数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

番外編

祐輔の部屋 2019飯塚フィギュア合宿編

歌子先生の教え子でひょうご西宮アイスアリーナでコーチを務める林祐輔先生に、8月下旬に行われた2019飯塚フィギュア合宿について伺ってきました。

林先生

田中刑事選手について―

 今年はショートプログラムもフリーも変えて、これまではどちらか片方を継続していましたが、新プロ面白いかなと思います。ショートは引き続きマッシモ・スカリさんの振付で、シニア合宿が終わった後大阪に3日間ほど来てくれて、2週間後くらいにまた見て少しアレンジしてもらって、また良くなりました。これまでと全然ガラッと変わりましたね。最近は一人で振付に行ってもらっている事もあったので、久しぶりに振付をイチから見ましたが、長年やってくださってるだけあって、マッシモは刑事の引き出しを引っ張るのが本当に上手いと思いました。アップテンポでこれまでと全く違う感じなので、刑事がこんな風になるんや…と感心しました。フリーは宮本賢二先生で、ジュニアの時以来のお願いでしたが、ジャンプも上手く入っていい感じに仕上がってきています。
 4月の国別対抗戦に出て、上手くいったことが刑事の今の練習につながっているように感じます。フリーでは4回転を3回やりたいとチャレンジするモチベーションがありますね。平昌のシーズンは4回転を3回入れていましたが、そんなに揃って決まっていませんでした。今は練習で後半に4回転が入ったりするので、いい感じだと思います。刑事の調子は一言でいうと、いいかな!って感じですね。
 シーズンについては刑事とは1年1年考えて行こうという風にしています。ジャンプでいえば今はジュニアの子も4回転、下手すると3種類くらい跳んでる子もいますが、その中でシニアらしい滑りができるというところを刑事の大事な所にしたいですね。シニアとしてこれからデビューする子たちとは違うところが試合で見られれば、そしてそこにジャンプが入れば結果も出てくると思いますし、田中刑事らしい滑りを見せてくれればなと思います。

三宅星南選手について―

 落ち着いてきたと思います。去年ちょっと波があるのかなと思っていましたが、今年はちょっと詰まったりしていても、「絶対できなあかん」という感じではなく、ちょっと余裕を感じますね。もちろんレッスンなんかは全力でぶつかっていますが、ジュニア最後のシーズンになると思うので、シニアに向けて心の準備もちょっとずつ進んでいるんじゃないかな。彼はテクニックもあってジャンプも跳べますし、伸びのあるスケートや彼しか出せない表現もあるので、精神的な安定があればいいなと思っていましたけど、表情や言葉の中に余裕ができてきたと感じるので、僕は外野ですが、良いシーズンになるんじゃないかなと思っています。
 三宅選手のことは歌子先生が考えているとは思いますけど、北京を目指すにはテクニックでいえば4回転ジャンプは必要ですよね。でも僕の考えでは、3種類4種類というよりも1種類2種類でもいいのでスケートがちゃんとしていないと、最終的には勝てないんじゃないかなと思います。ジュニアの子たちもかなり4回転を跳ぶようになってきていていますが、2シーズンもあると男の子はかなり肉体的な成長も伴いますので、身体も作っていかないと怪我のリスクもあります。三宅選手は今ではなく2年後を見据えてしっかりとやっていけば可能性はあるんじゃないでしょうか。

林先生

山隈太一朗選手について―

 山隈選手は普段シーズン中は安定するんです。靴のトラブルもあったそうですが、初日はかなりジャンプが不安定でした。今回は東伏見の重松先生からお預かりしての合宿なのですが、彼は大学生になって環境が変わって、練習と勉強の他にも生活を両立していかないといけないのでなかなか大変なようです。重松先生からは「合宿で何とか立て直してやってほしい」と言われました(笑)でも、山隈選手はずっと見てきたので、出来ていない時に何をやればいいか教えてあげられるのが良いですね。その甲斐あって初日は悲惨だったトリプルアクセルが2日目にして落ち着いてきました。ほかの学校に行ったとはいえ学校が変わっただけの事ですし、こっちで助けてあげられることがあるなら何とかしてあげたいです。山隈選手には背の高さもありますが、そこよりも他の選手にはない独特の空気を持っていて、音楽の表現に関しても演じるような感じで周りを引き込みますよね。昨年の全日本でブレイクしてしましましたが、あの部分が山隈選手の一番良い部分だと思っています。シニアで戦っていくには必要な要素だと思いますし、あれに技術がついてくるとベストですね。三宅選手もそうですが身体が大きいので怪我をするのだけは避けたいです。

岩野桃亜選手について―

 あー上手いなと思いました。もうジュニアの空気感ではないですね。ジャンプやテクニックも良いですが、表現面とか雰囲気にシニアに近いです。表情も作れますし、ジュニアの子に対して使う言葉ではないですし、僕も普段使うことはないですが、「妖艶さ」という言葉がぴったりとあてはまると思います。ブノワ・リショーさんもそうですが振付師の方から魅力的に見えるというのは分かります。落ち着いているし、とても大人な考え方で自分の事がよく見えているんじゃないでしょうか。自分の目指していく方向性を理解していて、これをやらないといけないという明確な目標をもっている感じがします。じゃないとあんなスケートはできないと思いますね。プログラムのこなしも良いですし、スケーティングもここからさらに良くなると思いますし、そうなるとジャンプもついてくると思います。本当に大人っぽさがすごいですね。

若手の選手について―

 木村咲良(サラ)選手はノービスBでシードを受けているだけあって、今小学5年生ですが、これからどうしていくかですけれど、トップで戦っていく能力はあると思います。去年は全日本ノービスBでデビューでしたが、早く出てしまったのでジャンプが全然跳べませんでした、でも今年はルッツも跳べていています。地方ブロックの次くらいまでは行ってほしいですね。また、僕の所には中学3年生くらいの女の子が3人くらいいます。1人が新しいことをできると競ってみんなで取り組み、まさに切磋琢磨で成長していっているので、みんなブロックの先…できれば全日本まで行ってほしいと思っています。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)