数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.57

歌子先生に今シーズンについて色々な事を聞いてきました

歌子先生にコロナ禍での指導や、大会を通してどのように感じたのか、また村元哉中&髙橋大輔組の初挑戦について聞いてきました。

※飛沫やディスタンスに細心の注意を払い撮影およびインタビューを行っています。

2020.12.16

歌子先生

はじめに

医療従事者の方へ向けて

 私も既に高齢者と呼ばれる歳になりました。そのような立場から、今また感染者が増えていて、その中で戦ってくれている人たちがいることが本当にありがたいと感じます。
 私ならば、いつ感染するかわからない状況の中で戦う事や、心無い言葉を投げかける人たちもいる中、いち早く弱音を吐いて過酷な現場から逃げたいと感じると思います。特に「終息の見えない、終わりがない状況」の中で、職業意識というものがあるとはいえ、前線で戦ってくださっている皆様には本当に頭が下がります。

コロナ禍において

秋ごろからいくつか大会が行われています、実際に会場をご覧になり感染症対策として感心したことなどありますでしょうか―

 まず、選手、コーチを含むスタッフ全員が、大会2週間前から検温記録を付けている事、これは体調の自己管理にもなるので良いなと思いました。
 また大会主催者の方達の尽力に感謝です。換気への対策、更衣室の人数や時間単位での衛生管理、関係者が使用した場所を1回1回付きっきりで消毒をしてくださっていることや、選手と関わるスタッフ全員のPCR検査など、いろいろな工夫を施してくれていて、普段の大会開催は、「スタッフの方達の努力により行われているんだ、当たり前ではなかったんだ」という事を深く感じました。選手たちにも、大会が行われるという事に感謝して欲しいなと思いました。
 そして、今年は観客の入った大会が行えるとは思っていなかったので、お客さんのいる会場には本当に感激しました。客席の管理なども本当に大変だったと思っていますし、全日本ジュニア選手権終わりでは選手たちから「本当にお客さんが入ってくれている事が嬉しいんだ」という事を何人からも聞きました。観客の皆さんがいてくれることで、すごく力を貰う事ができたそうです。観客の皆さんが応援して下さる事が本当に大事な競技だと思います。観客を入れることを英断してくれた運営の方々や、客席の配置を考えてくれた方々、本当に大変だったと思います。今年は様々な部分で「当たり前だと思っていてはいけない」という事を感じました。

大会に参加する上で大変だと感じたことはありますか―

 誰か一人でも感染してしまうと、全部だめになってしまうので、選手だけでなく私たちも本当に体調管理に気を使っていました。
 この状況下ではいつ感染してしまっても仕方ない事ですし、誰も責められない事だとは思いますが、それが自分であってはいけないなとずっと緊張していましたね。選手達も一人一人自覚をもって個人対策を行っていました。
 練習環境でいえば関西大学も西宮のリンクも、閉鎖すると言われても仕方ないような状況でしたが、換気の時間を長くとったり消毒をしたり、この状況の中でも選手たちが練習できるように、一生懸命色々な対策を講じて環境を整えてくださっていて、本当に選手たちも有難かったと思います。

リンクから離れていた時間もあるかと思いますが、これまでと気持ちが変わったことなどはありますか―

 リンク閉鎖期間中は選手から陸上でジャンプしている動画を送ってもらって、遠隔で指導したという事もありました。普段は氷上トレーニングしか見ないので、私の勉強にもなったと思います。
 私自身、氷に乗ってない期間がこんなに長かったのは初めてだったので少しリフレッシュにもなりました。あとはお料理をいつもより時間をかけて作り、楽しみました。

リンク閉鎖などの期間もありましたが、選手へのケアはどのようにされていましたか―

 リンクの人数制限はとてもありがたいのですが、貸し切りの人数でリンク費用を割るので、一人当たりの負担は大きくなってしまう事もあり、環境は整っていても色々な問題があるものだなと思いました。
 自粛期間中は、いつから練習ができるのか選手達はみんな凄く心配していました。熱心な子たちの中には、いつも練習の動画を送ってきてくれる子たちもいて、遠隔での指導のような形もとっていました。でも、やはり教える時にフェイストゥフェイスでお話ができる、ボディコンタクトができる、それができないというのは伝わり方に違いがあると感じました。陸上でしか練習できなかった期間は、みんな空中での軸を狂わさないでいて欲しいなと思っていましたし、スピンの練習は陸上では行う事ができないので、関節の可動域を確保するためにストレッチや柔軟を欠かさないようにと選手には伝えていました。
 故障というわけでもなく、あれだけ長い期間氷に乗れないというのは、これまでに誰も経験したことがない事だったので、年頃の選手たちは男子も女子もみんな身長が伸びたり体型が変わってしまったり、靴もしばらく履いていなかったので馴染まなかったり壊れてしまったり、練習面以外でも本当に色々な事がありました。
 また親御さんたちにも感染対策に関することや練習ができない事を両面から心配されていて、そちらの気持ちも痛いほど感じました。
 強化選手達に関しては比較的早くナショナル・トレーニング・センターが環境を整えてくれたので、安心して練習する事ができたので助かりました。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)