代表的な振付師になっていってくれると思います。
 また今回、三宅星南選手のフリーの振付を宮本賢二先生にお願いしていたのですが、星南が「これでやりたい」と言った曲を賢二先生が聞いた後「こっちをやってみない?」と言って持ってきてくれたのが、あのピアノの幻想交響曲でした。それがとても良くて、星南の可能性が凄く広がったと感じました。
 今ブームとして海外の振付師の方にお願いすることが増えていますが、日本の振付師の方の需要が高まっている今、その方達の作ったプログラムが海外の選手の目に留まって、日本の有名振付師が増えていくきっかけになると、日本のスケート界は選手以外の部分でももっと発展していくきっかけになるのではないかとも思います。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)