数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.45

歌子先生に2019-20シーズンを振り返っていただきました。

髙橋大輔選手のアイスダンス転向や世界選手権の今シーズンの開催中止など様々な事があった2019-20シーズンを歌子先生に振り返っていただきました。

田中刑事選手は現役を続けると表明しました。帰国して何か言葉をかけられましたか―

 田中刑事選手はカナダに到着してすぐに大会中止が決定し、そのまま帰国したのですが、出発までに情報が錯綜し、出発日を二転三転させるなど落ち着かない日々だったにもかかわらず、出発直前の練習は素晴らしいものでした。
 帰国後練習を再開していますが、好調は持続していていて「中止になったのは本当に残念!この感じなら素晴らしい演技ができていたと思う。でも来シーズン更に期待が高まったわ!」と伝えました。

田中刑事選手にはこれからどう頑張ってほしいですか―

 男子シングルでは田中刑事選手はもうベテランの領域です。年々独特の味が出て、彼のファンもたくさん増えてきて嬉しい限りです。
 来シーズンはこれぞベテラン!と観客の皆さんを唸らせられるような個性と味をさらに出して、リンクを刑事色に濃く染め上げて欲しいです。
 来シーズン新しくするだろうプログラムもすごく楽しみです。

髙橋大輔選手について、今シーズン主役のショーが2回もありました―

 2つのショーは全く趣の違うものでした。
 氷艶では、演出の宮本亞門さん始め、俳優、歌手、ダンサーの素晴らしい方々との共演で、スケートのショーのあり方を大きく広げてくれたと思います。その舞台の上でもスケーターたちの滑るスピード感は凄く魅力的でした。
 今後も多方面の方々とのコラボレーションで、その大きな魅力になるであろうスケートのスピードを活かした舞台が増えていってほしいと思いました。
 年明けのアイスエクスプロージョンはスケーターとバイオリニスト宮本笑里さんとの純粋なアイスショーでしたが、大輔がアイスダンスに転向するという事もあり、アイスダンス、ペアのスケーターが多かったのが特色でした。彼らのおかげで非常に大人の、味のある空間になっていてその滑りの美しさに惚れ惚れしました。
 また、大輔シングル最後のショートプログラム、“Phoenix”をミーシャ・ジーさんや、エラジ・バルデさん、プリンスの小林宏一さんや、小沼祐太さん達の男子チームで滑り、女子のフィギュアスケートとはまた一味違ったショーのあり方の一つの方向性を示したと思います。

アイスダンス転向など色々ありましたが、どんな大輔シーズンでしたか―

 前記の氷艶での事前合宿や、ショートプログラム“Phoenix”の振付のための渡米、アイスダンス転向の発表が重なり、シングルの練習を始めたのは昨年より5か月ほど遅れ、また膝の調子も急に量が増えたジャンプの着地で、良くない状態が多く、彼のモチベーションもなかなかシングルに向いていなかったこともあって、私としては苦しい時間が多かったです。
 でも、全日本選手権の会場に入ってからの大輔は目の輝きも変わり、練習では素晴らしい集中力を見せてくれました。
 この全日本選手権の公式練習で、彼は私の今シーズンの辛さを消し去り、それ以上の大きな喜びを与えてくれ、フリーの本番後にはキス&クライでの素敵な花束を渡してくれたあの瞬間の大輔の顔、お客様からの歓声などの会場の音、温度、空気感…とともに一生忘れないと思います。

アイスダンス転向後、大輔さんとアイスダンスについてお話しされましたか―

 今年に入ってからはアイスエクスプロージョンの時に彼と会って以後、私もインターハイや国体と試合が続きましたし、大輔もいろいろとお仕事などで忙しかったようで、アメリカ出発までに会えませんでした。
 出発直前に私の家で預かっている彼の愛犬に、たくさん洋服を届けてくれましたが、その日はちょうど私はインターハイに出発した後で、会えなくて残念でした。ですので、アイスダンスについては全くと言っていいほど話はしていません。

 

大輔さんにはこれからどう頑張ってほしいですか―

 アメリカに渡ってしばらくは、日本で新型コロナウイルスが流行し始め、大輔はアメリカに行って良かったな、と思っていたのですが、アメリカも大変な状況になってきて、日々の練習もままならなくなっているようです。
 それまでは非常に充実した日々だと報告を受けていましたが、今後どうなっていくのか大変心配しています。
 一日も早く世界中の新型コロナウイルス流行が収まり、2人が思うまま練習できる日々が戻ってほしいと祈るのみです。でも、この思い通りの練習が出来ない日々が、彼らの情熱にさらなる油をそそぎ、よりよい絆が出来上がる絶好のチャンスになると信じています。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)