数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.32

対談企画 ゲスト:髙橋成美さん

世界選手権銅メダルなど輝かしい記録を持ち、2018年3月に現役を引退された髙橋成美さんに、ペア競技と新しいチャレンジについてお話を聞いてきました。

ペアとシングル競技の違い

髙橋成美さん

ペアにはいつ頃から転向されたんですか?

12歳の時に中国人の男の子とペアを組んで始めました。

そんな頃からやっていたんですね、ペアはどういったところが難しいと思いますか?

一番は練習時間をパートナーと合わせたり、パートナーと心を合わせたりといった、技術以外の連携を得なければいけないというのが大きく違うと思います。シングルの選手だったときは自分なりに練習をカスタマイズして、自分でやっていけばよかったのですが、ペアはパートナーと合わせていかなければいけません。またコーチとの関係性も1対1から2対1に代わるため、シングルの時とは立ち位置が違っていると感じました。パートナーとコーチとの関係性にバランスが必要だと感じました。ただ、その分シングル競技よりチームが一丸となった時は、もの凄い推進力になるとも思いました。

やっぱりシングルは個人プレーなので自分との戦いになりますが、カップル競技は本当に大変だなと思います。昔の話になりますが、田村岳斗先生と荒井万里絵さんがペアを始めるときに付いていったのですが、私の目から見て全く異なる競技だなと思いました。シングルが上手いからと言ってできるようなものではないと、その時つくづく思いましたね。

シングルが上手いからペアで上手くできるとも限らないし、シングルで上手くいっていなくても、ペアで花開く選手なんかもいますので、先生のおっしゃる通りだと思います。

ペアの面白いところ

一般的じゃない私の個人的な楽しみなのですが(笑)、リンクサイドに待機をしている選手達の様子が本当に面白いんです。男の子が女の子を落ち着かせようと声をかけていたり、逆に女の子が男の子を励ましていたり、演技の上では男の子が強そうに見えていても、実は女の子がリードをしているチームなんだな、とかそういう風に楽しんでいました。是非そこまで放送してほしいですね(笑)

それは本当に面白い、選手ならではの見方ですね!また、スピード感や高さ、そして特にダイナミックさというのはフィギュアスケートのペアでしか見られないものだと思います。

その通りですね!ダイナミックさという点はペアの一番の魅力だと思います。ツイスト(男性が女性を投げ上げて空中で回転する技)なんかは特に選手も意識していて、これはペアあるあるなのですが、皆その高さを求めたくなるんですよ。スケーティングがあまり上手くないペアでも、ツイストが高いと「おお!」となりますね。ツイストの高さにはそのチームの努力が詰まっていると思います。

ツイストの高さはあくまでも男子の力なんでしょうか?

もちろん男子の力や女子の軽さは大切ですが、タイミングが一番重要です。タイミングは2人での練習量でしか合わせることができません。なので、ツイストはペアの一番の見どころだと思います。特に試合では練習以上の結果が出ることが多く、皆さんがご覧になられている試合でのツイストは本当に素晴らしいものになっていると思っています。

ペアで学んだところ

ペアをやっていてよかったと思うことはどんなところですか。

リスクのある大技にチャレンジをして成功させたり、難しいプログラムをやり切ったりしたときなんかは感動しますが、ペアをやっていて一番良かったと思うのは、日々の練習にあったと思います。毎日お互いに協力をし合いながら過ごしたり、喧嘩をしてしまったときの気持ちの切り替え方だったり、人との付き合い方だったり、シングルの選手だったら練習やスケートなど、自分のことに集中していればよかったのに、どうしてペアはこんなに大変な事があるんだろうって悩んだりしていました。苦労が絶えない分、今後の人生にとても役に立っていくようなことを学べたと感じています。

それは本当に大事な事ですね。人と人との付き合い方はずっと必要であり続けるものですものね。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)