数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.37

世界フィギュアスケート選手権2019

歌子先生に5年ぶりに日本で開催された世界フィギュアスケート選手権2019について伺ってきました。

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大会を総括して―

■ペアについて―

 中国のウェンジン・スイ、クォン・ハンのペアが圧巻の出来でしたね。彼女たちは随分前から好きでしたが、今回のフリーはただパーフェクトだったと言うだけでなく、彼らの魂の叫びが、こちらの胸に迫って来て、フィニッシュの直前から涙をこらえるのが大変でした。
 中国の若手のチェン・パン、ヤン・ジン組は、背も高くカップルとしてビジュアル的にバランスが取れ、しかもしっかりした技術があるので、これから伸びてくるだろうなと感じました。

■ペアを総括して―

 1にも2にもウェンジン・スイ、クォン・ハンのカップルですね。
 彼らのプログラムはただエレメンツとエレメンツを繋ぎ合わせているのではなく、音の一つ一つに動きがあり、動きに意味を感じさせ、その心地よい動きの中にジャンプや他のエレメンツが表われる。とてもペアのプログラムとは思えない、二人の叙情的な世界観に浸れるものでした。二人の世界を共有できた喜びは表しようがないほど、私の心に残りました。

■女子について―

 優勝したアリーナ・ザギトワ選手、日本の3選手の演技が素晴らしかったのは勿論なのですが、カナダに移り短期間でグライドするスケーティングを自分の物にし、成熟したプログラムを見せてくれたエフゲニア・メドベージェワ選手、ショートプログラム3位で大きな緊張感で迎えたであろう最終滑走で4回転サルコウを成功させ、伸びやかに滑り切ったエリザベート・トゥルシンバエワ選手、斬新なプログラムで観客の記憶に強く残ったであろうブレディー・テネル選手が強く私の心にも残り、観客席から心より拍手を送りました。
 美しく、強い女性たち、お疲れ様!そして有難うございました。

■女子優勝者に関して―

 ザギトワ選手、今シーズンはなかなか思うような成績が取れず、苦しいシーズンだったでしょうが、世界チャンピオンの称号を手にし、こぼれるような笑顔をみてこちらも嬉しくなりました。
 平昌オリンピックの金メダリストとしての意地を感じさせる気迫のこもったフリーでしたが、私としては少し幼く感じるスケーティングや、時々音から外れたプログラムの動きが気になりました。でも、そこが彼女の今後の伸びしろなのだろうなと思います。来シーズン更に大人になった彼女のスケーティングを、素晴らしいジャンプやスピンと共に見られることを期待します。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)